古典

ソナタ(古典派)

Classical Sonata

中央ヨーロッパ · 1750〜1830年

独奏楽器ないし独奏+鍵盤による多楽章器楽曲。古典派の中心的ジャンル。

どんな音か

ソナタは一般に3〜4楽章からなる器楽曲で、多くの場合ピアノ独奏か、ピアノと別の楽器(ヴァイオリン、チェロなど)の二重奏として書かれる。第一楽章はソナタ形式(提示部・発展部・再現部)を採り、二つの対照的な主題が提示され、衝突し、最終的に解決する。第二楽章は緩やかで、第一楽章の緊張を解くような歌謡的な性格を持つ。終楽章は速く、しばしばロンド形式(繰り返す主題と挿入部)で明るく終わる。ベートーヴェンの後期ソナタでは伝統的な楽章構造が崩れ始め、即興的な要素や対位法(複数の声部が独立して進む書法)が強くなる。音量の幅はピアニッシモ(極めて弱く)からフォルティッシモ(極めて強く)まで広く、ピアノというポータブルな楽器一台で管弦楽的なダイナミクスを実現しようとする試みが各所に見られる。

生まれた背景

ソナタ(suonata、「音で奏される」の意)という語はバロック期から使われていたが、古典派固有の多楽章構造として定着したのは18世紀中頃以降、特にハイドンとモーツァルトの時代だ。18世紀末から19世紀初頭のピアノ製造の急速な発展が、この形式の発展と深く連動している。ベートーヴェンは32曲のピアノ・ソナタを書き、形式を何度も内側から崩しながら拡張した。特に後期ソナタ(第28〜32番)は「ソナタ形式」という枠を超えた実験的な作品で、現在も演奏家と研究者が格闘し続けている。シューベルトはこの形式に歌曲(リート)的な旋律の長さと抒情性を持ち込み、ロマン派への橋渡しをした。

聴きどころ

第一楽章の「提示部」で二つの主題がどう対比されているかを確認することから始めるとよい。ベートーヴェンの「月光ソナタ」(作品27-2)では第一楽章が通常の「速い」第一楽章ではなく、嬰ハ短調で三連符が途切れなく続く夜想曲的な書法になっており、ソナタ形式の慣習を意図的に外している。フランツ・リストの『ピアノ・ソナタ ロ短調』(1853年)は単一楽章ながら30分近い大作で、複数の動機が変形しながら貫通する独自の構造を持つ。演奏家によって解釈の差が大きく、同じ曲を複数の演奏で聴き比べることが理解を深める最速の方法。

発展

ハイドン52曲、モーツァルト18曲のピアノ・ソナタが規範を作り、ベートーヴェン32曲のピアノ・ソナタで形式は思想的劇場に拡大した。ロマン派ではシューベルト、シューマン、ブラームス、リスト「ロ短調ソナタ」が独自路線で発展。20世紀ではプロコフィエフ9曲、シェーンベルク、ベルクの新ウィーン楽派的解体まで続く。

出来事

  • 1773: ハイドン「ピアノ・ソナタ集」 Hob.XVI:21-26
  • 1801: ベートーヴェン「月光ソナタ」 作品27-2
  • 1822: ベートーヴェン「ピアノ・ソナタ第32番」 作品111
  • 1853: リスト「ピアノ・ソナタ ロ短調」

派生・影響

交響曲、室内楽、協奏曲の第1楽章は基本的にソナタ形式で書かれ、ジャンル全体の構造原理として機能した。

音楽的特徴

楽器ピアノ独奏、独奏楽器+ピアノ

リズムソナタ形式、3〜4楽章

代表アーティスト

  • ヨーゼフ・ハイドンオーストリア · 1755年〜1809
  • ヴォルフガング・アマデウス・モーツァルトオーストリア · 1762年〜1791
  • ルートヴィヒ・ヴァン・ベートーヴェンドイツ · 1792年〜1827
  • フランツ・シューベルトオーストリア · 1810年〜1828
  • フランツ・リストハンガリー · 1830年〜1886
  • ローベルト・シューマンドイツ · 1830年〜1856
  • ヨハネス・ブラームスドイツ · 1855年〜1897

代表曲

  • ピアノ・ソナタ ロ短調フランツ・リスト (1853)
  • ピアノ・ソナタ第11番 イ長調 K. 331ヴォルフガング・アマデウス・モーツァルト (1783)
  • ピアノ・ソナタ第14番 嬰ハ短調 作品27-2「月光」ルートヴィヒ・ヴァン・ベートーヴェン (1801)
  • ピアノ・ソナタ第32番 ハ短調 作品111ルートヴィヒ・ヴァン・ベートーヴェン (1822)

日本との関係

日本のクラシック音楽教育において、ピアノ・ソナタは中心的なレパートリーの一つだ。音楽大学の入試曲目にベートーヴェンのソナタが頻繁に指定され、「月光」や「熱情」は日本の音楽好きにとって最も馴染み深いクラシック曲の一群に入る。NHKのドラマや映画の劇伴にも頻繁に使われてきた。

初めて聴くなら

ベートーヴェンの『ピアノ・ソナタ第14番「月光」』(作品27-2、1801年)が最初の一曲として最も知られている。第一楽章は夜の静けさと深さを持ち、初めて聴く人でも音楽の質感を感じ取りやすい。次にモーツァルトの『第11番 K.331』(第三楽章「トルコ行進曲」が特に有名)を聴くと、ベートーヴェンとの様式の違いが際立つ。

豆知識

「月光ソナタ」というニックネームは、ベートーヴェン自身がつけたものではなく、作曲家の死後に詩人ルートヴィヒ・レルシュタープが「スイスのルツェルン湖に映る月光のよう」と評したことに由来する。ベートーヴェンがこの曲に与えた正式なタイトルは「ピアノ・ソナタ第14番 嬰ハ短調 作品27第2」で、「幻想ソナタ風に(quasi una fantasia)」という指示がある。

影響・派生で結ばれたジャンル

ジャンル関係図1620年代1750年代1760年代1820年代ソナタ(古典派)ソナタ(古典派)バロック組曲バロック組曲古典派協奏曲古典派協奏曲性格的小品性格的小品凡例派生影響同系統
凡例
派生影響同系統
ソナタ(古典派)を中心とした近傍図。中心と直接結ばれるエッジが強調表示されます。

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