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ロック・メタル

スペイン・インディー

Spanish Indie

マドリード / サラゴサ / ビーゴ / スペイン / 南欧 · 2005年〜

別名: Indie español / Indie madrileño

2000年代後半からのマドリード・サラゴサ発、Vetusta Morla と Amaral を両輪にした自主レーベル系のギター・ポップ/ロック。

どんな音か

スペイン・インディーは、2000年代後半から2010年代にかけて、マドリードのライブ・ハウス(Sala El Sol、Sala Caracol、Nasti)と自主レーベル(Pequeño Salto Mortal、Everlasting、Sonido Muchacho)を土台に成立したギター・ポップ/ロックの総体だ。中心にあるのは Vetusta Morla、Iván Ferreiro(Los Piratas 解散後のソロ)、フォーク寄りの Amaral、そして2015年以降の Zahara、Carolina Durante、Amaia Romero(OT 2018 優勝)といった新世代だ。歌詞はスペイン語で、政治(2011年 15-M 運動、後の Podemos 誕生)・世代論・恋愛の3つが等分に扱われる。編成はギター+ベース+ドラムに加え、ピアノやシンセ、時にストリングスを重ねる中規模編成が典型で、Vetusta Morla のような6人組もいれば、Zahara のようにシンガーソングライター+バンドの構造もある。BPM 60-140、内省的なミドル・テンポが最も特徴的だ。

生まれた背景

始点は2000年代初頭のマドリード大学町の集団で、Vetusta Morla(1998結成、Tres Cantos)が中心にいた。彼らは10年の下積みを経てメジャー・レーベルの契約を拒否し、2008年のデビュー盤『Un Día en el Mundo』を自主レーベル Pequeño Salto Mortal からリリース、口コミとネット拡散だけで25万枚超を売った。この一枚が「メジャー通らない全国区」の可能性をスペイン音楽業界に見せつけ、後続シーンの土台を作った。同時期、Los Piratas(ビーゴ、1990-2004)を解散したイバン・フェレイロが2005年ソロ盤『Canciones para el Tiempo y la Distancia』を出し、Los Piratas 時代の詩性をより室内的なアレンジで結晶化した。もう一つの太い柱がサラゴサの Amaral(1997結成、Eva Amaral+Juan Aguirre) で、彼らは2002年『Estrella de Mar』所収『Sin Ti No Soy Nada』が国民的ヒットとなった。

聴きどころ

Vetusta Morla『Copenhague』(2008) の Pucho(ボーカル)は艶やかな高音ではなく、少しくぐもった中音で言葉を丁寧に運ぶ声で、これがスペイン・インディー全体の「声の型」を決めた。曲の後半、ピアノとバンド全体がクレッシェンドしていく展開に注目すると、彼らの構造設計の緻密さが分かる。Iván Ferreiro『Turnedo』(2005)はアコースティック・ギターとピアノの静かなイントロからバンドが徐々に加わる典型的な「静→動」構造で、Los Piratas 時代の詩性が室内サイズに畳まれている。Zahara『Merichane』(2021)は自身の中学時代の実話(男子から性的スラングで呼ばれた記憶)を歌詞にしたもので、電子音とストリングスの層の間から冷たい怒りが浮かぶ。Carolina Durante『Cayetano』(2018)は3分未満のパワー・ポップで、スペインの上流階級を戯画化した歌詞と、疾走するパンク・ギターの落差が Z 世代の階級意識をそのまま音にした。

発展

サラゴサの Amaral(1997結成、Eva Amaral+Juan Aguirre) は2002年『Estrella de Mar』所収『Sin Ti No Soy Nada』が国民的ヒットとなり、フォーク寄りのシンガーソングライター路線を成立させた。ハエン出身の Zahara(1983-)は2015年『Santa』で自主流通の内省的インディー・ポップの旗手となり、2021年の『Puta』では映画『Todo sobre mi Madre』のように「悪女化させられた女」の系譜を1990年代スペインの実話をベースに再構築した。マドリードの4人組 Carolina Durante(2017結成、Diego Ibáñez フロント) は2018年シングル『Cayetano』でZ世代の階級意識を歌にし、2018年 OT(Operación Triunfo) 優勝者の Amaia Romero(1999-、パンプローナ) はデビュー盤『Pero No Pasa Nada』(2019)でメジャー女子ソロの新標準を作った。

