アサカ
2020年、ガーナ第二の都市クマシで爆発した、UK ドリル直系のトゥイ語ラップ・ムーブメント。
どんな音か
アサカ(アサカ)は、2020年前後にガーナのクマシ(通称 Kumerica、『クマシ=アメリカ合衆国』)で爆発したドリル・ラップの現地名だ。ビートは UK ドリルの型を守る — 140BPM前後、スライドする808ベース、シャッフルするハイハット、乾いたスネアのバックビート — が、ラップはトゥイ語(アシャンティ語)+英語+ピジンの混成で、UK ドリルの持つ都市の閉塞感がクマシの下町(Ash Town、Alabar、Race Course、Tafo)の生活に置き換えられる。ビジュアルはボマー・ジャケット、スキー・マスク、指ジェスチャーで UK/ニューヨーク・ドリルの記号を意識的に借用しつつ、背景はクマシ中央市場の路地とアシャンティ王宮周辺の風景だ。フックは短く、複数の MC が一曲内で交代し、韻はトゥイ語の四声調を活かした跳ねる着地を持つ。
生まれた背景
決定打は2020年3月、17歳のクマシの高校生 Yaw Tog(本名 Thorsten Owusu Gyimah)が地元の アサカ Boys(Kwaku DMC、O'Kenneth、Reggie、Jay Bahd、City Boy)と組んだ『Sore』(トゥイ語で『起きろ』の意)のミュージック・ビデオが YouTube で爆発したことだった。コロナ禍のロックダウンでスタジオが閉鎖されるなか、SoundCloud と TikTok を主戦場に、クマシの若者たちが自分の街を『Kumerica』と自称してマイクロ・ムーブメントを構築した。同年8月、UK ドリルの頂点 Stormzy が『Sore』の公式リミックスに参加、Headie One も続いてクマシに関心を示し、UK ドリル・シーンからの公認が完了した。
聴きどころ
まずビートを聴く。UK ドリル特有のスライド 808 ベース(音がグリッサンドで上下する)と、Roland TR-808 のシャッフルするハイハット、乾いたスネアのバックビートは UK 本流と全く同じだ。差はラップにある。トゥイ語は四声調言語で、UK 英語のドリルにはない旋律的な韻の着地が生まれ、これがアサカを『歌える』ラップにしている。Yaw Tog『Sore』では、複数の MC のバースが2小節ずつ切り替わる速度感、フックが単純な三音のリフレインで反復する設計を意識して聴くと、シーンの型が見える。
発展
Life Living Records(Reggie が代表)、Asakaa Boys 集団が中心となり、2021-22年には Black Sherif が世代の顔として飛び出した(Sherif 自身はアサカから距離を取り、より広義の「Sad boy trap」を標榜するが、シーンからの派生と扱われる)。2023年以降はドリル・ビートに Highlife のホーンを混ぜたハイブリッド曲も現れ、ジャンルは初期の純度を保ちながらガーナ独自の変異を進めている。
出来事
- 2020年3月: Yaw Tog『Sore』YouTube 公開
- 2020年8月: Stormzy『Sore Remix』参加
- 2021: Kumerica compilation リリース
- 2022: Black Sherif『Kwaku the Traveller』世界ヒット
派生・影響
UK ドリル(derived_from)、ヒップホップ(regional_variant)、ハイライフとの局所的融合。
音楽的特徴
楽器打ち込みドラム(808ベース、スネア、シャッフル・ハイハット)、シンセ、時にトゥイ語のサンプル
リズムUK ドリルの140BPM前後、スライド808、シャッフル・ハイハット、切迫したフロウ
代表アーティスト
- Black Sherif
- Kwaku DMC
- Reggie (Life Living)
- O'Kenneth
- Yaw Tog
代表曲・古典
Akatafo — O'Kenneth (2020)
Sore — Yaw Tog (2020)
Sore (Remix) — Yaw Tog (2020)
代表曲・現在
Bossu — Reggie (Life Living) (2021)
Kwaku Ananse — Kwaku DMC (2021)
日本との関係
初めて聴くなら
豆知識
影響・派生で結ばれたジャンル
同じ時期・同じ地域で生まれた他のジャンル
- ポップガーナ・アフロビーツ
