伝統・民族

クワイト

Kwaito

南アフリカ共和国 / 南アフリカ · 1994年〜

1990年代の南アフリカで成立した、Houseを遅くしてラップを乗せた音楽。

どんな音か

クワイトはハウス・ミュージックのBPMをおよそ100〜115まで落とし、その上にズールーやソト語などのスラングを混ぜた南アフリカ語のラップ、シャウト、チャントを乗せる。リズムの基本はキックとスネアだが、ハイハットが均等に刻まず、ところどころで抜けたり遅れたりしてグルーヴを作る。ベースラインはタフで、サブウーファーを意識したような重低音が下から全体を押し上げる。ヴォーカルは歌い上げるより語りかけるスタイルが多く、街の話し言葉がそのまま音楽に入ってくる。ソウェトのタウンシップの密集した部屋でカセットを爆音で流すことを前提にしたような、ダイナミクスの圧縮された音像が特徴。

生まれた背景

1994年のアパルトヘイト終結後、ヨハネスブルクのタウンシップで生まれた世代が自分たちの音楽を作り始めた。解放の高揚感と、その後に続く経済的格差・失業・HIV問題という現実の両方が歌詞に流れ込んでいる。アメリカ合衆国ヒップホップやシカゴ・ハウスの影響を受けながら、歌詞を英語にしないことで意識的に「自分たちの音楽」として定義した。Arthur Mafokate「Kaffir」(1995)は差別語を題名に据えることで白人支配への対抗を示した問題作でもあり、単なるダンス音楽にとどまらない政治性を持っていた。

聴きどころ

Boom Shaka「It's About Time」(1993)ではリズムの「遅さ」をまず体感してほしい。4つ打ちのキックが期待より少し遅れて来る感じが、クワイトのダンスフロアでの身体的グルーヴを作る。Mafikizolo「Ndihamba Nawe」(2003)ではコーラスラインの滑らかさとラップパートの口語性の落差が聴きどころ。ベースラインが常に前面に出ていることも意識すると、タウンシップのスピーカー文化が頭の中に見えてくる。

代表アーティスト

  • Boom Shaka南アフリカ共和国 · 1993年〜2000
  • Arthur Mafokate南アフリカ共和国 · 1995年〜
  • Mafikizolo南アフリカ共和国 · 1996年〜
  • Mgarimbe南アフリカ共和国 · 2005年〜

代表曲

日本との関係

クワイト日本で認知されることはほとんどない。南アフリカ音楽自体の知名度が低く、アフロビーツアマピアノが注目される2020年代以降でも、クワイトは「前の世代の音楽」としてあまり取り上げられない。アフリカ音楽研究者や特定のワールドミュージック愛好者の間で知られる程度。

初めて聴くなら

タウンシップのエネルギーを感じたいならBoom Shaka「It's About Time」。メロディーも聴きたいならMafikizolo「Ndihamba Nawe」。どちらも夜のドライブや部屋でスピーカーを使って聴くと、ベースラインの存在感が全く変わる。

豆知識

クワイト」という名称の語源には諸説あり、アフリカーンス語で「お前はもう十分だ」を意味するスラング「kwaai」から来たという説と、タウンシップのギャング用語が転じたという説がある。クワイトが流行した1990年代後半、南アフリカのHIV感染率は世界最高水準に達しており、多くのアーティストがHIV/AIDSを題材にした曲を出した。その社会記録としての側面も、この音楽を語るうえで外せない。

影響・派生で結ばれたジャンル

ジャンル関係図1960年代1980年代1990年代2010年代クワイトクワイトムバカンガムバカンガハウスハウスゴムゴムアマピアノアマピアノ凡例派生影響同系統
凡例
派生影響同系統
クワイトを中心とした近傍図。中心と直接結ばれるエッジが強調表示されます。

クワイト の系譜全体図(多段)を見る

ジャンル一覧へ戻る