アニソン (2020s)
2019年 LiSA《紅蓮華》(鬼滅の刃)以降、Aimer・YOASOBI・Ado がグローバル・ストリーミング上位を占める2020年代型アニメ主題歌クラスター。J-Pop 主流との完全融合、Billboard Global への到達が特徴。
どんな音か
アニソン(2020s)の音は、旧世代のアニソン(JAM Project、影山ヒロノブの熱血ロック様式)を知っている耳には最初『J-POP に近すぎる』と感じられるかもしれない。それは正しい。書法上、2020年代のアニソン主流楽曲は J-POP 主流の書き手・歌い手・プロダクション体制と完全に統合されている。LiSA《紅蓮華》(2019) を聴くと、草野華余子作曲の Jロック 型メロディに、LiSA の力強い女性ロック・ヴォーカル、そして『鬼滅の刃』の激しいアクション映像と同期する劇的な構造。YOASOBI《アイドル》(2023) では、Ayase の ボーカロイド 出身らしい細かなシンセ・レイヤーと、ikura の透明感のあるヴォーカル、そして『【推しの子】』のメタ的なアイドル批評テーマが融合。Ado《新時代》(2022) では中田ヤスタカのシャッフル系プロダクションに、Ado の咆哮するようなロック・オペラ的多声処理が乗る。共通するのは、90秒-120秒のアニメ OP 尺に合わせた『サビ即出し』の構造と、映像との強い同期意識。
生まれた背景
決定的な起点は2019年4月、アニメ『鬼滅の刃』第1期の放送開始と同時に発表された LiSA《紅蓮華》で、この楽曲がオリコン週間シングル・チャート首位を獲得し、翌年の2020年上半期の年間チャート首位、そして日本レコード協会のダイヤモンド認定(200万 DL 相当)を、アニメ主題歌として史上初めて達成したことだ。翌2020年、Ado が Syudou 作曲の《うっせぇわ》でメジャーデビュー、これは歌い手(utaite)出身の Ado が J-POP 主流に登録された画期的な事件となり、2020年12月のオリコン週間1位獲得は歌い手の J-POP 主流化の象徴となった。並行して2020年3月に発表された YOASOBI《夜に駆ける》がストリーミング系チャートで週間1位を獲得、Ayase(ボーカロイド P出身)と ikura(幾田りら、歌い手出身)の組み合わせが ボーカロイド + 歌い手の J-POP 主流化の完成形として位置付けられた。
聴きどころ
第一に、アニメ主題歌の90秒-120秒尺に合わせた楽曲構造。イントロが短く、サビが早い時点で登場する『サビ即出し』の構成が、TV アニメ OP のクロスカット映像と同期するために設計されている。第二に、ボーカロイド 由来の細かなシンセ・レイヤー。YOASOBI の Ayase は ボーカロイド P出身で、彼のプロダクションには初音ミク時代の DAW 制作の細かな和声処理と装飾音が残っている。第三に、女性ロック・ヴォーカルの力強さ。LiSA・Aimer・Ado はいずれも女性で、それぞれ j-rock、オルタナ・ロック、ロック・オペラという異なる路線だが、共通して『前へ出る』力強い歌唱を持つ。第四に、映像との強い同期意識。アニメ主題歌は先に映像コンテが決まってから作曲されることが多く、楽曲の展開が映像のカット割りと同期するよう設計されている。第五に、ストリーミング特化の楽曲設計。3分30秒以内の尺、明確なフック、TikTok 15秒抜粋を意識した構造。
発展
2021-23年、Aimer《残響散歌》(2021、鬼滅の刃 遊郭編 OP)がストリーミング系で年間首位に食い込み、2022年 Ado《新時代》《逆光》《私は最強》(ONE PIECE FILM RED 劇中歌)が Spotify Global Weekly の日本語楽曲首位を占め、Adele や Bad Bunny と並ぶ位置に到達した。決定的だったのは2023年4月、TVアニメ『【推しの子】』の OP として発表された YOASOBI《アイドル》で、この楽曲は Billboard Global 200 で7週連続首位・Billboard Global Excl. U.S. で4週首位、これはアニメ主題歌が非英語楽曲として世界最大のストリーミング・チャート首位を占めた史上初のケースとなった。同時期に Ado は2022年 NHK 紅白歌合戦初出場・2023年4月開催の初回ライブ『マーズ』で顔出しなしのまま国立競技場公演レベルを実現、Aimer は Fate/Zero 系譜の後継として Fate/Grand Order との継続的な楽曲提供を続けている。
出来事
- 2019/04: LiSA《紅蓮華》(鬼滅の刃)
- 2020/03: YOASOBI《夜に駆ける》ストリーミング1位
- 2020/10: Ado《うっせぇわ》メジャーデビュー
- 2021/12: Aimer《残響散歌》(鬼滅の刃 遊郭編)