出来事

  • 2002: Amaral『Estrella de Mar』
  • 2005: Iván Ferreiro ソロ・デビュー
  • 2008: Vetusta Morla『Un Día en el Mundo』自主リリース
  • 2015: Zahara『Santa』
  • 2018: Carolina Durante『Cayetano』、Amaia Romero OT 優勝
  • 2021: Zahara『Puta』

派生・影響

後のロサリア世代スペイン・ポップの下地、そしてラテンアメリカ側のインディー・ロック(Los Bunkers、Zoé)との相互交渉。

音楽的特徴

楽器エレキギター、アコースティック・ギター、ベース、ドラム、キーボード、ストリングス、時にマンドリンとブラス

リズムスロー〜ミドルの4/4、バラードの3/4、Vetusta Morla の疾走型4/4、fingerstyle ギター中心のアレンジ

代表アーティスト

  • Iván Ferreiroスペイン · 1990年〜
  • Amaralスペイン · 1997年〜
  • Vetusta Morlaスペイン · 1998年〜
  • Zaharaスペイン · 2009年〜
  • Carolina Duranteスペイン · 2017年〜

代表曲・古典

代表曲・現在

日本との関係

スペイン・インディー日本での認知は限定的だが、Vetusta Morla は2018年に東京・大阪で初来日公演を敢行、在日スペイン人コミュニティとスペイン語学習者を中心に小規模ながら熱狂を集めた。Amaral は日本でのプロモーションを積極的にはしていないが、Bunbury や Enrique Iglesias 経由でスペイン語圏音楽に興味を持った層に静かに届いている。Amaia Romero は2019年 NHK『世界へ発信!SNS英語術』のスペイン語圏特集で紹介されたことがあり、Z世代のスペイン語学習者に人気がある。Berklee Valencia で学んだ日本人ミュージシャン(Awich らの周辺)経由で、スペイン・インディーの制作技法(自主流通、SNS 拡散、EP 中心のリリース戦略) が日本のインディー・シーンに間接的に影響を与えつつある。

初めて聴くなら

最初は Vetusta Morla『Un Día en el Mundo』(2008)、これがスペイン・インディーの実質的な出発点だ。特に『Copenhague』『La Cuadratura del Círculo』の2曲が入り口として最も分かりやすい。次に Iván Ferreiro『Turnedo』(2005)、内省派の代表。Amaral『Sin Ti No Soy Nada』(2002)、Zahara『Merichane』(2021)、Carolina Durante『Cayetano』(2018)と辿ると、スペイン・インディーの15年史が2時間で通貫できる。深夜、部屋を暗くしてヘッドホンで聴くのが最も向いている。歌詞の意味が分からなくても、彼らのアレンジの慎重さが体に届く。

豆知識

Vetusta Morla のバンド名はミヒャエル・エンデ『はてしない物語』(1979) に登場する亀「モーラ(Morla)」に「古い」を意味する形容詞をつけたもので、彼らが結成時に決めた「時間軸の広い音楽をやる」という宣言を含んでいる。彼らの2008年『Un Día en el Mundo』はメジャー通さない全国区としてスペイン音楽業界の教科書になり、以降 Love of Lesbian、Izal、Sidonie など多くのバンドが同じ道を選んだ。Amaral のエバ・アマラルは元々グラフィック・デザイナー志望で、バンドのアルバム・ジャケットは彼女自身がデザインしている。Zahara『Puta』(2021) は1990年代スペイン女性の視線を主題にした作品で、リリース時にフェミニスト系メディアから絶賛される一方、伝統派カトリック系メディアからの批判も浴びた。

影響・派生で結ばれたジャンル

スペイン・インディーを中心とした近傍図。中心と直接結ばれるエッジが強調表示されます。

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同じ時期・同じ地域で生まれた他のジャンル

スペイン · 2005年前後 (±25年)