トルコ
Turkey
中東・北アフリカ
ヒットチャートに外国曲が入り込む隙はほとんどない。Spotify上位はほぼ全曲が国内アーティストで占められ、海外勢の出番は驚くほど少ない。理由ははっきりしている。市場を3つの自国ジャンルが分け合っているからだ。ラップ系のTurkish trap(EzhelやBen Feroが広めた)、磨き上げられた若手のTurkish pop(Aleyna Tilkiら)、そしてアラブ風の節回しと嘆きの情念をまとった労働者階級の大衆歌謡トルコ・ポップ(アラベスク)――支持する世代も階層も異なる、この3つだ。その内向きさを象徴するのが、2025年最大級のヒット「Hileli」である。今年デビューしたばかりの6人組ガールグループmanifestと、70代の国民的歌手Ajda Pekkanが世代を超えて組んだ一曲だ。海外曲ではなく、こうした自国内のコラボがチャートの頂点に立つ。
自国アーティストの人気曲
海外アーティストの人気曲
世代・地域・経済による違い
聴く音楽は世代と階層できれいに分かれる。若い男はトラップ(Ezhel、Cakal)、若い女はポップとガールグループ(Aleyna Tilki、manifest)、中高年と地方の労働者層はトルコ・ポップ(Ferdi Tayfur、Müslüm Gürses)――この三層構造だ。中高年層は加えて、Ajda PekkanやSezen Aksuに代表される往年のトルコ・ポップにも親しんでいる。注目すべきはトルコ・ポップの位置の変化である。長らく「下層階級の音楽」という負のレッテルにさらされてきたが、2020年代に入って評価が一変した。配信を通じて若い世代が再発見し、トラップやポップのアーティストがその名曲をサンプリングや再解釈で取り込みはじめたのだ。見下されてきた音楽が表舞台の中央に座り直した――それはトルコのポップ史そのものが書き換わりつつある兆しだ。

