ガーナ・アフロビーツ
2010年代のガーナで、ハイライフ/ヒップライフの土台にダンスホールとナイジェリア・アフロビーツを重ねて成立したポップ音源群。
どんな音か
ガーナ・アフロビーツは、2010年代半ば以降のガーナの主流ポップで、ハイライフのギター/ホーンの語法と、ヒップライフのトゥイ語ラップ、ジャマイカのダンスホールのビート、そしてナイジェリア・アフロビーツのドラム設計を統合したものを指す。テンポは100-115BPM、キックは3拍目に強い『ワン・ドロップ』を残し、シンセ・ベースが軽く跳ねる。シェイカーが16分を刻み、ハイハットは細かく散らす。歌はトゥイ語+英語のコード・スイッチ、時にピジン英語で、フックの繰り返しが多く、ダンス動画が拡散設計に組み込まれている。ナイジェリアのアフロビーツより粒立ちが乾いており、ハイライフ由来のギター単音リフが前に出るのが最大の識別点だ。
生まれた背景
起点は2013-14年、Sarkodie が『Adonai』(feat. Castro、2014)でヒップライフの高速トゥイ語ラップにアフロビーツ的なドラムを持ち込み、ガーナ Music Awards の最優秀ヒップライフ賞を獲得した頃だった。同時期に Shatta Wale(本名 Charles Nii Armah Mensah Jr., 1984-)がダンスホール系の『ダンスホール King』(2013)でシーンを掌握、Stonebwoy(本名 Livingstone Etse Satekla、1988-)は2015年『Baafira』でアフロダンスホール路線を確立した。二人は2010年代後半のガーナ音楽界の『Shatta vs Bhim』と呼ばれる長期ライバル関係にあり、それがシーン全体の熱量を作った。2018年以降、King Promise『CCTV』、Kwesi Arthur『Grind Day』(2017)、Kuami Eugene、KiDi らが『ハイライフ の子』世代として続き、2021年 Black Sherif『Second Sermon』でジャンルは新世代の顔を得た。
聴きどころ
まず Shatta Wale『One Don』(2020)を聴くと、ダンスホール由来のワンドロップ・キックと、シンセ・ベースの短い跳ねが明快に聴ける。Stonebwoy『1st Sermon』(2020)では、Black Sherif の『Second Sermon』(2021)『Third Sermon』(2022)へと繋がる『説教型フロウ』の原型が示され、憂鬱な語りに近い低音ボーカルが特徴だ。King Promise『Terminator』(2023)ではハイライフ由来のギター単音リフが最も明快に前に出て、ジャンルの識別点が体感できる。Amaarae のオルタナ R&B 寄りの高音ファルセットは、ジャンル全体の中でも異例の路線として聴こえる。
発展
2018年以降、King Promise(『CCTV』2018)、Kwesi Arthur(『Grind Day』2017)、Kuami Eugene、KiDi らが「Highlife の子」世代として続き、2021年には Black Sherif が『Second Sermon』でジャンルを跨いだ黒馬として登場、2022年『Kwaku the Traveller』でサブサハラ・アフリカ全域チャート1位を獲得した。同年 Amaarae(本名 Ama Serwah Genfi、1994-)の『Sad Girlz Luv Money』(feat. Kali Uchis)が Billboard Hot 100 に入り、ガーナ・アフロビーツが米国のオルタナ R&B シーンに直接届く回路が開いた。
出来事
- 2013: Shatta Wale『Dancehall King』
- 2014: Sarkodie『Adonai』
- 2015: Stonebwoy『Baafira』
- 2018: King Promise『CCTV』
- 2021: Black Sherif『Second Sermon』
- 2022: Amaarae『Sad Girlz Luv Money』Billboard Hot 100 入り
派生・影響
ナイジェリア・アフロビーツ(sibling)、ヒップライフ(derived_from)、ダンスホール(fused_with)。
音楽的特徴
楽器打ち込みドラム、シンセベース、エレキギター単音リフ、時にホーンサンプル、ボーカル
リズム100-115BPM、3拍目のワンドロップキック、シェイカーの16分刻み、コール・アンド・レスポンス
代表アーティスト
- Shatta Wale
- Stonebwoy
- Amaarae
- King Promise
- Kwesi Arthur
- Black Sherif
代表曲・古典
Dancehall King — Shatta Wale (2013)
Rap Attack — Sarkodie (2013)
Baafira — Stonebwoy (2015)
代表曲・現在
Grind Day — Kwesi Arthur (2017)
CCTV — King Promise (2018)
Activate — Stonebwoy (2019)
1st Sermon — Stonebwoy (2020)
One Don — Shatta Wale (2020)
Sad Girlz Luv Money — Amaarae (2020)
Second Sermon — Black Sherif (2021)
Kwaku the Traveller — Black Sherif (2022)
Angels in Tibet — Amaarae (2023)
Terminator — King Promise (2023)
日本との関係
初めて聴くなら
豆知識
『Bhim』はStonebwoy のファン集団の自称で、彼のニックネームから来ている。Shatta Wale の元名『Bandana』は2004年映画『Bandana』の主演役から取った芸名で、2013年に現在の Shatta Wale に改名した。Amaarae はガーナ人の父とアフリカ系米国人の母を持ち、ニューヨークとアクラを行き来する二重拠点で活動する。Black Sherif の『Sermon』シリーズは、彼が10代でナイジェリアの Kwesi Arthur らを聴いていた影響で書かれた自伝的三部作で、2022年の『Second Sermon』はサブサハラ・アフリカ全域チャート1位を記録した。
影響・派生で結ばれたジャンル
同じ時期・同じ地域で生まれた他のジャンル
- 伝統・民族アサカ
