伝統・民族

バイラ

Baila

スリランカ / 南アジア · 1850年〜

スリランカの民俗ポップ。ポルトガル系を起源に持つ陽気な踊り歌。

どんな音か

バイラは明るく快活なダンス音楽で、ポルトガルファドやモーリシャスのセガに共通する南洋的な軽さを持つ。アコーディオン、バイオリン、ギター、太鼓が組み合わさり、シンプルな和声進行の上でボーカルが陽気な旋律を繰り返す。テンポは早め(120〜140BPM前後)で、歌の言葉はシンハラ語が多いが英語やタミル語が混じることもある。踊りを前提とした音楽で、スリランカのパーティーや祝祭の場でライブ演奏されてきた。「Surangani」はその代表的な曲で、覚えやすいメロディーが繰り返される構造から、一度聴いたら忘れにくい。

生まれた背景

バイラの起源はポルトガルがセイロン(現スリランカ)を植民地支配した16〜17世紀(1505〜1658年)に遡る。ポルトガル人と現地の人々の間に生まれた混血コミュニティ(「ポルトガル・バーガー」)が、ポルトガルのリズムと現地の音楽を混ぜた音楽スタイルを発展させた。その後オランダイギリスの支配を経ても生き残り、19〜20世紀にかけてシンハラ語の歌詞を持つポップな形式として広まった。独立後(1948年)のスリランカでも、バイラは特定の民族や宗教を超えた祝祭音楽として定着している。

聴きどころ

「Surangani」のメロディーラインがどれだけシンプルな音程の動きで構成されているかに注目する。複雑な音階を使わず、数個の音を行ったり来たりする構造が、踊りやすさと歌いやすさを同時に実現している。アコーディオンの音色が、ポルトガルから運ばれた西洋音楽の痕跡として聴き取れる。

発展

20世紀後半にはウォーリー・バスティアン・M・S・フェルナンドらがバイラのスター歌手として活躍し、1990年代以降はサンギータラタ・スパヌディラジ・グラントなど若手も加わった。スリランカ移民コミュニティ(オーストラリア・カナダ)でも盛ん。

出来事

  • 16世紀: ポルトガル植民地期の音楽融合。
  • 1948年: スリランカ独立で国民音楽化。
  • 1970年代: ウォーリー・バスティアン・ブーム。
  • 1995年: M・S・フェルナンド最盛期。
  • 2010年代: 若手によるエレクトロ・バイラ。

派生・影響

スリランカ・ポップ・コメディ映画の音楽、シンハラ・タミル両コミュニティで共有される国民的音楽、現代スリランカ・ヒップホップの素材となる。

音楽的特徴

楽器ギター、ラバナ(タンバリン)、キーボード、ベース、ドラムス、声

リズム6/8拍子、ポルトガル系の陽気な拍、シンハラ・タミル詞章

代表曲

日本との関係

日本ではほぼ知られていない。スリランカ料理店やスリランカ出身者のコミュニティの場で流れることがある程度。日本でもスリランカ音楽への関心は非常に限られており、バイラに辿り着く人は稀だ。

初めて聴くなら

「Surangani」から入る。スリランカのポップスとして最も知名度が高く、YouTube上でも簡単に見つかる。踊りの映像と合わせて見ると、ダンスミュージックとしての性格がすぐにわかる。聴くというより参加するイメージで、陽気に聴けば楽しさが伝わりやすい。

豆知識

バイラ」という名前の語源についてはポルトガル語の「bailar(踊る)」から来ているという説が有力だが、スリランカでは単純に「バイラ音楽」として定着しており、語源を意識して使う人は多くない。また、スリランカ独立後にバイラをシンハラ語のポップスとして近代化した歌手のM.S. ペレラ(M.S. Perera)は「バイラの父」とも呼ばれ、1960〜70年代に多くの録音を残したとされる。

影響・派生で結ばれたジャンル

ジャンル関係図1500年代1850年代バイラバイラキャンディアン音楽キャンディアン音楽凡例派生影響同系統
凡例
派生影響同系統
バイラを中心とした近傍図。中心と直接結ばれるエッジが強調表示されます。

バイラ の系譜全体図(多段)を見る

ジャンル一覧へ戻る