宗教・霊歌

カンドンブレ音楽

Candomblé Music

サルヴァドール(バイーア) / ブラジル / 南米 · 1820年〜

ブラジル・バイーア発のアフロ・ブラジリアン宗教カンドンブレの儀礼音楽。

どんな音か

複数の太鼓(リームドラムズ)が異なるリズムパターンを同時に叩き、その上に女性のコーラスが周期的に加わる。基本リズムは2拍子もしくは3拍子だが、ポリリズムによって複雑さが生まれ、のめり込むような反復性がある。歌はヨルバ語やポルトガル語で、神々(オリシャ)への呼びかけや祈りが中心。踊り手の足音、タンバリン、貝殻のガラガラが重なり、儀式全体がリズム・セッションとして機能する。スタジオ録音はなく、ほぼすべてが儀式現場の記録。

生まれた背景

ブラジル・バイーア州サルヴァドルで19世紀に成立したアフロ・ブラジリアン宗教。ポルトガル領奴隷制度下で西アフリカから連れてこられた人々が、ヨルバ族の神話とカトリック聖人信仰を融合させたもの。奴隷解放後も秘密の儀式として継続され、20世紀中盤から公開性を増した。音楽は宗教の中核で、特定の神を招くためのリズムが定型化している。

聴きどころ

複数のドラムのポリリズムと、その上に乗る女性ボーカルの調和を聴く。儀式的な反復性が、時間の感覚をどう変化させるか。掛け声、手拍子、貝殻のガラガラのような打楽器が如何に精密に噛み合っているか。神呼びのパターンと、踊り手の反応のタイミング。

発展

19世紀末バイーアで主要テレイロが組織化され、20世紀の文学者ジョルジ・アマードらの記述で国際的に知られた。1970年代以降の黒人意識運動でブラジル国民文化の重要構成要素として再評価され、近年は無形文化遺産候補としても注目されている。

出来事

  • 1830頃: バイーアでカサ・ブランカ・テレイロ設立(伝承上最古)
  • 1976: アフォシェ集団『フィーリョス・ジ・ガンディー』活発化
  • 2002: アフロ・ブラジル文化財団設立

派生・影響

アフロ・ブラジリアン・ジャズ、サンバ・ヘギ(レゲエ・サンバ)、ジルベルト・ジル等MPBの宗教モチーフ、現代カポエイラの一部レパートリー、Iléu Aiyé等カーニバル・ブロッコ音楽。

音楽的特徴

楽器アタバキ三太鼓、シェケレ、アゴゴ鉄、声、合唱

リズムナサオン別リズム、ポリリズム、ヨルバ・フォン・キンブンドゥ語

代表アーティスト

  • Ilê Aiyêブラジル · 1974年〜
  • Olodumブラジル · 1979年〜

代表曲

日本との関係

カンドンブレ・ミュージックの録音が日本に輸入されることはまれで、研究者や民族音楽愛好家以外の認知度は低い。ブラジル音楽の知識がある程度ある層でも、サンバやボサ・ノーバに比べ、宗教音楽としてのカンドンブレは距離を持つことが多い。ただし、世界宗教史やアフリカン・ディアスポラ研究を扱う大学の講義で言及されることはある。

初めて聴くなら

Ilê Aiyê『Que Bloco e Esse?』(1975) は、カンドンブレの儀式性を保ちながらも、レコーディング向けに整序した音。夜間に静かな環境で聴くことで、太鼓のリズムが身体に入ってくる感覚を得られる。Olodum『Berimbau』(1990) は、カンドンブレをベースにしながらも、より現代的なプロデュースが施されており、複雑さが明確になっている。

豆知識

各オリシャ(神)には専用のリズムが定められており、正しいドラムパターンで呼ばないと神は降りてこないとされる。したがって、ドラマーは音楽的技巧だけでなく、宗教的知識を必要とする。Olodum はバイーアの歴史的太鼓グループで、黒人文化の政治的象徴にもなった。

影響・派生で結ばれたジャンル

ジャンル関係図1100年代1820年代1910年代カンドンブレ音楽カンドンブレ音楽イファ音楽イファ音楽サンテリア音楽サンテリア音楽サンバサンバ凡例派生影響同系統
凡例
派生影響同系統
カンドンブレ音楽を中心とした近傍図。中心と直接結ばれるエッジが強調表示されます。

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