ジングシュピール
ドイツ語による音楽劇形式。歌唱と話し言葉の対話を交互に挟む点が特徴。
どんな音か
生まれた背景
18世紀のドイツ、オーストリアで、フランスのオペラ・コミックや英語のバラッド・オペラの影響も受けながら発展した。ドイツ語による国民的な音楽劇を求める動きと、劇場娯楽の需要が重なった。後にはウェーバーの「魔弾の射手」など、ドイツ・ロマン派オペラへの橋渡しにもなった。
聴きどころ
歌と台詞の切り替わりを意識すると分かりやすい。台詞で人物関係や笑いが進み、アリアで感情や願いが大きく広がる。「魔笛」では民衆劇、フリーメイソン的象徴、超絶技巧、素朴な歌が同居する。重厚なオペラとして構えすぎず、劇場の娯楽性を残した形式として聴くと楽しい。
発展
ヒラー、ベンダ、ディッタースドルフらが先駆けとなり、モーツァルト「後宮からの誘拐」(1782)、「魔笛」(1791)で芸術的頂点に達した。ベートーヴェン「フィデリオ」(1814)はジングシュピール起源だが、英雄的・啓蒙的内容で形式を拡張した。19世紀にはウェーバー「魔弾の射手」(1821)がロマン派ドイツ・オペラへの転換点となった。
出来事
- 1778: ウィーン国民ジングシュピール劇場設立
- 1782: モーツァルト「後宮からの誘拐」初演
- 1791: モーツァルト「魔笛」初演
- 1821: ウェーバー「魔弾の射手」初演
派生・影響
ドイツ・ロマン派オペラ(ウェーバー、マルシュナー、ワーグナー初期)、ウィーン・オペレッタ、20世紀のミュージカルへ流れ込んだ。
音楽的特徴
楽器独唱、合唱、管弦楽(話し言葉あり)
リズム歌+セリフ、有節歌曲、重唱フィナーレ
代表アーティスト
- ヴォルフガング・アマデウス・モーツァルト
- カール・マリア・フォン・ウェーバー
代表曲
- 魔弾の射手 — カール・マリア・フォン・ウェーバー (1821)
- 後宮からの誘拐 K. 384 — ヴォルフガング・アマデウス・モーツァルト (1782)
- 魔笛 K. 620 — ヴォルフガング・アマデウス・モーツァルト (1791)
日本との関係
初めて聴くなら
入口は「魔笛 K. 620 — ヴォルフガング・アマデウス・モーツァルト (1791)」。夜の女王のアリアだけでなく、パパゲーノの素朴な歌や台詞の流れも聴きたい。より異国趣味と喜劇性を味わうなら「後宮からの誘拐 K. 384 (1782)」、ロマン派への展開なら「魔弾の射手 (1821)」がよい。
豆知識
ジングシュピールでは台詞が重要なので、録音だけだと作品の軽妙さが伝わりにくいことがある。映像や字幕付き上演で見ると、歌番号の間にある会話がどれほど劇のテンポを作っているかがよく分かる。
