中国
China
東アジア
中国は、国内の音楽需要をほぼ自国の音楽だけで満たしている国だ。2025年には前年比20.1%増でドイツを抜き、世界4位の音楽市場に浮上した(IFPI 2026年版報告)。海外の配信サービスがネット規制で事実上遮断されているからこそ、中国語ポップス(C-pop)が市場を自前で回す構図が成り立っている。配信は二強体制だ。市場の約6割を握るのが騰訊音楽(テンセント・ミュージック、略称TME)で、QQミュージックなどを傘下に持ち、有料会員は約1.3億人にのぼる。これを、インディーズやファン同士の交流に強いネットイース・クラウド・ミュージックが追う。市場の頂点に立つのが周杰倫(ジェイ・チョウ)と華晨宇(ホア・チェンユー)の二大看板で、その裾野をアイドルグループやアニメソングが広げている。
自国アーティストの人気曲
好想爱这个世界啊 / この世界を愛したい — 华晨宇 (Hua Chenyu) · 2019NetEase 2025年間アーティスト・华晨宇の代表曲のひとつ。鬱病を題材にした繊細なバラードで、Z世代の精神的支柱として聴かれる。
- 孤勇者 / 孤独な勇者 — 陈奕迅 (Eason Chan) · 2021
アニメ『アーケイン』中文版主題歌。「英雄じゃなくても君は勇者」と歌い、中国の小学生にまで愛唱される国民級アニソン。
TikTok(抖音)で子供達のカバー動画が無数に生まれた。
海外アーティストの人気曲
ディズニー『アナと雪の女王』。中国本土の家庭で子供と一緒に最初に出会う洋楽の代表格として、長期チャートインを続ける。
世代・地域・経済による違い
中国は、世代と性別で聴く曲がくっきり割れる珍しい市場だ。都市部の若者は、先に挙げた二大看板に加え、アニメソングやインディーズ(主にネットイース経由)へと好みが分かれる。10〜20代の女性は、TFBoysと同じ事務所が育てた後発の男性アイドルグループ・時代少年団などを好む。同世代の男性は、中国語ラップを国際的に押し広げたHigher Brothersの流れをくむヒップホップに向かう傾向がある。なお中国語ラップ自体は1990年代から存在し、これを一気に大衆化させたのは2017年のオーディション番組『中国有嘻哈(ラップ・オブ・チャイナ)』だった。一方、地方の中高年層は、テレサ・テン(鄧麗君)の再評価に代表される往年の歌謡曲や、紅歌(紅歌)を聴き続ける。海外勢に目を向けると、韓国コンテンツは、2016年のTHAAD(アメリカ合衆国の高高度ミサイル防衛システム)の韓国配備をめぐる中韓対立以降、公式な発売の許可が事実上止まっており、K-POPの流入は非公式経路が中心だ。同じ国の音楽でありながら、聴く世代が違えば共通の一曲すら見つからない――そんな市場はそうそうない。
