マロヤ
レユニオン島の奴隷子孫が3拍子の打楽器で歌い継いだ抵抗の音楽。UNESCO無形文化遺産(2009)。
どんな音か
生まれた背景
聴きどころ
まず旋律楽器の不在に耳を慣らしてほしい。マロヤの音場は打楽器と人声だけで構成されるので、聴き手は「音の隙間」を聴くことになる。次にkayambの独特のシャッと擦れるアタック音、そしてroulèrの低音の胸に響く重み。この二つが3拍子の骨格を作り、その上に歌手たちの応答が編み込まれる。Danyèl Waroの『Batarsité』(2002)は、伝統様式を保ったまま録音技術で耳の距離を近づけた現代盤で、彼の詩の言葉のリズムと打楽器のリズムがずれる瞬間が最大の聴きどころだ。ライブでは歌い手たちが円陣で座り、聴衆も歌に参加する。
発展
禁令下でも Firmin Viry(1935-2018)、Gramoun Lélé(1930-2004)らがコミュニティ内で伝統を保持し、1970年代半ばには島の共産党系文化運動Front Culturelがマロヤをアイデンティティの象徴として掲げた。1981年の解禁以降、Danyèl Waro(1955-)がマロヤを世界の耳に届ける決定的な担い手となり、1998年『Foutan Fonnkèr』、2002年『Batarsité』で反植民地の詩篇を刻んだ。2009年10月、UNESCO無形文化遺産に登録され、島の文化政策の中心に置かれた。
出来事
- 1963: 県政令でマロヤ実質禁止
- 1976: Firmin Viry初期EP録音
- 1981: 禁令解除
- 1998: Danyèl Waro『Foutan Fonnkèr』
- 2009: UNESCO無形文化遺産登録
派生・影響
サレジー(マダガスカル)、セガ(モーリシャス)と兄弟関係。近年はマロヤ・レゲエ、マロヤ・エレクトロといった混成形が生まれつつある。
音楽的特徴
楽器kayamb(シェイカー)、roulèr(樽太鼓)、sati(金属ケトル)、bobre(弓)、時にjembe、リード歌手+集団応答
リズム60-90BPMの3拍子、セスキアルテラ寄りの伸縮、リードとコーラスのコール&レスポンス、憑依儀礼serviceカバレーからの継承
代表アーティスト
- Gramoun Lélé
- Firmin Viry
- Danyèl Waro
- Christine Salem
- Nathalie Natiembé
代表曲
- Batarsité — Danyèl Waro (2002)
Namouniman — Gramoun Lélé (1996)
Maloya — Firmin Viry (1997)
Foutan Fonnkèr — Danyèl Waro (1998)
その後の代表曲
- Larg' Pa Lo Kor — Christine Salem (2011)
Sankèr — Nathalie Natiembé (2005)
Aou Amwin — Danyèl Waro (2010)
日本との関係
初めて聴くなら
最初はDanyèl Waroの『Foutan Fonnkèr』(1998)、マロヤの現代的な担い手による代表作で、詩の言葉と打楽器のリズムがずれる瞬間が明快に聴ける。次に『Batarsité』(2002)、反植民地の詩篇をタイトルにしたアルバムで、Waroの政治的な側面が最も剥き出しになった録音だ。伝統派を聴きたければGramoun Lélé『Namouniman』(1996)、彼と息子・孫の家族単位でのservice kabaréの記録として貴重。現代の女性側からはChristine Salem『Larg' Pa Lo Kor』(2011)、マロヤをブルースに近い低音の男性歌手中心の場から解き放った作品だ。