- 2022/08: Ado《新時代》(ONE PIECE FILM RED)Spotify Global 上位
- 2023/04: YOASOBI《アイドル》(【推しの子】)Billboard Global 200 7週首位
- 2023/12: Ado 紅白初出場
- 2024: アニソン(2020s)が J-Pop 主流とグローバル・ストリーミングの中核クラスターに
派生・影響
anison(derived_from、1960s TV アニメ主題歌以来の umbrella の2020年代サブクラスター)、j-pop(sibling、主流ポップとの完全融合)、vocaloid(influenced、YOASOBI の Ayase を通じて)、utaite-utattemita(fused_with、Ado・yama・ikura のキャリア背景として)。
音楽的特徴
楽器J-Pop 主流のプロダクション(シンセ・パッド、エレキ・ギター、ベース、ドラム)、Vocaloid P 由来の DAW プロダクション(YOASOBI)、生歌+ロック・バンド編成(LiSA、Aimer)、ロック・オペラ的な多声処理(Ado)
リズムJ-Pop 標準の 100-180 BPM、4/4、時に6/8。アニメ主題歌の90-120秒尺(OP/ED)を意識した楽曲構造(サビ即出しの構成)
代表アーティスト
- LiSA
- Aimer
- Ado
- YOASOBI
代表曲
紅蓮華 — LiSA (2019)
夜に駆ける — YOASOBI (2020)
炎 — LiSA (2020)
その後の代表曲
残響散歌 — Aimer (2021)
新時代 — Ado (2022)
アイドル — YOASOBI (2023)
日本との関係
アニソン(2020s)は日本国内の音楽消費の中核ジャンルの一つで、Spotify 日本・Apple Music 日本 の年間チャート上位にYOASOBI・Ado・LiSA・Aimer が定着している。日本のリスナーにとって、アニソン(2020s)は『アニメ』というメディア接点を通じて音楽を発見する経路の中心で、TVアニメの毎クール放送開始と同時に新規楽曲がストリーミング配信上位に登場する構造が定着している。海外への発信力も大きく、2023年 YOASOBI《アイドル》が Billboard Global 200 で7週連続首位・Billboard Global Excl. U.S. で4週首位を獲得したことは、日本のポップ音楽が非英語楽曲として世界最大のストリーミング・チャート首位を占めた史上初のケースとなった。日本の音楽産業にとって、アニソンを介したグローバル発信は K-Pop 以外の東アジア発ポップの数少ない成功事例として重要な意味を持つ。
初めて聴くなら
まず LiSA《紅蓮華》(2019) から。2020年代アニソンの起点作。次に《炎》(2020、劇場版『鬼滅の刃 無限列車編』主題歌) で梶浦由記×LiSA の連続的なメガヒット、YOASOBI《夜に駆ける》(2020) と《アイドル》(2023) で YOASOBI の世界的到達、Ado《うっせぇわ》(2020) と《新時代》(2022) で Ado のロック・オペラ的多声処理、Aimer《残響散歌》(2021、鬼滅の刃 遊郭編 OP) でオルタナ・ロック側の代表作を並列に聴くと、2020年代アニソンの分岐した多様性が見える。深く入るなら《ヨルシカ》の花譜、《Reol》の《第六感》(2020) など、アニソン隣接の J-POP 主流路線まで含めて聴くと系譜の連続性が見える。
豆知識
YOASOBI の《アイドル》(2023) の作曲・作詞者は Ayase だが、原作はアニメ『【推しの子】』(赤坂アカ×横槍メンゴ)の第1話のストーリーで、Ayase は原作漫画を熟読した上で楽曲を書いた。楽曲内には原作のキーワード(『嘘つき』『瞳の中の銀河』など)が意図的に配置されている。もう一つ:LiSA(織部里沙、1987-)は2020年3月に俳優・鈴木達央と結婚したが、以降のキャリア展開もアニソンの中心人物として継続、《紅蓮華》→《炎》→《明け星》(2021、鬼滅の刃 無限列車編 TV アニメ OP)と鬼滅の刃シリーズを継続的に担当し、作品と歌手が一体化した稀有なケースとなっている。この『作品と歌手の一体化』は2020年代アニソンの特徴の一つで、YOASOBI+【推しの子】、Aimer+鬼滅の刃 遊郭編 のような結び付きが多数見られる。
同じ時期・同じ地域で生まれた他のジャンル
- ポップシティポップ・リバイバル
- ポップボーカロイド
- 伝統・民族歌い手・歌ってみた
- ポップ東方アレンジ音楽
- ポップ電波ソング
- ロック・メタル日本のマスロック
- エレクトロニックオンキョー(音響)
- ポップ秋葉系/アキバポップ
