古典

リート

Lied

オーストリア/ドイツ / 中央ヨーロッパ · 1810〜1950年

別名: ドイツ歌曲 / Art Song

ピアノ伴奏による独唱ドイツ歌曲。シューベルトに始まり、ロマン派音楽の中心的ジャンルとなる。

どんな音か

リートは、ドイツ語詩を独唱とピアノで歌う歌曲。歌手が物語や心情を語り、ピアノは単なる伴奏ではなく、馬の疾走、風、川、鐘、沈黙まで描く。シューベルトの「魔王」ではピアノの連打が馬の蹄になり、「冬の旅」では冷たい歩みが低い音型に刻まれる。声とピアノが近い距離で、詩の一語一語を照らす音楽である。

生まれた背景

19世紀初頭のオーストリアとドイツで、詩の朗読文化、家庭のピアノ、出版市場とともに発展した。シューベルトがゲーテなどの詩に膨大な歌曲を書き、シューマン、ブラームス、ヴォルフ、マーラーへ続いた。大劇場のオペラとは違い、部屋の中で言葉の陰影を聴く親密なジャンルとして育った。

聴きどころ

歌詞が分からなくても、ピアノの前奏を聴くと場面が見えることが多い。水の流れ、足取り、心臓の鼓動のような音型が先に出て、歌がそこへ入る。声は大きさより子音の鋭さ、母音の色、言葉の最後の処理が重要で、同じ曲でも歌手によって人物像が変わる。

発展

シューベルト600曲超のリート(「冬の旅」「美しき水車屋の娘」「白鳥の歌」)が古典型を示し、シューマン「詩人の恋」「リーダークライス」、ブラームス、ヴォルフ(後期ロマン派の頂点)、マーラー「子供の不思議な角笛」「亡き子をしのぶ歌」、R.シュトラウス「最後の四つの歌」が連続的に発展させた。

出来事

  • 1814: シューベルト「糸を紡ぐグレートヒェン」 D.118
  • 1827: シューベルト「冬の旅」 D.911
  • 1840: シューマン「詩人の恋」 作品48
  • 1948: R.シュトラウス「最後の四つの歌」

派生・影響

フランス・メロディ(フォーレ、デュパルク、ドビュッシー)、英国の歌曲(ヴォーン・ウィリアムズ、ブリテン)、20世紀の連作歌曲(シェーンベルク「月に憑かれたピエロ」)まで、世界中の独唱声楽伝統に決定的影響を与えた。

音楽的特徴

楽器独唱、ピアノ

リズム通作形式または有節形式、詩との一体化

代表アーティスト

  • フランツ・シューベルトオーストリア · 1810年〜1828
  • ローベルト・シューマンドイツ · 1830年〜1856
  • ヨハネス・ブラームスドイツ · 1855年〜1897
  • グスタフ・マーラーオーストリア · 1880年〜1911
  • フーゴー・ヴォルフオーストリア · 1880年〜1903
  • リヒャルト・シュトラウスドイツ · 1880年〜1949

代表曲

日本との関係

日本では声楽教育の中心的レパートリーで、音楽大学や歌曲演奏会でよく歌われる。ドイツ語の発音と詩の理解が必要なため敷居はあるが、「魔王」や「冬の旅」はクラシック入門でも知られている。日本人歌手によるリート録音や演奏会も多い。

初めて聴くなら

物語の分かりやすさなら「魔王 D. 328 — フランツ・シューベルト (1815)」。歌曲集として深く入るなら「冬の旅 D. 911 — フランツ・シューベルト (1827)」。恋愛詩の繊細さを聴くなら「詩人の恋 作品48 — ローベルト・シューマン (1840)」がよい。

豆知識

Liedはドイツ語で歌という意味だが、クラシックでは特にドイツ語芸術歌曲を指すことが多い。歌手だけでなくピアニストの解釈が作品の印象を大きく左右するため、二人の室内楽として聴くと面白い。シューベルトの歌曲では、ピアノの前奏だけで登場人物や風景が示されることがあり、伴奏という言葉では足りない役割を持つ。

影響・派生で結ばれたジャンル

ジャンル関係図1810年代1820年代1900年代リートリート性格的小品性格的小品表現主義音楽表現主義音楽凡例派生影響同系統
凡例
派生影響同系統
リートを中心とした近傍図。中心と直接結ばれるエッジが強調表示されます。

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