伝統・民族

チャマメ

Chamamé

コリエンテス州 / アルゼンチン/パラグアイ / 南米 · 1900年〜

アルゼンチン北東部コリエンテス州・パラグアイ・ブラジル南部の三国境地帯で生まれた、グアラニー先住民・スペイン系・東欧移民の混合舞踊歌。

どんな音か

チャマメの音の中心にはバンドネオンの重い息がある。タンゴのバンドネオンより速いテンポで、コルドバ・ポルカ的な軽快さと哀愁が同居する。ギターがリズムを支え、コントラバスが低音を粘らせる。歌詞はグアラニー語とスペイン語が混在し、川と沼地に囲まれたコリエンテス州の湿った風景が歌われる。カップルが抱き合って踊るダンスで、タンゴほど直線的な動きではなく、足が地面に近い円運動をする。Raúl Barbozaのバンドネオンは特にグアラニー的な哀愁を強調した音色で、低音部のじっとりした湿気と高音部の細い泣き声が特徴的だ。

生まれた背景

チャマメが生まれたのはアルゼンチン北東部コリエンテス州で、パラグアイとブラジル(リオ・グランデ・ド・スル州)に隣接する地帯だ。この三国境エリアには19世紀後半から20世紀初頭にかけてポーランド・ウクライナ系の移民が大量に入植し、彼らが持ち込んだアコーディオンやポルカのリズムが、先住民グアラニーの音楽文化とスペイン植民地の歌謡と混ざり合った。バンドネオンはリオ・デ・ラ・プラタ地域でタンゴに使われたものが北に伝わり、チャマメに取り込まれたとされる。Raúl Barboza(1939年生まれ)はブエノスアイレスやパリで活躍しながら、グアラニー語の歌詞とコリエンテス的な感性を守り続けた。2020年にユネスコ無形文化遺産に登録された。

聴きどころ

バンドネオンの呼吸のリズムを追う。蛇腹を引くときと押すときで音色が微妙に変わり、その「継ぎ目」がチャマメのリズムの引力になっている。Raúl Barbozaの『Memorias』(1991年)では中間部でテンポが落ちる場面があり、そこでのバンドネオンと歌の間合いが特に美しい。グアラニー語とスペイン語が切り替わる部分で、言葉の響きが変わることも聴きどころの一つ。

発展

20世紀のトランシト・コカマレラ、ラモナ・ガラルサが代表的歌手で、1980年代以降アンタリオ・タラゴ・ロス、ラリ・コーロらが世代を更新した。2020年にユネスコ無形文化遺産登録。

出来事

  • 1931: 初の商業録音
  • 1962: トランシト・コカマレラ全盛
  • 1995: ラリ・コーロ国際ツアー
  • 2020: ユネスコ無形文化遺産登録

派生・影響

ポルカ、グアラニー先住民音楽、ブラジル南部音楽、ヌエバ・カンシオンと交差。

音楽的特徴

楽器アコーディオン、バンドネオン、ギターラ、コントラバス、声

リズム中速6/8、ポルカ系2/4、グアラニー語混合

代表アーティスト

  • Raúl Barbozaアルゼンチン · 1957年〜

代表曲

日本との関係

タンゴ愛好家の間で「コリエンテス州の音楽」として知られる場合があるが、チャマメ単体で日本に紹介されたことはほとんどない。タンゴフェスティバルのプログラムにときおり登場する程度で、専用のコンサートや特集記事は極めて少ない。

初めて聴くなら

Raúl Barbozaの『Memorias』(1991年)が最も入りやすい。バンドネオンと歌のシンプルな編成で、チャマメの核が凝縮されている。続けて『Kilometro 11』(1990年)へ進むと、よりダンス向きのリズムが際立ち、足が動きたくなる感覚がある。

豆知識

グアラニー語で「チャマメ」の意味は定かではなく、「混ぜ合わせたもの」という説と地名由来説があるが、どちらも確証はない。パラグアイではチャマメと非常に近い音楽をポルカ・パラグアージャと呼び、隣国でも別名を持って同じ文化圏を形成している。

影響・派生で結ばれたジャンル

ジャンル関係図1850年代1900年代チャマメチャマメチャカレラチャカレラ凡例派生影響同系統
凡例
派生影響同系統
チャマメを中心とした近傍図。中心と直接結ばれるエッジが強調表示されます。

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