伝統・民族

ターラブ

Taarab

タンザニア(ザンジバル)/ケニア(モンバサ) / 東アフリカ · 1880年〜

ザンジバル発祥の、アラブ古典音楽とインド洋交易が融合したスワヒリ語の感情詩を歌う合奏歌曲。

どんな音か

複数の楽器が重なり、特に弦楽器(アラブの『ウード』とヴァイオリンが主流)とパーカッション、ときどき管楽器が融合する。テンポは中速から遅く、ロマンティックな雰囲気が支配的。ボーカルはスワヒリ語で、女性ボーカルが主流だが、男性も歌う。歌詞は恋愛、別離、社会批評など多様なテーマ。特徴的なのは、歌詞の複雑さと音楽の洗練度。スタジオ録音では、アラブ古典音楽とアフリカン・リズムのハイブリッド感が強調される。

生まれた背景

ターラブはザンジバルで 19 世紀に成立した音楽。アラブ古典音楽とインド洋交易が融合した結果で、スワヒリ語の詩を歌う。ザンジバルはアラブ、インド、アフリカの交易の中心地であり、その音楽的多様性を反映している。20 世紀初頭から 1960 年代まで、ザンジバルはターラブの中心地だったが、その後ダルエスサラーム、モンバサなどにも広がった。

聴きどころ

複数楽器のアンサンブルの精密さ。弦楽器(ウード、ヴァイオリン)の音色。ボーカルの感情的な表現力。スワヒリ語の詩の複雑さ。アラブ古典音楽とアフリカン・リズムの融合。

発展

20世紀後半にナディ・イクワン・サファ、ブラックスター・ミュージシャンズ・クラブが活動の場を広げ、結婚式や女性の祝祭サナナで広く用いられた。1990年代以降はモダン・ターラブ(キダンダ)が電化されシンセを導入し、若年層に普及した。

出来事

  • 1900: ザンジバルでスルタン宮廷の合奏団編成
  • 1928: シティ・ビンティ・サードがインドで録音
  • 1960s: ナディ・イクワン・サファ全盛期
  • 1990s: 電化モダン・ターラブ

派生・影響

アラブ・タラブ、インド洋ガナワ、ベンガ、ボンゴ・フラヴァ、コモロ・ンソヴゴと相互影響。

音楽的特徴

楽器ウード、カヌーン、ヴァイオリン、アコーディオン、ダラブッカ、声(合唱)

リズムベラディ系拍子、暗喩詩マシャイリ、女性歌手の主導

代表アーティスト

  • Siti binti Saadタンザニア · 1928年〜1950
  • Culture Musical Clubタンザニア · 1958年〜

代表曲

日本との関係

ターラブ日本で知られるようになったのは、アフリカ音楽への関心が高まった 1980 年代から 1990 年代。学術的には、東アフリカの都市音楽として参照されることがある。しかし、主流音楽市場での位置づけは確立されず、限定的な層の知識に留まっている。

初めて聴くなら

Siti binti Saad『Wewe Paka』(1928)。ターラブ史上の最初の国際的レコーディングで、ザンジバルの音楽的豊かさが集約されている。より現代的なアプローチなら、Culture Musical Club『Kalibu』(2000)。ターラブの伝統が 21 世紀にも継続していることが聞こえる。

豆知識

Siti binti Saad は 1920 年代のターラブ界のスター・シンガーで、彼女の曲は東アフリカ全域で愛された。『Wewe Paka』の『ウィーウィー』というリフレインは、ザンジバル音楽史の象徴的な記号となっている。ターラブはスワヒリ語の複雑な詩の伝統と結びついており、単なるメロディの音楽ではなく、テキストの文学性が等価に重視される。

影響・派生で結ばれたジャンル

ターラブを中心とした近傍図。中心と直接結ばれるエッジが強調表示されます。

ターラブ の系譜全体図(多段)を見る

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