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ロック・メタル

オーストラリアン・パブロック

Australian Pub Rock

シドニー / メルボルン / アデレード / オーストラリア / オセアニア · 1973〜1990年

別名: Aussie Pub Rock / Oz Rock

1970-80年代の豪州のパブとRSLクラブで育った、汗と大音量のハードロック文化。AC/DC、Cold Chisel、INXS、Midnight Oilが代表格。

どんな音か

オーストラリアン・パブロックは、1970年代前半から80年代にかけて、豪州各地のパブとRSLクラブを巡って育ったハードロック/R&B寄りのバンド音楽だ。編成はエレキギター2本+ベース+ドラム+ボーカルの5人組が基本で、Cold Chiselのようにサックスとハンモンド・オルガンを常駐させる型もある。テンポは110-140BPMのミドル、ボーカルはブルース由来のシャウトが主流、演奏時間は3-4分と短く、パンチで一気に決着させる。録音はコンプレッサーで押し潰したドライで乾いた仕上げが好まれ、ロンドンやNYの同時期のロックとは決定的に音の湿度が違う。

生まれた背景

1973年にシドニーで結成されたAC/DCが決定打だった。スコットランドから移民したヤング家の兄弟(マルコム、アンガス)が組み、汗と血がステージから飛び散る肉体的な演奏で全国のパブを埋めた。同時期にアデレードでCold Chisel(1973)、シドニーでRose Tattoo(1976)が形成される。1978年結成のシドニーINXSと、1976年結成のMidnight Oilはこの土壌の上に80年代のスタジアム・ロック層を築いた。土台には1975年ホイットラム労働党政権のクーデター的解任、ベトナム帰還兵の受難、白豪主義の終焉といった政治的緊張があり、パブは労働者階級の政治的意見交換の場でもあった。

聴きどころ

まずリズムの「粘り」に耳を澄ませてほしい。AC/DCの『It's a Long Way to the Top』のフィル・ラッドのドラムは、拍の頭を微妙に後ろに引っ張る癖があり、それが「オーストラリアの乾いたグルーヴ」を生む。Cold Chiselの『Khe Sanh』はイアン・ムスの分厚いピアノとジミー・バーンズのシャウト声が同じ帯域を争う音圧勝負で、これが典型的なパブロックのミックスだ。INXSの『Never Tear Us Apart』はカーク・ペングリーのサックス・ソロが曲の中心を担い、この編成的贅沢が同時期の英米ロックと差別化される。

発展

1980年2月、AC/DCのボン・スコットがロンドンで死去(享年33歳)、後任にブライアン・ジョンソンを迎えて発表された同年7月の『Back in Black』は世界で5000万枚を売り、史上最も売れたロック・アルバムとなった。1987年INXS『Kick』が全米チャート3位、翌年『Never Tear Us Apart』が世界的ヒット、Midnight Oilの1987年『Beds Are Burning』はアボリジニの土地権を主題にした反植民地アンセムとして国連総会でも演奏された。1997年11月、INXSのマイケル・ハッチェンスがシドニーのホテルで37歳で死去、パブロック黄金期の実質的な終わりを刻んだ。

出来事

  • 1973: AC/DC結成、Cold Chisel結成
  • 1975: AC/DC『High Voltage』
  • 1980: ボン・スコット死去、『Back in Black』
  • 1987: INXS『Kick』、Midnight Oil『Beds Are Burning』
  • 1997: マイケル・ハッチェンス死去

派生・影響

後のオーストラリアン・インディー、Powderfingerに続く90年代豪州オルタナ、Wolfmother以降の21世紀リバイバル。米国のブルーカラー・ロック(Bruce Springsteen)と英国のニュー・ウェイヴの中間に位置する。

音楽的特徴

楽器エレキギター2本、ベース、ドラム、ボーカル、時にサックス、ハーモニカ、キーボード

リズム110-140BPMのミドルテンポ4/4、ブルース進行のシャッフル、時に3拍子のパワーバラード

代表アーティスト

  • Cold Chiselオーストラリア · 1973年〜2020
  • Midnight Oilオーストラリア · 1976年〜
  • Rose Tattooオーストラリア · 1976年〜
  • INXSオーストラリア · 1977年〜2012
  • Warumpi Bandオーストラリア · 1980年〜2007

代表曲・古典

日本との関係

AC/DCは1981年初来日以降、日本ハードロック好きの間で定番となり、Brian Johnson加入後の1981年ワールド・ツアーでは武道館を満員にした。INXSは1988年『Kick』ツアーで初来日、マイケル・ハッチェンスは日本のファッション誌の表紙も飾った。Cold ChiselやRose Tattooは日本での認知は薄いが、1990年代の日本のパブロック系バンド(サンボマスターの初期、真心ブラザーズ)には隠れた影響がある。Midnight Oilの環境政治性は日本の反原発ロック(RCサクセション『COVERS』の1988年発禁事件)と時代を共有していた。

初めて聴くなら

入り口はAC/DC『It's a Long Way to the Top』(1975)、これがパブロックのすべての先駆的DNAを詰め込んでいる。次にCold Chisel『Khe Sanh』(1978)、豪州人が「これは俺たちの歌だ」と口ずさむ国民的アンセム。INXS『Never Tear Us Apart』(1987)は80年代パブロックの完成形、Midnight Oil『Beds Are Burning』(1987)は政治的アンセム型として。金曜の夜にビール片手にスピーカーで、が正解の作法。

豆知識

AC/DCのボン・スコット(1946-1980)はスコットランド生まれ、オーストラリアフリーマントル育ちで、1980年2月19日、ロンドン南部イースト・ダリッジで、友人宅前に停めたルノー5の車内で急性アルコール中毒により発見された(享年33)。後任のブライアン・ジョンソン(英サンダーランド出身)を迎えて4か月後に発表された『Back in Black』は世界で5000万枚以上を売り、いまだに史上最も売れたロック・アルバムだ。Cold Chiselの『Khe Sanh』はベトナム帰還兵の孤独を歌った歌詞のため1978年のリリース時にラジオ放送禁止となったが、それがかえって全国的認知を高め、オーストラリアの非公式国歌と呼ばれるようになった。

影響・派生で結ばれたジャンル

オーストラリアン・パブロックを中心とした近傍図。中心と直接結ばれるエッジが強調表示されます。

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同じ時期・同じ地域で生まれた他のジャンル

オーストラリア · 1973年前後 (±25年)