ゴスペル・ハイライフ
ハイライフのギターとホーンの語法を、ペンテコステ派カリスマ教会の礼拝音楽に持ち込んだガーナ独自の宗教ポップ。
どんな音か
ゴスペル・ハイライフは、1980年代半ばのガーナで、ハイライフ(特に1970年代のギター・バンド・ハイライフ)のギター・ラインとホーン・アレンジをそのまま流用し、歌詞をキリスト教賛美に置き換えた宗教ポップだ。テンポは90-115BPMで、伝統的なオセ(4/4に軽く跳ねる)またはヨロホ(6/8)のリズムを守る。編成はエレキギター2本(リード+リズム)、ベース、ドラム、キーボード、ホーンセクション、そしてリード・ボーカル+バック・コーラス。歌詞はほぼ全編トゥイ語で、時にガ語やエウェ語、英語のブリッジが混じる。日曜午前の教会の生演奏、そしてラジオでの日曜朝ローテーションが最大の流通経路で、CD、DVD、YouTube の再生数がガーナの宗教音楽産業を支えている。
生まれた背景
1980年代半ば、ガーナで Church of Pentecost、International Central ゴスペル Church、Lighthouse Chapel International などのペンテコステ派カリスマ教会が急拡大し、その礼拝音楽の需要が既存のハイライフ楽団と結びついたのが起点だ。初期の代表は Yaw Sarpong(1958-)率いる Asomafo で、1980年代後半にハイライフのギター・バンド編成を宗教曲に移植した。1996年、Cindy Thompson の『Awurade Kasa』(『主よ、語り給え』)が全国ヒットし、女性リード・ボーカル+男性コーラスの型が定着、以降 Ohemaa Mercy、Diana Asamoah、Mary Ghansah が続いた。ペンテコステ派の礼拝形式は数時間に及ぶ集団歌唱と即興的な祈りを組み合わせるので、演奏者は5-15分の長尺曲を、途中でテンポと熱量を段階的に上げていく設計に慣れており、これがゴスペル・ハイライフの構造にも反映されている。
聴きどころ
発展
2000年代以降は Joe Mettle(1981-)がゴスペル・ハイライフとコンテンポラリー・ゴスペル(米国黒人教会音楽)を橋渡しし、2017年に MTV Africa Music Awards の Best Gospel を非ナイジェリア枠として獲得した。近年は SP Kofi Sarpong、Piesie Esther、Diana Hamilton らが世代を継ぎ、日曜朝の Peace FM、Adom FM、UTV のゴスペル番組が主要チャンネルになっている。ハイライフ楽団の生演奏を保持している点で、打ち込み中心のナイジェリアのゴスペルとは音の質感が大きく異なる。
出来事
- 1985年頃: Yaw Sarpong と Asomafo 活動開始
- 1996: Cindy Thompson『Awurade Kasa』全国ヒット
- 2010: Joe Mettle デビュー
- 2017: Joe Mettle、MTV Africa Music Awards Best Gospel
派生・影響
ハイライフの直系(regional_variant)であり、コンテンポラリー・ゴスペル(fused_with)。ナイジェリアのゴスペル・ハイライフ(Nathaniel Bassey ら)と兄弟関係。
音楽的特徴
楽器エレキギター、ベース、ドラム、キーボード、ホーンセクション、リード・ボーカル、集団コーラス
リズムオセ(跳ねる4/4)、ヨロホ(6/8)、時にスロー・バラードの3/4、コール・アンド・レスポンス
代表アーティスト
- Cindy Thompson
- Ohemaa Mercy
- Joe Mettle
代表曲・古典
Awurade Kasa — Cindy Thompson (1996)
Weakyekyere Adom — Cindy Thompson (2000)
代表曲・現在
Aseda — Ohemaa Mercy (2015)
Bo Noo Ni — Joe Mettle (2017)
Onwanwani — Joe Mettle (2019)
日本との関係
初めて聴くなら
最初は Cindy Thompson『Awurade Kasa』(1996)、ジャンルの点火点そのものだ。続いて Joe Mettle『Bo Noo Ni』(2017)、コンテンポラリー・ゴスペルとの融合形態。Ohemaa Mercy『Aseda』(2015)はライブ・アルバムなので教会の熱量が直接伝わる。日曜午前、コーヒーを淹れながらスピーカーで鳴らすのが本領。
豆知識
『Awurade』はトゥイ語で「主」を意味し、ゴスペル・ハイライフのタイトルには『Awurade』『Onyame』(神)『Nyame』(神)『Jesus』が頻出する。Joe Mettle は本業の宗教活動と並行して2014年に Church of Pentecost の音楽ミニストリーの正式リーダーに任命されており、彼のアルバムは事実上その教団の公式音楽としても機能する。ガーナの音楽産業では、日曜午前のラジオ枠(Peace FM、Adom FM)のスポンサー料が世俗ポップより高値で取引されることが知られており、ゴスペル・ハイライフの経済規模はガーナ音楽全体の中でも大きなセグメントを占める。
影響・派生で結ばれたジャンル
同じ時期・同じ地域で生まれた他のジャンル
- ヒップホップ・R&Bヒップライフ
