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ラテン・カリブ

キゾンバ

Kizomba

ルアンダ / アンゴラ / 南アフリカ · 1985年〜

別名: Kizomba angolana / Slow semba

1980年代アンゴラで、センバを減速しカリブのゾウクを混ぜて生まれたスロー・ダンス歌謡。

どんな音か

キゾンバ(キンブンドゥ語で「祭り」「集まり」の意)は、1980年代半ばのアンゴラ・ルアンダで、既存のセンバ(2/4アップテンポ・ダンス)を60-90BPMの4/4に減速し、そこにカリブのゾウク(Kassavが1979年以降流行らせた電子ダンス)の甘いシンセと軽い808を織り込んで生まれたロマンチックなダンス歌謡だ。歌詞はキンブンドゥ語とポルトガル語のミックスで、愛と別れが中心テーマ。ダンスは男女ペアの密着型で、上半身を静止させ、腰と膝で拍を刻む独特のグラウンド感がある。編成はギター、ベース、シンセ・パッド、リズムマシンの4/4だ。

生まれた背景

1980年代半ばのルアンダで、Eduardo Paim(1961-、ミュージシャン家系出身)がセンバとカリブのゾウクを融合させたスローな新様式を提示、1988年のヒット『Sensacional』を含む諸作品でジャンル名を確立した。同時期に亡命先パリからBongaがセンバファドを混ぜたロマンチック路線を並走させ、キゾンバ Cabo(カーボ・ヴェルデ系の初期グループ)がリスボンで発展形を作った。1975-2002年のアンゴラ内戦下で、キゾンバは政治的緊張から離れた「ダンスホールの私的な喜び」の空間を提供し続けた。

聴きどころ

まずテンポの遅さに耳を慣らしてほしい。センバの2/4アップテンポと較べると、キゾンバは4/4に減速され、拍が身体の膝の屈伸に合わせて設計されている。次にシンセ・パッドの厚み、そしてリズムマシンの808キックの軽い重心。これがカリブのゾウクから輸入された要素だ。Anselmo Ralph『Universo Paralelo』(2010)は、この様式の完成形として、彼の甘い声質とR&B寄りのメロディー、そしてキゾンバのグラウンド感が三位一体になった好例だ。ダンス動画と一緒に見ると、拍と体の関係が視覚的にも入る。

発展

1990年代後半以降、Anselmo Ralph(1981-)、Nelson Freitas(1975-、カーボ・ヴェルデ系オランダ)、Kaysha(1974-、コンゴ・フランス系)、C4 Pedro(1978-)らがキゾンバをアンゴラ音楽の最大の輸出品にした。決定打は2010年のAnselmo Ralph『Universo Paralelo』で、これはアフロ・ルソフォン圏全域とヨーロッパのキゾンバ・ダンス・スクール文化に届いた。2010年代以降はDjodje、Nelson Kalungaらカーボ・ヴェルデ系がポルトガル語スロー・ジャム路線を拡張、リスボンのPríncipe Discosとも共鳴しつつAfro-Portuguese Popの中軸となった。

出来事

  • 1985頃: Eduardo Paimが新様式提示
  • 1988: Eduardo Paim『Sensacional』
  • 2010: Anselmo Ralph『Universo Paralelo』
  • 2013: C4 Pedro『Bo Tem Mel』
  • 2015頃: 世界的キゾンバ・ダンス・スクール定着

派生・影響

センバの直系子孫、クドゥロの兄弟。アフロ・ハウス、Afro-Portuguese pop、フランスのkizomba fusionへ直接影響。カリブのゾウク・ラブ、ハイチのkompaとは相互影響関係。

音楽的特徴

楽器エレクトリック・ギター、ベース、シンセ・パッド、リズムマシン、時にディコンザ、男女ボーカル、後年はオートチューン

リズム60-90BPMの4/4、センバ由来の3-2感覚を残しつつ全体を減速、シンコペーションを抑えたスロー・グルーヴ、ダンスの膝の屈伸に合わせた拍

代表アーティスト

  • Eduardo Paimアンゴラ · 1985年〜
  • Kayshaフランス / コンゴ民主共和国 · 1996年〜
  • Anselmo Ralphアンゴラ · 2000年〜
  • Nelson Freitasオランダ / カーボ・ヴェルデ · 2000年〜
  • C4 Pedroアンゴラ · 2003年〜
  • Djodjeポルトガル / カーボ・ヴェルデ · 2010年〜

代表曲

その後の代表曲

  • I'm SorryKaysha (2005)
  • Bo Tem MelC4 Pedro (2013)
  • Broken HeartNelson Freitas (2013)
  • Não Me TocaAnselmo Ralph (2013)
  • Só Nós DoisDjodje (2017)
  • Curtir a VidaAnselmo Ralph (2009)
  • Universo ParaleloAnselmo Ralph (2010)

日本との関係

日本ではキゾンバは意外に活発なダンス・シーンを持つ。2010年代前半以降、東京、大阪、名古屋にキゾンバ専門のダンス教室が複数開設され、毎週末のソーシャル・ダンス会には数十人〜100人規模の参加者が集まる。ダンサー経由でAnselmo RalphやNelson Freitasの楽曲が耳に届く回路が形成されており、サルサ/バチャータの隣接コミュニティとしてキゾンバは一定の位置を占めている。音楽単独の輸入盤流通は限定的だが、Spotify/Apple Musicで直接アクセスできる時代に入って認知はさらに広がっている。

初めて聴くなら

最初はEduardo Paimの『Sensacional』(1988)、キゾンバというジャンル名を確立した歴史的な一曲。次にAnselmo Ralph『Universo Paralelo』(2010)、現代キゾンバの完成形として世界的なヒットになった一枚のタイトル曲だ。C4 Pedro『Bo Tem Mel』(2013)はアフロ・ルソフォン圏で最も踊られた楽曲の一つで、キゾンバがアフロ・ポップと接続する瞬間が聴ける。Nelson Freitas『Broken Heart』(2013)はキゾンバとカーボ・ヴェルデ系kolá san jonの中間を狙った作品だ。

豆知識

キゾンバ」の語はキンブンドゥ語で「祭り、集まり」を意味し、元々はダンスの場そのものを指す一般名詞だった。それが1980年代後半以降、Eduardo Paimらの新様式を指す音楽ジャンル名として固有名詞化した。カリブのゾウク・ラブ(Kassav、Ophelia Marie)からの影響は明確だが、アンゴラ側のミュージシャンはしばしば「キゾンバは純粋にアンゴラのもの」と主張し、この起源論争は現在も続いている。近年はtarraxinha(キゾンバのより低速で重ベースの分岐)、ghetto zouk(ヨーロッパ側の分岐)といった派生形が生まれている。

影響・派生で結ばれたジャンル

ジャンル関係図1600年代1930年代1950年代1980年代1990年代キゾンバキゾンバセンバセンバコラデイラコラデイラコンパコンパクドゥロクドゥロ凡例派生影響同系統
凡例
派生影響同系統
キゾンバを中心とした近傍図。中心と直接結ばれるエッジが強調表示されます。

キゾンバ の系譜全体図(多段)を見る