エモ
1980年代中盤ワシントンDCのHardcore Punkから派生した、感情表現重視のサブジャンル。
どんな音か
ロックの一系統で、内省的で感情的な歌詞と、静かなパートから一転して爆発する大きな音量差(ダイナミクス)を特徴とする。ギターは、澄んだ音色のアルペジオと、音を歪(ひず)ませたパワーコードを行き来する。ボーカルも一曲の中で、ささやくような語り、絞り出す高音、絶叫という三つの声を使い分ける。テンポはBPM 100〜180、ギター・ベース・ドラムのバンド編成が基本で、多くは4ピースだ。歌詞は失恋、死にたいという思い、青春の痛み、家庭の問題、自己嫌悪といった、一人称で語られる感情の吐露が中心。録音ではバンドの生演奏感を残しながら、音量の落差をあえて強調したミックスにする。2000年代半ばには、アイライン、黒×赤の配色、横に流した前髪といった見た目が、音楽そのものと同じくらいジャンルの記号になった。
生まれた背景
1985年ごろ、ワシントンDCで起きた「レボリューション・サマー」と呼ばれるシーンの転換期に、Rites of SpringやEmbrace(イアン・マッケイがMinor Threat解散後に結成したバンド)が、感情をむき出しにしたハードコア・パンク「emotional hardcore(emocore)」を確立した。1990年代半ばから後半にかけては、Sunny Day Real Estate、Mineral、American Footballらが絶叫を抑え、メロディと内省を前面に出す。これにより「インディー・エモ」としてスタイルが定着した。2000年代半ばには、My Chemical Romance、Jimmy Eat World、Fall Out Boy、ParamoreらがラジオとMTVを通じて主流(メインストリーム・エモ)に躍り出る。2010年代後半にはエモラップが現れ、失恋や痛みを歌うジャンルの担い手であるLil PeepとXXXTentacionが、いずれも20代前半で世を去った(それぞれ2017年、2018年没)。近年はエモ・リバイバル(Wishy、Hotline TNT)も生まれている。エモは終わるのではなく、世代ごとに姿を変えてきた。
聴きどころ
クリーン・ギターの繊細なアルペジオと、サビでの歪み全開のコントラストにまず注目したい。ボーカルが「語り」から「絶叫」に切り替わる瞬間と、サビへ突入する直前のドラムのフィルも聴きどころだ。そして歌詞の一人称性。American Footballに代表される「マスエモ」(4拍子以外の変わった拍子を多く使うタイプ)では、タッピング——両手で弦を叩く奏法——で弾く、複雑に絡み合うギターラインが特徴的で、一人で弾いているのに二人いるように聞こえる。
発展
1994年Sunny Day Real Estate『Diary』が「Second Wave」を画す。2000年代Fall Out Boy/My Chemical Romance/Dashboard Confessionalらが「Third Wave」として大衆化、Pop Punkと近接化した。
出来事
- 1985: Rites of Spring結成 / 1994: Sunny Day Real Estate『Diary』 / 2003: Dashboard Confessional / 2004: My Chemical Romance『Three Cheers』
派生・影響
Midwest Emo、Pop Punk、Screamo、Post-hardcore、Emo Rap。
音楽的特徴
楽器ギター、ベース、ドラム、声
リズム可変、急変ダイナミクス、感情的歌唱
リズムを聴く
このジャンルを特徴づける代表的なリズムパターン。再生ボタンでループ再生し、下のリズム譜で今どの拍が鳴っているかを確認できます。
代表アーティスト
- Rites of Spring
- Jawbreaker
- Fugazi
- Sunny Day Real Estate
- Mineral
代表曲
- For Want Of — Rites of Spring (1985)
- Boxcar — Jawbreaker (1994)
- In Circles — Sunny Day Real Estate (1994)
- Seven — Sunny Day Real Estate (1994)
Shame Shame — Rites of Spring (1985)
日本との関係
初めて聴くなら
豆知識
「Emo」はもとは「emotional hardcore」(感情的ハードコア)の略。だが、同じ「エモ」の一語でくくられた音楽は、中身がほとんど別物だった。東海岸DCの第一世代(1980年代半ば)であるRites of Springはメロディックでコード主体、後の西海岸サンディエゴ(1990年代前半)のHeroinやAntioch Arrowはカオティックで絶叫型と、音楽性は大きく異なる。当のバンドの多くは後年、この呼び名を「単純化しすぎだ」として嫌った。
影響・派生で結ばれたジャンル
同じ時期・同じ地域で生まれた他のジャンル
- エレクトロニックテクノ
- エレクトロニックディープハウス
- エレクトロニックボールルーム/ヴォーグ・ビート
- エレクトロニックハウス
- ヒップホップ・R&BコンテンポラリーR&B
- ヒップホップ・R&Bブーンバップ
- ロック・メタルポスト・ハードコア
- ロック・メタルグランジ
