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ロック・メタル

ロック・ウルバーノ・メキシカーノ

Mexican Rock Urbano

メキシコシティ / メキシコ / 中南米・カリブ · 1968年〜

別名: Rock urbano / Rock chilango

1968年のTres Souls In My Mindを起点にする、メキシコシティ労働者街のブルース/ハードロックの土着系譜。El Tri(アレックス・ロラ)。

どんな音か

ロック・ウルバーノは、メキシコシティの下町(バリオ)を出自にする、ブルース・ロック/ハードロック寄りの土着ロックを指す。1980年代以降にRock en Españolが「メキシコ・ロック・エン・エスパニョール」ブランドで洗練される以前の、粗い音のアメリカ合衆国ン・ロック直系の系譜だ。歌詞は工場労働、地下鉄、貧困、酒場、警察との対峙といった現実の街の題材を扱い、多くの曲がメキシコシティ地下鉄の駅名やバリオの地名(Tepito、Metro Balderas、La Merced)を含む。編成はエレキギター+ベース+ドラム+ボーカル+ハーモニカが典型で、テンポは110-140BPM。録音は意図的に粗く、スタジアム・ロックの磨きではなく酒場の生々しさを優先する。歌唱はしゃがれ声で、しばしば韻を踏まない吐き捨てるようなフレージングを使う——アレックス・ロラの声そのものがこのジャンルの署名だ。

生まれた背景

決定的な起点はアレックス・ロラ(1952-、メキシコシティ生)が1968年に結成したThree Souls In My Mind(後のEl Tri)だった。1968年10月2日のトラテロルコ虐殺——政府軍がオリンピック直前の学生デモを鎮圧し数百人を殺害した事件——直後の空気の中で、彼らは英語ではなくスペイン語のブルース・ロックを鳴らし始めた。1971年の野外フェスAvándaro(通称メキシコ版Woodstock)以降、メキシコ政府はロック公演を事実上禁止し、シーンは「Hoyos Funky(ファンキーな穴)」と呼ばれる違法な地下会場へ潜った。この10年余の地下時代が、ロック・ウルバーノを商業ロックとは別の道に進ませた。1978年、Three Souls In My Mindは名義をEl Triに変更、以降アレックス・ロラは現在まで半世紀にわたって同じバンドで活動を続けている。並行してBotellita de Jerez(1983-93)がルチャリブレとロックの寓話を混ぜた自称ジャンル「Guacarock」を打ち出し、La Cuca(1989結成、Guadalajara)、La Lupita(1992結成)が続いた。

聴きどころ

アレックス・ロラの声——鼻にかかった、しゃがれた、決して技巧的ではない——が最大の聴きどころだ。『Metro Balderas』(1984)は、メキシコシティ地下鉄1号線の駅名を舞台にした失恋歌で、Fito Páezがのちにアルゼンチン側からカヴァーする汎ラテン標準曲になった。ロラの歌唱は音程を外す寸前で踏みとどまる不安定さを持ち、それが「街の音」の説得力を生む。ハーモニカとエレキギターがブルース・ロックの伝統に忠実に鳴る一方で、歌詞の内容はシカゴ・ブルースではなくメキシコシティのバリオそのものだ。Botellita de Jerezの『Charrock and Roll』はチャロ(牧夫)とロックンロールを掛けた寓話的タイトルで、メキシコの民俗とロックが二重にパロディ化される瞬間が聴ける。

発展

1985年『Chavo de Onda』(下町の若者、の意)がバリオ賛歌として広く歌われ、El Triはロック・ウルバーノの代名詞になった。同世代にBotellita de Jerez(1983-93、「Guacarock」という自称ジャンルでルチャリブレとロックの寓話を混ぜたバンド)、La Cuca(1989結成、Guadalajara)、La Lupita(1992結成)が続いた。Rockdrigo González(1950-85、フォーク・ロック側の代表格で1985年地震で死去)は、この系譜のシンガー・ソングライターとして今も強い影響を残す。ロック・ウルバーノは1990年代以降のRock en Españolに比べれば商業的には地味だが、Metroの車内、La Merced市場周辺、Tepitoの露店では現在も日常的に鳴っている、メキシコシティのストリートの音だ。

出来事

  • 1968: Three Souls In My Mind結成、トラテロルコ虐殺
  • 1971: Avándaroフェス、政府によるロック弾圧
  • 1978: El Tri名義へ変更
  • 1985: メキシコシティ大地震、Rockdrigo González死去
  • 1985: El Tri『Chavo de Onda』

派生・影響

後のメキシカン・スカ(Panteón Rococó、Maldita Vecindad)、Rock en Españolの反体制側(Molotov)、そして現代のCorridos Belicos的な下町の現実主義まで、系譜としてはメキシコ音楽の「街」の側面を支え続ける。

音楽的特徴

楽器エレキギター、ベース、ドラム、ハーモニカ、時にキーボード、ボーカル

リズムブルース・ロックの4/4シャッフル、ハードロックの4/4、時に3拍子のバラード

代表アーティスト

  • El Triメキシコ · 1968年〜
  • Rockdrigo Gonzálezメキシコ · 1981年〜1985
  • Botellita de Jerezメキシコ · 1983年〜1993
  • La Cucaメキシコ · 1989年〜

代表曲・古典

日本との関係

日本でのロック・ウルバーノの認知はほぼゼロに近い。英語圏の音楽誌経由での紹介がほぼ無く、CDやレコードも輸入盤が限定的にしか入らない。だが、メキシコシティに旅行した日本人音楽好きが現地のカンティーナ(酒場)でEl Triの曲が鳴っているのを聴き、「これは何だ」と持ち帰るという小さな回路は続いている。日本ブルース・ロック好き(浅野忠信、忌野清志郎の熱心なリスナーなど)にとっては、El Triの粗い音は同じ地平の音として理解可能だ。素直に言えば、日本ではまだ見つかっていないジャンルだ。

初めて聴くなら

最初はEl Triの『Metro Balderas』(1984)、ロック・ウルバーノの叙情性と土地性の完成形だ。次に『Chavo de Onda』(1985)、バリオの若者賛歌としてメキシコシティ全域で歌われ続けている。Rockdrigo Gonzálezの『Distante Instante』は、彼の1985年地震での早逝以降、殉死者の遺した記録として神話化されている。全体的には、メキシコシティのカンティーナで蒸し暑い夜にビールを開けながら聴くのが、このジャンルの本来の作法だ。

豆知識

アレックス・ロラ(本名Álex Lora)は現在まで半世紀以上El Triを率いており、これは世界でも最も長く続いているロック・バンドの一つだ。彼はメキシコシティの一般人にとっては「Rock nacional(国民ロック)の代名詞」で、地下鉄駅で見かけた時に自然に握手を求められる存在。Botellita de Jerezの「Guacarock」は、彼らが冗談で作った自称ジャンル名だが、後にメキシコの音楽誌が本気で使うようになったという由来を持つ。Rockdrigo Gonzálezが1985年9月19日の地震で自宅崩壊により35歳で死去した際、彼の未発表テープの多くも一緒に失われたと伝えられ、これが「メキシコのボブ・ディラン」を伝説化した。

影響・派生で結ばれたジャンル

ロック・ウルバーノ・メキシカーノを中心とした近傍図。中心と直接結ばれるエッジが強調表示されます。

ロック・ウルバーノ・メキシカーノ の系譜全体図(多段)を見る

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メキシコ · 1968年前後 (±25年)