宗教・霊歌

サンテリア音楽

Santería / Lucumí Music

ハバナ・マタンサス / キューバ / カリブ海 · 1820年〜

別名: Lucumí

キューバで成立したヨルバ系アフロ・キューバン宗教ルクミの儀礼音楽。

どんな音か

キューバのルクミ宗教(西アフリカ・ヨルバ系信仰とカトリックの混融)の儀礼で歌われる打楽器主導の音楽。ドラムズ(バター、イェンディ、クアンディ)が、各儀礼段階に応じた固定パターンを奏で、その上に歌い手の讃詞(オリキ)が乗る。テンポは儀礼の進行に応じて変化し、時に激しく、時に静寂に近い。Merceditas Valdésの歌唱は、ヨルバ語とスペイン語が混在し、発音の鋭さが宗教的権威を表現する。楽器の音色は、素朴で、金属的な響きを避け、皮と木の自然な音が前景。

生まれた背景

16世紀から17世紀にかけてのキューバ奴隷制の中で、ヨルバ民族(現在のナイジェリア・ベニン地域)から連行された人々が、彼らの信仰と儀礼を秘密裏に保存した。公式にはカトリック聖人に名目を変えながら、実際にはアフリカの神々(オリシャ)を祭祀し続けた。20世紀を通じてキューバで公認化され、1960年代の革命後も宗教の自由は保障された。Santería音楽は、アメリカ合衆国・南フロリダへの移民とともに、1980年代以降、グローバル化した。

聴きどころ

ドラムパターンの反復リズムが、精神状態を導く(トランス状態への誘導)ために、意図的に設計されている。Merceditas Valdésの声は、讃詞(オリキ)を『歌う』というより『祈る』に近い。声の張り方、言葉の発音の強弱が、神への敬意と親密さの両方を表現する。儀礼のドキュメンタリー映像とともに聴くと、音と動き(踊りと祭祀行為)の関係が明らかになる。

発展

19世紀末から20世紀にかけて聖別された(『誕生した』)バター太鼓制度が確立し、特定の神々に捧げられた儀礼レパートリーが整理された。1959年キューバ革命後は一時抑圧されたが、1990年代以降の宗教回復で再活性化、ファンキーや現代ジャズ、ティンバ等の世俗音楽にも影響している。

出来事

  • 1843-44: 『ラ・エスカレラ陰謀』、ルクミ宗教共同体組織化
  • 1959: キューバ革命、宗教制限
  • 1995: ハバナ・サンテリア国際儀礼会議
  • 2003: ユネスコ・キューバ声楽遺産にルクミを含める検討開始

派生・影響

アフロ・キューバン・ジャズ、ルンバ・グアグアンコ(部分的)、現代ティンバ、コロンビア・チャングイ等カリブ宗教音楽全般。

音楽的特徴

楽器バター三太鼓、シェケレ、アグベ、声、合唱

リズムトケ・デ・サント(神別リズム)、コール&レスポンス、ルクミ語(ヨルバ系)

代表アーティスト

  • Merceditas Valdésキューバ · 1944年〜1996

代表曲

日本との関係

キューバ文化への学術的興味が高まった1980年代以降、Santería音楽もマイナーながら知られるようになったが、宗教としての理解はほぼ進まず、『呪い・秘術』的なイメージで消費される傾向がある。

初めて聴くなら

Merceditas Valdésの『Toque para Yemayá』(海の女神イェマヤへの讃歌)。短く、ドラム・パターンの基本が明確。その後『Toque para Shangó』(雷の神シャンゴへの讃歌)で、異なる神への讃歌の音響的差異を学ぶ。夜間、リラックス状態で聴くことを推奨。

豆知識

Merceditas Valdésは1913年生まれで、キューバ音楽界の女性第一人者。彼女の『Santería歌唱』はスタジオ録音ではなく、生きた儀礼から採譜・記録されたもの。Santería の中心人物で、多くのキューバ人ミュージシャン(例えば後のマリアッチ・ラテンのエルネスト・ディスコート)に影響を与えた。

影響・派生で結ばれたジャンル

ジャンル関係図1100年代1820年代サンテリア音楽サンテリア音楽イファ音楽イファ音楽カンドンブレ音楽カンドンブレ音楽凡例派生影響同系統
凡例
派生影響同系統
サンテリア音楽を中心とした近傍図。中心と直接結ばれるエッジが強調表示されます。

サンテリア音楽 の系譜全体図(多段)を見る

ジャンル一覧へ戻る