ラテン・カリブ

コンパ

Compas / Kompa

ポルトープランス / ハイチ / カリブ海 · 1955年〜

別名: Konpa / Kadans

1955年ハイチでネモール・ジャン・バティストが創始した、メレンゲから派生した4/4のスローダンスを中心とするアフロ・カリブ・ポップ。

どんな音か

4/4拍子のゆったりとしたダンスビートが基本で、エレクトリックギター(特にリズムギターの一定の刻み)、キーボード、ベース、ドラムが均一なグルーヴを作る。ボーカルはやや鼻にかかった滑らかな声で、恋愛を歌うことが多い。テンポは80〜100BPM程度で、ゆっくりペアで踊るのに適した速度だ。1980〜90年代以降はシンセサイザーが増え、録音の音像が整理されていったが、基本のリズム構造は変わっていない。カリブ海の音楽としてはレゲエより穏やかで、サルサより遅い。

生まれた背景

ハイチはカリブ海フランス語圏の国で、かつてはフランス領サン=ドマングとしてカリブ最大の砂糖産地だった。1804年の独立後、ドミニカ共和国メレンゲがハイチにも伝わり、ネモール・ジャン・バティストが1955年に独自のリズム解釈で「コンパ・ディレクト」を作った。タブー・コンボは1970年代にニューヨークのハイチ移民コミュニティで名を上げ、コンパをカリブ以外にも広めた。

聴きどころ

リズムギターの刻みが4拍のどこに落ちているかを追う。コンパのギターは2拍と4拍(バックビート)よりも細かい位置に音符が来ることが多く、これがグルーヴの個性を作っている。次に、ベースラインがどのくらいシンプルかを確認する——コンパのベースは動きが少なく、ダンスの「床」として機能する。

発展

1960~70年代のタブー・コンボ、シャラッシュ・コンボがニューヨークから世界化し、1980年代以降のスカイライナーズ、T-ヴィジェリアらが現代化した。ハイチ・ディアスポラの結婚式・社交の中心音楽であり続ける。

出来事

  • 1955: ネモール・ジャン・バティスト創始
  • 1971: タブー・コンボ「New York City」
  • 1986: デュバリエ独裁崩壊
  • 2000: コンパ国際大会

派生・影響

メレンゲ、ズーク、コンパ・ラブ、ハイチ・ヒップホップに連なる。

音楽的特徴

楽器サクソフォーン、エレキギター、シンセ、ベース、ティンバレス、コンガ、声

リズム中速4/4、コンパ・ダイレクト、ベース駆動

代表アーティスト

  • Nemours Jean-Baptisteハイチ · 1955年〜1985
  • Tabou Comboハイチ · 1968年〜

代表曲

  • Compas DirectNemours Jean-Baptiste (1958)
  • New York CityTabou Combo (1975)
  • MabouyaTabou Combo (1976)
  • Musique CompasNemours Jean-Baptiste (1956)
  • 8eme SacrementTabou Combo (1980)

日本との関係

日本でハイチ音楽が知られる機会はほぼなく、コンパも例外ではない。カリブ音楽全般の中でもハイチは認知が薄い。フランス語圏のカリブ文化に関心を持つ人の一部に知られる程度。

初めて聴くなら

タブー・コンボの『New York City』(1975年)はコンパが移民文化の中でどう育ったかを示す曲で、リズムとボーカルのグルーヴが分かりやすい。ネモール・ジャン・バティストの『Compas Direct』(1958年)はジャンルの原型で、よりシンプルで生っぽい音がする。夜、音量を上げて踊りながら聴く。

豆知識

コンパはハイチからカリブ全域に広がり、フランス語圏西アフリカでも「コンパ」として親しまれている。ガボン、コンゴ、セネガルなどでハイチのコンパを演奏するバンドが今も存在する。ハイチ本国では政治的混乱や経済困難の中でも音楽産業は続いており、コンパは社会の連帯感を支える文化として機能している。

影響・派生で結ばれたジャンル

ジャンル関係図1850年代1950年代コンパコンパメレンゲメレンゲ凡例派生影響同系統
凡例
派生影響同系統
コンパを中心とした近傍図。中心と直接結ばれるエッジが強調表示されます。

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