十二音技法
12の半音を一定の順序(音列)に並べ、その順序関係を作品全体で展開する作曲技法。1923年シェーンベルクが体系化。
どんな音か
12の半音(ド・ド#・レ・レ#……シの12音)を一列に並べた「音列(ゼリエ)」を作り、その音列とその変形(逆行・転回・逆行転回)を使って曲全体を構成する。特定の音が他より多く出てくることで生じる「調性感(ハ長調など)」を意図的に避けるための技法で、12音は必ず平等に扱われる。これによって耳に「宙吊り」のような感覚が生まれ、始まりと終わりの感覚が曖昧になる。実際の音楽は音列の機械的な適用ではなく、音列から音の素材を作り出した上で作曲家が音域・リズム・強弱を選択するため、同じ技法でもシェーンベルク、ベルク、ウェーベルンでは全く異なる響きになる。
生まれた背景
アルノルト・シェーンベルクは1908年ごろに調性を離れた「無調音楽」を書き始め、1923年にピアノ組曲 作品25で十二音技法を初めて体系的に使った。第一次世界大戦後のウィーンで生まれたこの技法は、世紀転換期のロマン派の語法を「使い果たした」という感覚から生まれたとシェーンベルクは説明している。弟子のアルバン・ベルクはこの技法を古典的な形式や調性的な旋律と組み合わせて「ヴァイオリン協奏曲」(1935年)のような感情的な作品を作り、アントン・ウェーベルンは極端に短く点描的な作品に応用した。第二次世界大戦後、ダルムシュタットの現代音楽講習会でこの技法が広まり、ピエール・ブーレーズやカールハインツ・シュトックハウゼンがさらに発展させた。
聴きどころ
ベルクの「ヴァイオリン協奏曲」(1935年)は最も聴きやすい入口で、冒頭で音列がゆっくりと提示される。音列が上昇するにつれて弦の空弦(開放弦)の音が混じり、バッハのコラールの断片が途中で現れる——という構成を意識して聴くと、音列と旋律の関係が見えてくる。シェーンベルクの「管弦楽のための変奏曲 作品31」はより抽象的だが、テーマが変奏される各セクションの区切りを感じ取ろうとするだけで聴く骨格ができる。
発展
シェーンベルク「ピアノ組曲」 作品25(1923)が最初の12音作品、「管弦楽のための変奏曲」 作品31(1928)、ベルク「叙情組曲」(1926)「ヴァイオリン協奏曲」(1935)、ウェーベルン「交響曲」 作品21(1928)「弦楽四重奏曲」 作品28(1938)が代表作となる。戦後はストラヴィンスキー後期、ダラピッコラ、L.ノーノら多くの作曲家が採用した。
出来事
- 1923: シェーンベルク「ピアノ組曲」 作品25
- 1928: ウェーベルン「交響曲」 作品21
- 1935: ベルク「ヴァイオリン協奏曲」
- 1938: シェーンベルク米国亡命、12音技法を世界に伝播
派生・影響
戦後トータル・セリアリズム(ブーレーズ、シュトックハウゼン)、1980年代までの前衛音楽全体の理論的基盤となり、ジャズ・現代映画音楽にも応用された。
音楽的特徴
楽器管弦楽、室内楽、声楽
リズム音列の原型・反行・逆行、対位法的書法
代表アーティスト
- アルノルト・シェーンベルク
- アルバン・ベルク
- アントン・ウェーベルン
- イーゴリ・ストラヴィンスキー
代表曲
- Variations for Orchestra — アルノルト・シェーンベルク (1928)
- ピアノ組曲 作品25 — アルノルト・シェーンベルク (1923)
- 交響曲 作品21 — アントン・ウェーベルン (1928)
- 管弦楽のための変奏曲 作品31 — アルノルト・シェーンベルク (1928)
- ヴァイオリン協奏曲 — アルバン・ベルク (1935)
日本との関係
初めて聴くなら
ベルクの「ヴァイオリン協奏曲」(1935年)から入ることを強くすすめる。悲しみと懐かしさが共存する作品で、技法の難しさを意識せずに感情で聴けるまれな十二音作品。次にウェーベルンの「交響曲 作品21」(1928年)を聴くと、まったく対照的な極限の簡潔さに驚く。
豆知識
影響・派生で結ばれたジャンル
同じ時期・同じ地域で生まれた他のジャンル
- 古典表現主義音楽
