古典

十二音技法

Twelve-tone Technique

ウィーン / オーストリア / 中央ヨーロッパ · 1923〜1980年

別名: ドデカフォニー / Dodecaphony

12の半音を一定の順序(音列)に並べ、その順序関係を作品全体で展開する作曲技法。1923年シェーンベルクが体系化。

どんな音か

12の半音(ド・ド#・レ・レ#……シの12音)を一列に並べた「音列(ゼリエ)」を作り、その音列とその変形(逆行・転回・逆行転回)を使って曲全体を構成する。特定の音が他より多く出てくることで生じる「調性感(ハ長調など)」を意図的に避けるための技法で、12音は必ず平等に扱われる。これによって耳に「宙吊り」のような感覚が生まれ、始まりと終わりの感覚が曖昧になる。実際の音楽は音列の機械的な適用ではなく、音列から音の素材を作り出した上で作曲家が音域・リズム・強弱を選択するため、同じ技法でもシェーンベルク、ベルク、ウェーベルンでは全く異なる響きになる。

生まれた背景

アルノルト・シェーンベルクは1908年ごろに調性を離れた「無調音楽」を書き始め、1923年にピアノ組曲 作品25で十二音技法を初めて体系的に使った。第一次世界大戦後のウィーンで生まれたこの技法は、世紀転換期のロマン派の語法を「使い果たした」という感覚から生まれたとシェーンベルクは説明している。弟子のアルバン・ベルクはこの技法を古典的な形式や調性的な旋律と組み合わせて「ヴァイオリン協奏曲」(1935年)のような感情的な作品を作り、アントン・ウェーベルンは極端に短く点描的な作品に応用した。第二次世界大戦後、ダルムシュタットの現代音楽講習会でこの技法が広まり、ピエール・ブーレーズやカールハインツ・シュトックハウゼンがさらに発展させた。

聴きどころ

ベルクの「ヴァイオリン協奏曲」(1935年)は最も聴きやすい入口で、冒頭で音列がゆっくりと提示される。音列が上昇するにつれて弦の空弦(開放弦)の音が混じり、バッハのコラールの断片が途中で現れる——という構成を意識して聴くと、音列と旋律の関係が見えてくる。シェーンベルクの「管弦楽のための変奏曲 作品31」はより抽象的だが、テーマが変奏される各セクションの区切りを感じ取ろうとするだけで聴く骨格ができる。

発展

シェーンベルク「ピアノ組曲」 作品25(1923)が最初の12音作品、「管弦楽のための変奏曲」 作品31(1928)、ベルク「叙情組曲」(1926)「ヴァイオリン協奏曲」(1935)、ウェーベルン「交響曲」 作品21(1928)「弦楽四重奏曲」 作品28(1938)が代表作となる。戦後はストラヴィンスキー後期、ダラピッコラ、L.ノーノら多くの作曲家が採用した。

出来事

  • 1923: シェーンベルク「ピアノ組曲」 作品25
  • 1928: ウェーベルン「交響曲」 作品21
  • 1935: ベルク「ヴァイオリン協奏曲」
  • 1938: シェーンベルク米国亡命、12音技法を世界に伝播

派生・影響

戦後トータル・セリアリズム(ブーレーズ、シュトックハウゼン)、1980年代までの前衛音楽全体の理論的基盤となり、ジャズ・現代映画音楽にも応用された。

音楽的特徴

楽器管弦楽、室内楽、声楽

リズム音列の原型・反行・逆行、対位法的書法

代表アーティスト

  • アルノルト・シェーンベルクオーストリア/米国 · 1900年〜1951
  • アルバン・ベルクオーストリア · 1908年〜1935
  • アントン・ウェーベルンオーストリア · 1908年〜1945
  • イーゴリ・ストラヴィンスキーロシア/フランス/米国 · 1908年〜1971

代表曲

日本との関係

戦後の日本現代音楽に直接影響を与えた技法で、武満徹・松平頼則・矢代秋雄・湯浅譲二らがこの技法を学んだ。武満は後に音列技法から離れたが、初期作品には十二音的な思考が見られる。黛敏郎は十二音技法日本雅楽・仏教音楽を組み合わせることを試みた。音楽大学の作曲専攻では今も現代音楽史の必須項目として教えられる。

初めて聴くなら

ベルクの「ヴァイオリン協奏曲」(1935年)から入ることを強くすすめる。悲しみと懐かしさが共存する作品で、技法の難しさを意識せずに感情で聴けるまれな十二音作品。次にウェーベルンの「交響曲 作品21」(1928年)を聴くと、まったく対照的な極限の簡潔さに驚く。

豆知識

十二音技法は1930〜40年代のナチス政権下で「退廃音楽(Entartete Musik)」として弾圧され、シェーンベルクはユダヤ人であったためアメリカ合衆国に亡命した。一方でイーゴリ・ストラヴィンスキーはシェーンベルクの技法を長年批判していたが、シェーンベルクの死後(1951年)に自らも十二音技法を取り入れ始めた。この転向は音楽史の大きな話題となった。

影響・派生で結ばれたジャンル

ジャンル関係図1900年代1910年代1920年代1940年代1970年代十二音技法十二音技法無調音楽無調音楽新古典主義音楽新古典主義音楽トータル・セリアリズムトータル・セリアリズム新複雑性新複雑性凡例派生影響同系統
凡例
派生影響同系統
十二音技法を中心とした近傍図。中心と直接結ばれるエッジが強調表示されます。

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同じ時期・同じ地域で生まれた他のジャンル

オーストリア · 1923年前後 (±25年)

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