マンダリンポップ
20世紀初頭の上海で源流をもち、現在は台湾・中国を中心に展開する標準中国語のポップ。
どんな音か
標準中国語(普通話。英語名マンダリンの由来)で歌われるポップ。中心はバラードで、ピアノとストリングスを土台にサビで声を張り上げ、メロディが大きく開く。そこへシンセサイザーやエレキギター、ドラムが厚みを足す。テンポは1分間に70〜110拍(BPM70〜110)とゆったりめが中心だ。歌詞のテーマは恋愛、別れ、家族、青春、社会観察。歌い手は語尾を繊細に揺らして情感を込め、メリスマ(細かな節回し)とビブラート(声を震わせる唱法)が持ち味だ。曲構成では、ブリッジで音数を減らしてピアノと声だけに落とし、半音上げ転調した最後のサビへなだれ込む型が多い——1980年代のカントポップ(広東語ポップ)でも定着した手法だ。音作りは歌声を前面に立て、全体の音量を大きめに仕上げる。
生まれた背景
1970年代の台湾・香港で、上海歌謡(1930〜40年代の中国大衆音楽)を継承する形で成立した。母とされるのは1970〜80年代の鄧麗君(テレサ・テン)で、その甘く伸びやかなバラードは台湾・香港・日本・中国本土・東南アジアの中華圏全体で広く愛された。続く世代では、艶のある歌声で女王と呼ばれた張惠妹(A-Mei)、唯一無二の浮遊感で知られるフェイ・ウォン(王菲)、香港随一の歌唱力で「歌神」と呼ばれる張学友らがその系譜を広げた。流れを決定づけたのは2000年デビューの周杰倫(ジェイ・チョウ)で、2001年の『Fantasy(範特西)』のブレイク以降は圧倒的な存在感を持ち、台湾ポップを世界水準に押し上げた。2010年代以降は中国本土のシーンが急拡大し、華晨宇(ホア・チェンユー)やG.E.M.(鄧紫棋)ら新世代が台頭している。
聴きどころ
聴きどころは、旋律がどう言葉に寄り添うかだ。中国語には音の高低で意味が変わる四声(声調)があり、同じメロディに別の歌詞を当てると意図しない意味に聞こえてしまうことがある。そのため作曲時には、上がる旋律を上がる声調に、下がる旋律を下がる声調に乗せるよう細心の注意が払われる。周杰倫(ジェイ・チョウ)以降の楽曲はR&B、ヒップホップ、トリップホップを取り入れた複雑なプロダクションだが、メロディとヴォーカルは一貫して聴き取りやすさを最優先する。
代表アーティスト
- Li Xianglan (李香蘭)
- Teresa Teng (鄧麗君)
- Jacky Cheung (張學友)
- Leon Lai (黎明)
- Faye Wong (王菲)
- Michael Wong (光良)
- Jolin Tsai (蔡依林)
- Jay Chou (周杰倫)
代表曲
- 月亮代表我的心 — Teresa Teng (鄧麗君) (1977)
- 我只在乎你 — Teresa Teng (鄧麗君) (1986)
- 我是不是該安靜的走開 — Leon Lai (黎明) (1993)
- 日不落 — Jolin Tsai (蔡依林) (2007)
- 青花瓷 — Jay Chou (周杰倫) (2007)
- 稻香 — Jay Chou (周杰倫) (2008)
日本との関係
初めて聴くなら
古典なら、鄧麗君(テレサ・テン)の歌唱で広く知られるスタンダード『月亮代表我的心』(邦題:月は何でも知っている、原曲は1970年代前半、テン版は1977)——中華圏で誰もが口ずさめる一曲だ。決定打は周杰倫(ジェイ・チョウ)『青花瓷』(青と白の磁器、2007)——R&Bと中国五音階の融合が一聴で分かる代表作。最近のものなら、G.E.M.(鄧紫棋)『光年之外』(光年のかなた、2016)を聴くといい。
