伝統・民族

フェスト・ノーズ

Fest-Noz

ブルターニュ / フランス / ケルト圏 · 1950年〜

ブルターニュの夜の集団舞踏祭。

どんな音か

フェスト・ノーズ(夜の祭)は音楽と踊りが分離しない。観客席があるわけではなく、参加者全員が手をつないで輪になるか横に並び、音楽に合わせて足を踏む。音楽はアン・ドロ(3/4拍子の円舞)、ガヴォット(2拍子)、プリン・ブレイズ(進行の踊り)など多くの踊りの形式に対応しており、それぞれに決まった足のステップがある。演奏者はバグパイプ(ビニウ)と太鼓のデュオ、またはアコーディオン、フルート、ギターなどの編成で、フレーズが何十回もくり返される。Alan Stivellはケルト・ハープとロックを組み合わせてフェスト・ノーズの音楽を国際的な文脈に置き、Denez Prigentは伝統的な「カナン・ハ・ディスカン」(掛け合い唱法)を中心に活動している。

生まれた背景

フェスト・ノーズの現代的な形は1950年代のブルターニュ文化復興運動と結びついている。ブルターニュはフランスの一地域だが、ケルト語系のブルトン語を持ち、その文化的独自性を守る運動が20世紀に何度も起きた。農村から都市への人口移動が進む中で、1954年頃からナントやレンヌのような都市でフェスト・ノーズが開催され、農村の踊りを都市の若者が再学習する場になった。1970年代にはケルト音楽リバイバルの波がブルターニュにも届き、Alan Stivellの「ブルターニュの波」(1971年)が象徴的な作品となった。フェスト・ノーズは2012年にユネスコの無形文化遺産に登録されている。

聴きどころ

Alan Stivellの「Tri Martolod」(1971年)ではケルト・ハープとエレクトリックギターが同居する異質な組み合わせを聴く。旋律が繰り返されるにつれて音の密度が変わるかどうか、変わらないとすれば何が変化するかを追う——踊り手の動きを支える音楽として、変わり続けるより安定して繰り返す方が機能する。Denez Prigentの「Gortoz a Ran」(2000年)はカナン・ハ・ディスカン(声だけの掛け合い)スタイルで、楽器なしの二声が絡む独特の緊張感がある。

発展

1970年代Alan Stivellのケルト・リバイバルで都市的人気が爆発。現代ではDenez Prigentら新世代がエレクトロニカと融合させる。年間1000以上のフェスト・ノーズが各地で開催される。

出来事

  • 1955: Polig Monjarret再構成
  • 1971: Alan Stivell『Renaissance de la Harpe Celtique』
  • 2012: ユネスコ無形文化遺産登録

派生・影響

Celtic Rock、Bagad音楽の源流。

音楽的特徴

楽器ボンバルド、ビニウ・コーズ、アコーディオン、フィドル、声

リズムAn Dro、Hanter Dro、Gavotteなど地域舞踏

代表アーティスト

  • Bagad Kemperフランス(ブルターニュ) · 1949年〜
  • Alan Stivellフランス(ブルターニュ) · 1959年〜
  • Denez Prigentフランス(ブルターニュ) · 1991年〜

代表曲

日本との関係

日本ではケルト音楽全般への関心(アイルランド音楽、スコットランド民謡)の延長線上で、ブルターニュ音楽を知る人が一部にいる。フェスト・ノーズという形式そのものは知られていないが、Alan Stivellは1990年代に一部のワールドミュージックファンの間で聴かれた。アニメや映画でケルト系の旋律が使われることがあり(「千と千尋の神隠し」のスコアにケルト的な楽器音がある等)、そこから掘り下げる人もいる。

初めて聴くなら

Alan Stivellの「Suite Sudarmoricaine」(1971年)はケルト・ハープの独奏から始まり、徐々に電気楽器が加わる構成で、フェスト・ノーズの音楽がいかにして現代的な文脈に置かれたかがよくわかる。「Tri Martolod」は知名度が高く、繰り返しの構造と踊り音楽としての機能が一番感じ取れる。Denez Prigentの「An Hentou Treuz」(1997年)は伝統的な掛け合い唱法の録音として、人の声だけのフェスト・ノーズがどんな音か確認できる。

豆知識

ブルトン語の「カナン・ハ・ディスカン」は「前唱と後唱」を意味し、一人(または数人)が一節を歌い、別の一人(または数人)が次の節を引き取る掛け合いだ。この唱法は楽器なしの踊り音楽として機能し、声が踊り手のリズムキープの役割を果たす。特筆すべきは、カナン・ハ・ディスカンが原則として楽譜を使わず口承で伝わってきた点で、それがユネスコが無形文化遺産として注目した理由の一つだ。

影響・派生で結ばれたジャンル

フェスト・ノーズを中心とした近傍図。中心と直接結ばれるエッジが強調表示されます。

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フランス · 1950年前後 (±25年)

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