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ブルース・カントリー

オーストラリアン・カントリー

Australian Country

タムワース(NSW) / オーストラリア / オセアニア · 1954年〜

別名: Bush Ballad / Oz Country

Slim Dustyの『A Pub With No Beer』(1957)から始まる、豪州のブッシュ・バラードとナッシュビル指向のカントリーの二本柱。

どんな音か

オーストラリアン・カントリーは、1950年代のSlim Dustyのブッシュ・バラード(奥地の生活を歌う叙事的カントリー)と、1990年代以降のナッシュビル志向カントリー(Keith Urban)、その中間にあるKasey Chambersのオルタナ・カントリーの三つの層で構成される。編成はアコギ+スライド・ギター+ペダルスチール+ベース+ドラム+ハーモニカ+フィドルが基本で、アメリカ合衆国カントリーより荒野感の強い歌詞と、豪州英語のスラング(mate、cobber、drover)を残す点が特徴だ。テンポは60-120BPM、コード進行はI-IV-V中心のブルース寄りで、Slim Dustyはトーキング・ブルースに近い語り歌唱、Kasey Chambersはナッシュビル寄りのしゃがれたベルト唱法を持つ。

生まれた背景

Slim Dusty(1927-2003)がNSW州北部ケンプシー出身の少年時代から書き溜めていた『A Pub With No Beer』を1957年に発表、これが豪州音楽史上初の国際的ゴールド・ディスクとなった。曲は奥地のパブでビールが切れた日常を歌ったコミック・バラードで、米ナッシュビルとは全く別の「オーストラリアの田舎の歌」を打ち出した。彼は生涯で100枚以上のアルバムを発表、2000年シドニー五輪閉会式で『Waltzing Matilda』を歌うなど、オーストラリアカントリーの父としての位置を確立した。1990年代後半のKasey Chambersがオルタナ・カントリーとして海外にも届き、同時期のKeith Urbanは1992年ナッシュビル移住後、アメリカ合衆国カントリー主流での地位を確立した。

聴きどころ

Slim Dusty『A Pub With No Beer』のギターとハーモニカのシンプルな伴奏の上で、Slim Dustyの語り歌唱が「歌う」と「話す」の境界を行き来しているのを聴いてほしい。アメリカ合衆国カントリー・ボーカルより地声寄りで、装飾を最小限にする様式がオーストラリアのブッシュ・バラードの特徴だ。Kasey Chambers『Not Pretty Enough』のしゃがれた高音は、Emmylou Harris系のナッシュビル・ソプラノとは違う、荒野で叫んで擦り切れたような質感を持つ。Keith Urban『Blue Ain't Your Color』はギター・ソロの構築力が全米カントリーの一線を超えている。

発展

1990年代後半、Nick ChambersとBill Chambersが率いる家族バンドDead Ringer Bandから独立したKasey Chambers(1976生)が1999年『The Captain』、2001年『Barricades & Brickwalls』(収録曲『Not Pretty Enough』)で全豪1位を獲得、オルタナ・カントリーとして海外にも届いた。同時期にニュージーランド出身のKeith Urban(1967生、豪州育ち)は1992年ナッシュビル移住後、2004年『Days Go By』で全米カントリー・チャート1位、2020年代までに4度のグラミーを獲得している。John Williamson(1945生)は保守派ブッシュ・バラードの継承者、Troy Cassar-Daleyは先住民系の代表格。

出来事

  • 1957: Slim Dusty『A Pub With No Beer』ゴールド
  • 1973: タムワース・フェスティバル創始
  • 2001: Kasey Chambers『Barricades & Brickwalls』全豪1位
  • 2004: Keith Urban『Days Go By』全米カントリー1位
  • 2003: Slim Dusty死去、国葬級の追悼

派生・影響

米カントリー、ブルーグラス、フォーク・リバイバルとの直接の親子関係。オルタナ・カントリー系(米Wilco、Uncle Tupelo)とは兄弟。

音楽的特徴

楽器アコースティック・ギター、ペダルスチール、スライド・ギター、フィドル、ハーモニカ、ダブル・ベース、ドラム、ボーカル

リズム60-100BPMのブッシュ・バラード型、100-140BPMのナッシュビル寄り、時にドローバー(牛追い)のワルツ3拍子

代表アーティスト

  • Slim Dustyオーストラリア · 1946年〜2003
  • John Williamsonオーストラリア · 1970年〜
  • Keith Urbanオーストラリア · 1990年〜
  • Kasey Chambersオーストラリア · 1998年〜

代表曲・古典

代表曲・現在

日本との関係

日本オーストラリアカントリー認知は低いが、Keith Urbanは妻ニコール・キッドマンとのタブロイド報道経由で名前は広く知られている。Slim Dustyの『Waltzing Matilda』は日本の教科書でも紹介されることがあり、豪州民謡としての認知はある。日本カントリー・ミュージック・シーンはナッシュビル志向が強く、オーストラリアカントリーとの接点は薄いが、リード・ギターの寺内タケシがSlim Dustyへの敬意を1980年代のインタビューで表明していた記録がある。

初めて聴くなら

入り口はSlim Dusty『A Pub With No Beer』(1957)、これがオーストラリアカントリーのすべての起点だ。次にKasey Chambers『Not Pretty Enough』(2001)、オルタナ・カントリーの完成形。Keith Urban『Days Go By』(2004)はアメリカ合衆国カントリー主流を土台にしたオーストラリアアーティストの現在地。夕方、少しビールが飲みたい気分のときが向いている。

豆知識

Slim Dustyの『A Pub With No Beer』はイギリスのシンガー・ソングライターDan O'Connorの1943年作『A Pub Without Beer』を下敷きにしたカバー曲だったが、Slim Dustyが完全にオーストラリアの情景に書き換えた。1957年のリリース時にオーストラリアで30万枚、イギリスで7位を記録、これが豪州音楽史上初の国際ヒットとなった。Kasey Chambersは南豪州のヌラボー平原でカンガルー狩り一家の娘として育ち、10代までの生活の大半をキャンピングカーで過ごした。この生活経験が彼女の歌詞の土台になっている。

影響・派生で結ばれたジャンル

オーストラリアン・カントリーを中心とした近傍図。中心と直接結ばれるエッジが強調表示されます。

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オーストラリア · 1954年前後 (±25年)