ダブ
1970年代のジャマイカで成立した、Reggaeのリズムトラックをエフェクトで再構築する音楽。
どんな音か
生まれた背景
もとは、ヴォーカルを抜いた「楽器バージョン(version)」をレゲエの45回転シングルのB面に入れる慣習があった。きっかけは1968年、デューク・リードのスタジオ「Treasure Isle」で、サウンドシステム運営者のルディ・レッドウッドがダブプレートを切らせた際、エンジニアが歌を入れ忘れてできた偶然の盤だとされる。このヴォーカル抜きの「バージョン」が、DJがマイクで即興にしゃべりや掛け声を乗せる「トースティング(toasting)」の土台にもなり、同時にミキシングそのものを再構築する芸術=ダブをも生んだ。ジャマイカのキング・タビー(本名オズボーン・ラドック)はミキシング卓での再構築を芸術にまで高め、プロデューサーのリー・ペリーも同時期に独自のダブを築いた。1973〜78年に『King Tubby Meets Rockers Uptown』(1976)やペリー『Super Ape』(1976)といった名盤が生まれる。やがて後世に受け継がれたのは、どれか一枚の名盤そのものよりも、スタジオを楽器として演奏する発想と「間」の使い方だった。1970年代後半にイギリスへ渡ってポストパンクの音作りに影響を与え、1980年代以降はブリストルのトリップホップへ流れ込んだ。その空間処理の発想は、テクノやダブステップなど現在のダンス・ミュージックのミキシングにまで及ぶ。
聴きどころ
音が突然消えて、エコーだけが残る瞬間(「dub spaces」)。ベースとドラムだけになった時の空間の広さ。演奏中に音量つまみ(フェーダー)が操作され、各楽器が急に大きくなったり消えたりするのが聴き取れる。キング・タビーは卓に組み込まれたフィルター(高い音や低い音を削る装置)の大きなつまみを演奏のように操作し、低音を一気に抜いては戻した──いまのDJがフィルターのつまみを回す手つきの先駆けだ。同じ曲の「ボーカル・バージョン」と「ダブ・バージョン」を続けて聴くと、何が変わったかが分かりやすい。
リズムを聴く
このジャンルを特徴づける代表的なリズムパターン。再生ボタンでループ再生し、下のリズム譜で今どの拍が鳴っているかを確認できます。
代表アーティスト
- Lee "Scratch" Perry
- King Tubby
- Augustus Pablo
代表曲
- King Tubby's Special — King Tubby (1973)
- King Tubby Meets Rockers Uptown — King Tubby (1976)
- King Tubby Meets the Rockers Uptown (Pablo) — Augustus Pablo (1976)
- Police and Thieves (dub) — Lee "Scratch" Perry (1976)
- Black Ark in Dub — Lee "Scratch" Perry (1980)
日本との関係
初めて聴くなら
豆知識
「Dub」という名は、スタジオで作るアセテート盤(1点物の試聴盤)を「ダブ・プレート(dub plate)」と呼んだことに由来するとされる(諸説ある)。リー・ペリーは自身のスタジオ「Black Ark」が最終的に焼失し、廃業した。ペリー本人が火をつけたという説が広く語られ、理由を「悪霊が住み着いたから」と説明したこともある(出火の経緯は定かでない)。
