バリガムラン
バリ島の鋭く激しい青銅打楽器合奏。儀礼と芸術の中核。
どんな音か
バリ島の青銅製打楽器合奏。楽器は、様々なサイズと音高を持つボング(鋲付き鑼)で構成され、複数の奏者が異なるオスティナート(繰り返しパターン)を同時に演奏する。音響は輝く、時に耳を刺すような鮮烈さを持ち、リズムは複雑で、西洋の拍子感とは異なる『サイクル的時間』に基づく。テンポは速く、アンサンブルのグルーヴ感は、ロック音楽の『ノリ』に比較可能。儀礼と娯楽の両立が特徴で、同じ音楽編成が祭りでも、舞踊伴奏でも、冠婚葬祭でも使用される。
生まれた背景
聴きどころ
I Nyoman Wenten の『Gending Sekar Jepun』では、複数の音高を持つボングが、見事に同期し、一つのハーモニック・サウンドスケープを作る。個別の楽器の音は消え、『総体としての音響』が前景に出る。リズムの複雑さは、初見では『混沌』に聴こえるが、数分の聴取で規則性が浮かび上がる経験が価値。
発展
1915年頃に北部バリで誕生したゴング・クビャル様式が爆発的に流行し、20世紀バリ音楽の代表となった。コラック・スター(1928年)・I・ニョマン・ワトラ・I・ワヤン・ロトリンらが革新を進め、戦後はI・ワヤン・サディアら作曲家が新作を作り続けている。
出来事
- 13世紀: マジャパヒト文化のバリ伝来。
- 1915年: ゴング・クビャル様式誕生。
- 1928年: コラック・スター録音。
- 1971年: バリ国立芸術アカデミー設立。
- 2015年: 9つのバリ舞踊がユネスコ無形文化遺産登録。
派生・影響
ケチャ(影絵芝居の合唱)・ジョゲッ・ブンブン(竹筒ガムラン)、世界の現代作曲家(ベンジャミン・ブリテンら)の作品に影響を与えた。
音楽的特徴
楽器ゴング・クビャル、レヨン、ガンサ、ジェゴグン、クンダン、スリン
リズムコテカン(交差リズム)、急激なテンポ変化、ペロッグ・スレンドロ音律
代表アーティスト
- I Wayan Lotring
- I Nyoman Wenten
代表曲
Gending Sekar Jepun — I Nyoman Wenten (1985)
日本との関係
東南アジア音楽への一般的関心の中で、バリガムランは比較的認知度がある。ワールドミュージック・ブームや、東洋哲学への関心層によって、一定の認識がある。ただし、表面的な『エキゾチック・サウンド』としての消費にとどまることが多い。
初めて聴くなら
I Wayan Lotringの作品、またはI Nyoman Wenten の『Gending Sekar Jepun』。複雑さの中にも、打楽器特有の快感を感じさせる。ドキュメンタリー映像とともに視聴すると、舞踊との関係が理解しやすい。夜間、瞑想的な時間に聴くことを勧める。
