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宗教・霊歌

ゴスペル・ハイライフ

Gospel Highlife

アクラ / クマシ / ガーナ / 西アフリカ · 1985年〜

別名: Ghanaian gospel / Gospel Twi

ハイライフのギターとホーンの語法を、ペンテコステ派カリスマ教会の礼拝音楽に持ち込んだガーナ独自の宗教ポップ。

どんな音か

ゴスペル・ハイライフは、1980年代半ばのガーナで、ハイライフ(特に1970年代のギター・バンド・ハイライフ)のギター・ラインとホーン・アレンジをそのまま流用し、歌詞をキリスト教賛美に置き換えた宗教ポップだ。テンポは90-115BPMで、伝統的なオセ(4/4に軽く跳ねる)またはヨロホ(6/8)のリズムを守る。編成はエレキギター2本(リード+リズム)、ベース、ドラム、キーボード、ホーンセクション、そしてリード・ボーカル+バック・コーラス。歌詞はほぼ全編トゥイ語で、時にガ語やエウェ語、英語のブリッジが混じる。日曜午前の教会の生演奏、そしてラジオでの日曜朝ローテーションが最大の流通経路で、CD、DVD、YouTube の再生数がガーナの宗教音楽産業を支えている。

生まれた背景

1980年代半ば、ガーナで Church of Pentecost、International Central ゴスペル Church、Lighthouse Chapel International などのペンテコステ派カリスマ教会が急拡大し、その礼拝音楽の需要が既存のハイライフ楽団と結びついたのが起点だ。初期の代表は Yaw Sarpong(1958-)率いる Asomafo で、1980年代後半にハイライフのギター・バンド編成を宗教曲に移植した。1996年、Cindy Thompson の『Awurade Kasa』(『主よ、語り給え』)が全国ヒットし、女性リード・ボーカル+男性コーラスの型が定着、以降 Ohemaa Mercy、Diana Asamoah、Mary Ghansah が続いた。ペンテコステ派の礼拝形式は数時間に及ぶ集団歌唱と即興的な祈りを組み合わせるので、演奏者は5-15分の長尺曲を、途中でテンポと熱量を段階的に上げていく設計に慣れており、これがゴスペル・ハイライフの構造にも反映されている。

聴きどころ

まず Cindy Thompson『Awurade Kasa』(1996)を聴くと、ハイライフのオセ・リズムと女性リード・ボーカルの張り上げ方が明快に伝わる。ハイライフの「ギター2本のインターロック」がそのまま賛美歌の伴奏に翻訳されている点が最大の特徴で、リード・ギターの単音リフが福音書の一節の反復を音楽的に模す構造になっている。Joe Mettle『Bo Noo Ni』(2017)はより現代的で、コンテンポラリー・ゴスペル(米国黒人教会音楽)のシンセパッドとハイライフのホーンが同居する。曲の後半で必ず訪れる『祈りのブリッジ』(テンポが落ち、歌が語りに近づく箇所)が聴きどころだ。

発展

2000年代以降は Joe Mettle(1981-)がゴスペル・ハイライフとコンテンポラリー・ゴスペル(米国黒人教会音楽)を橋渡しし、2017年に MTV Africa Music Awards の Best Gospel を非ナイジェリア枠として獲得した。近年は SP Kofi Sarpong、Piesie Esther、Diana Hamilton らが世代を継ぎ、日曜朝の Peace FM、Adom FM、UTV のゴスペル番組が主要チャンネルになっている。ハイライフ楽団の生演奏を保持している点で、打ち込み中心のナイジェリアのゴスペルとは音の質感が大きく異なる。

出来事

  • 1985年頃: Yaw Sarpong と Asomafo 活動開始
  • 1996: Cindy Thompson『Awurade Kasa』全国ヒット
  • 2010: Joe Mettle デビュー
  • 2017: Joe Mettle、MTV Africa Music Awards Best Gospel

派生・影響

ハイライフの直系(regional_variant)であり、コンテンポラリー・ゴスペル(fused_with)。ナイジェリアのゴスペル・ハイライフ(Nathaniel Bassey ら)と兄弟関係。

音楽的特徴

楽器エレキギター、ベース、ドラム、キーボード、ホーンセクション、リード・ボーカル、集団コーラス

リズムオセ(跳ねる4/4)、ヨロホ(6/8)、時にスロー・バラードの3/4、コール・アンド・レスポンス

代表アーティスト

  • Cindy Thompsonガーナ · 1994年〜
  • Ohemaa Mercyガーナ · 2001年〜
  • Joe Mettleガーナ · 2010年〜

代表曲・古典

代表曲・現在

日本との関係

日本国内では東京・上野、川崎、横浜のガーナ人カリスマ教会(主に西アフリカ系ペンテコステ派)の日曜礼拝で聴くことができる。これらの教会は在日ガーナ人・ナイジェリア人コミュニティの中心で、Joe Mettle、Cindy Thompson の楽曲は日常的にラインナップに入っている。日本の音楽シーンでゴスペル・ハイライフを直接引用した例は極めて少ないが、Tokyo Mass Choir 系のクワイヤーがハイライフのリズム・パターンをワークショップで扱った記録が残る。JICA と関わりのある NGO 経由でガーナゴスペル歌手が来日する例もある。

初めて聴くなら

最初は Cindy Thompson『Awurade Kasa』(1996)、ジャンルの点火点そのものだ。続いて Joe Mettle『Bo Noo Ni』(2017)、コンテンポラリー・ゴスペルとの融合形態。Ohemaa Mercy『Aseda』(2015)はライブ・アルバムなので教会の熱量が直接伝わる。日曜午前、コーヒーを淹れながらスピーカーで鳴らすのが本領。

豆知識

『Awurade』はトゥイ語で「主」を意味し、ゴスペル・ハイライフのタイトルには『Awurade』『Onyame』(神)『Nyame』(神)『Jesus』が頻出する。Joe Mettle は本業の宗教活動と並行して2014年に Church of Pentecost の音楽ミニストリーの正式リーダーに任命されており、彼のアルバムは事実上その教団の公式音楽としても機能する。ガーナの音楽産業では、日曜午前のラジオ枠(Peace FM、Adom FM)のスポンサー料が世俗ポップより高値で取引されることが知られており、ゴスペル・ハイライフの経済規模はガーナ音楽全体の中でも大きなセグメントを占める。

影響・派生で結ばれたジャンル

ジャンル関係図1900年代1920年代1980年代1990年代ゴスペル・ハイライフゴスペル・ハイライフゴスペルゴスペルハイライフハイライフケニア・ゴスペルケニア・ゴスペル凡例派生影響同系統
凡例
派生影響同系統
ゴスペル・ハイライフを中心とした近傍図。中心と直接結ばれるエッジが強調表示されます。

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ガーナ · 1985年前後 (±25年)