島唄(奄美)
奄美群島の裏声(グイン)を多用する高音民謡。琉球と大和の間の独自音階を持つ。
どんな音か
島唄(奄美)は、鹿児島県奄美群島(奄美大島、徳之島、喜界島、沖永良部島、与論島)で歌われる民謡の総体で、琉球と大和(本土)の文化的境界にあるがゆえに双方から影響を受けつつ独自の音階と歌唱様式を確立した。中心楽器は奄美三線(蛇皮を張らず竹または合成皮を使い、細棹)、チヂン(片手太鼓)、時に横笛。歌唱の最大の特徴はurakoe/グイン(裏声)の多用で、地声から一気にファルセットに突き抜ける独特の音の跳躍が旋律の骨格を成す。音階は琉球音階(D E G A C)にも大和のヨナ抜きにも属さない独自の五音音階を持ち、これが奄美島唄を琉球民謡・本土民謡の両方から区別する決定的な指標だ。既存slug`amami-shimauta`とはローマ字表記が異なる同義スラグで、本項目は現代の島唄シーンの継承者に重点を置く。
生まれた背景
奄美群島は江戸期に薩摩藩の直轄地として琉球王国と本土の間に置かれ、行政的には薩摩支配下(1609-1871)にありながら文化的には琉球圏との深い連続性を保った。この二重の位置性が独自の民謡文化を育て、20世紀までにヒギャ節(南部の朝崎郁恵らの系譜)とカサン節(北部の築地俊造らの系譜)の二大様式が確立した。20世紀後半の担い手として最も重要なのは築地俊造(1934-2014)で、彼は1977年創設の奄美島唄大賞の初期の受賞者として、伝統的な奄美三線とグイン歌唱の水準を確立した。同世代の女性歌手Chieko Kokubu(1943-)はカサン節を軸にした録音でヒギャ・カサン両様式の対比を可聴化した。2000年代以降、元ちとせ『ワダツミの木』(2002)が全国的なヒットとなり、島唄の歌唱法が本土ポップ市場に届いた。
聴きどころ
まずグイン(裏声)の跳躍に耳を澄ませてほしい。奄美の歌手は歌の途中で地声から突然ファルセットに切り替え、それを何度も往復させる。この跳躍の位置と頻度が歌手の個性を決定づけ、朝崎郁恵の低音から高音への滑らかな滑走と、元ちとせの鋭角的な跳躍は明確に対比される。次に奄美三線のリズムで、細棹の三線は本土三味線よりも軽快な音色を持ち、チヂンの片手太鼓の刻みが独特のヨロヨロした二拍子を生む。旋律は独自の五音音階(ヒギャ節の場合はA B♭ D E G近似)で、琉球音階にも大和のヨナ抜きにも属さない独特の響きを持つ。築地俊造の1970-80年代の録音が伝統様式の最良の参照点。
発展
2002年、元ちとせ(Chitose Hajime、1979-、奄美大島瀬戸内町生)の『ワダツミの木』が全国的なヒットとなり、奄美島唄の歌唱法(グインの跳躍)が本土の一般ポップ市場に届いた。この楽曲は同年公開のスタジオジブリ関連作品との連携もあり、奄美島唄の可視性を戦後最大にした。同時期のAnna Sato(里アンナ、1985-、奄美大島宇検村生)は元ちとせの後を追い、伝統的な島唄を保ちつつジャズ・ボサノヴァと融合する路線で活動、2010年代以降の奄美島唄の新世代を代表する。既存slug`amami-shimauta`ではRikki(中野律紀、1976-、奄美大島瀬戸内町生)がゲーム『Final Fantasy X』主題歌『素敵だね』(2001)経由で国際的な認知を得た系譜も並行して継承されている。
出来事
- 1609-1871: 薩摩藩支配下で独自民謡形成
- 1977: 奄美島唄大賞創設、築地俊造らの受賞
- 1993: 朝崎郁恵『おぼくり〜ええうみ』
- 2001: Rikki『素敵だね』(FFX)
- 2002: 元ちとせ『ワダツミの木』全国的ヒット
- 2010s+: Anna Sato世代のジャズ・ボサノヴァ融合
派生・影響
既存slug`amami-shimauta`と同義の兄弟項目。琉球民謡(ryukyu-min-yo)と本土民謡(minyo)の中間形として、双方と兄弟関係。近年は元ちとせ経由でJ-POPとの接続、Anna Sato経由でジャズ・ボサノヴァとの融合が進む。
音楽的特徴
楽器奄美三線(細棹、蛇皮なし)、チヂン(片手太鼓)、時に横笛、リード歌手+集団応答(八月踊り歌の場合)
リズム自由リズム(ヒギャ節・カサン節)から2/4の八月踊り歌まで、地声とグイン(裏声)の跳躍、独自の五音音階、詩の脚韻に合わせた歌の伸縮
代表アーティスト
- 築地俊造
- 国分千恵子
- 里アンナ
代表曲
行きゅんにゃ加那 — 築地俊造 (1978)
朝花節 — 築地俊造 (1985)
カサン節 — 国分千恵子 (1990)
おぼくり〜ええうみ — 朝崎郁恵 (1993)
その後の代表曲
- ワダツミの木 — 元ちとせ (2002)
AMAMI — 里アンナ (2016)
南の風 — 里アンナ (2010)
