バングラ
パンジャブ地方の収穫祭の民俗ダンス音楽。1980年代以降は英国でポップ化された。
どんな音か
春の収穫祭で踊られていた村の音楽が、いまやロンドンやトロントのクラブを揺らしている。この音楽はインド・パキスタンのパンジャブ地方に生まれ、その心臓部で鳴るのが、肩からさげて2本のバチで叩く両面太鼓ドールだ。太い側のバチ(ダガ)で低音面を、細い側(ティリ)で高音面を叩き分ける。現代の音源では、これに1弦の高音楽器トゥンビ、2本一組の縦笛アルゴーザ、そしてシンセベースやドラムマシンが重なる。テンポはおおむね100〜140 BPM前後と速く、現代のダンス系はさらに駆け足になる。歌うのは主に男性で、力強い高音のシャウトと合いの手が飛ぶ。歌詞はパンジャブ語で、収穫や結婚、若者の高揚、移民の郷愁をうたう。リズムの骨格をなすのは「チャール(chaal)」と呼ばれる4拍子(4/4)の8つの刻みからなる反復パターンだ。体が勝手に上下に跳ねるあのグルーヴは、ここから生まれる。
生まれた背景
数百年前からインド・パキスタンのパンジャブ地方の農村で4月の収穫祭(Vaisakhi)の踊りとして演じられてきた。1970〜80年代のイギリスバーミンガム・サウスオール周辺で、パンジャブ系移民の第2世代バンドが伝統ドールにシンセサイザーとドラムマシンを加え、「ブリティッシュ・バングラ」を確立した(Alaap や Heera が代表格だ)。1990年代にはBally Sagoo、Apache インドnがイギリスチャートに進出。2000年代以降はPanjabi MCのクロスオーバー・ヒットが世界的に広まった。近年のDiljit Dosanjh、AP Dhillon、Karan Aujlaは、バングラのリズムを取り込んだパンジャビ・ヒップホップ/トラップ世代で、純粋なバングラとは区別される。北米のパンジャブ系コミュニティでも独自に発展している。
聴きどころ
ドールは低音側と高音側を叩き分け、「ドゥッ・タッ・ドゥッ・タッ」と交互に鳴る。トゥンビ(高音の1弦楽器)の「ピンピンピン」というリフ。サビでの全員大合唱と「Balle Balle!」「Hoye Hoye!」の掛け声。ダンスでは肩を上下に動かし、両腕を上に伸ばすのが基本ポーズだ。
音楽的特徴
楽器ドール(両面太鼓)、トゥンビー、声
リズムを聴く
このジャンルを特徴づける代表的なリズムパターン。再生ボタンでループ再生し、下のリズム譜で今どの拍が鳴っているかを確認できます。
代表アーティスト
- Gurdas Maan
- Panjabi MC
- Daler Mehndi
代表曲
- Apna Punjab Hove — Gurdas Maan (1995)
- Mundian To Bach Ke — Panjabi MC (1998)
- Tunak Tunak Tun — Daler Mehndi (1998)
- Dama Dam Mast Qalandar (bhangra) — Daler Mehndi (1995)
Punjabian Di Shaan — Gurdas Maan (2014)
日本との関係
初めて聴くなら
豆知識
「バングラ」の語源には諸説あり、パンジャブ語の bhang(麻・ヘンプ)に由来するという説が知られる——収穫物の一つだった麻にちなむ命名だとされるが、収穫祭で麻を吸って踊ったから、という俗説まである。ドール奏者のPammi Baiは、ロンドンのバンドがシンセ化に傾くなか、それへの対抗軸として伝統的な村のバングラを守り、復興させた人物として知られる。いまでは伝統とシンセ化、両方の流れが同じフェスの舞台で共存している。Diljit Dosanjh は2023年、アメリカ合衆国の大型フェス、コーチェラに立った初のパンジャブ系アーティストとなった。インド映画ボリウッドの1990年代以降のダンス曲は、ほぼすべてバングラのリズム文法を取り入れている。
