ラテン・カリブ

チャカレラ

Chacarera

サンティアゴ・デル・エステロ州 / アルゼンチン / 南米 · 1850年〜

アルゼンチン中北部サンティアゴ・デル・エステロ州を中心とする民俗舞踊歌で、ボンボ・レグエロとギターが駆動する6/8の二人舞踊。

どんな音か

チャカレラアルゼンチン北部の乾いた土の匂いがするような音楽だ。6/8と3/4が交差するリズム(ヘミオラ)をボンボ・レグエロ(大型の皮張り太鼓)が刻み、ギターがコードを刻む。ヴォーカルは鼻にかかった明るい音色で、対の男女が踊る二人舞踊に合わせてテンポが軽快に上下する。メロディは素朴で繰り返しが多いが、その繰り返しの中に少しずつ強さが増す高揚感がある。録音は乾いたアコースティックで、都市のスタジオ仕上げではない土の摩擦音のような粗さが残っている曲が多い。

生まれた背景

チャカレラの発祥地とされるサンティアゴ・デル・エステロ州は、アルゼンチンで最も長い植民地化の歴史を持つ地域の一つで、ケチュア語系の先住民文化とスペイン植民地文化が深く混じり合ってきた。19世紀末から20世紀初頭にかけて農村コミュニティの祭りや婚礼で演じられながら形を固め、1960〜70年代に「フォルクローレ(アルゼンチン民俗音楽)」の全国的ブームに乗ってブエノスアイレスにも広まった。Atahualpa Yupanqui(1908〜1992年)はチャカレラをはじめとするフォルクローレを国際水準のアーティズムに引き上げた第一人者で、ギター演奏と詩の両面でその評価は揺るがない。

聴きどころ

ボンボ・レグエロのリズムパターン、特に強拍がどの位置にあるかを聴き取ることが最初の関門。6/8と3/4の「揺れ」が心地よい浮遊感を生むが、手拍子をしようとすると拍が合わないことに気づく。Atahualpa Yupanquiの『Los Hermanos』(1965年)ではギターの低音弦の使い方が際立っており、メロディよりもハーモニーと指の動きに集中して聴くと音楽の骨格が見えてくる。

発展

1940年代以降のアタウアルパ・ユパンキがチャカレラを左派的な土地・労働者の歌として再定義し、1960~70年代のメルセデス・ソサとともに「ヌエバ・カンシオン・アルヘンティーナ」の中核となった。21世紀には現代ジャズ、ロック・ナシオナルとも交差する。

出来事

  • 1923: アンドレス・チャサレタ採譜・出版
  • 1948: アタウアルパ・ユパンキ全盛
  • 1970: メルセデス・ソサ国際展開
  • 2014: ボンボ・レグエロ無形文化遺産候補

派生・影響

サンバ・アルヘンティーナ、ヌエバ・カンシオン、アルゼンチン・ロック・ナシオナルと交差。

音楽的特徴

楽器ギター、ボンボ・レグエロ、ヴァイオリン、声

リズム高速6/8、3対2エミオラ、男女輪舞

代表アーティスト

  • Atahualpa Yupanquiアルゼンチン · 1922年〜1992
  • Mercedes Sosaアルゼンチン · 1965年〜2009
  • Soledad Pastoruttiアルゼンチン · 1996年〜

代表曲

日本との関係

日本アルゼンチン音楽といえばタンゴが先立つため、チャカレラは知名度がかなり低い。ただしラテン音楽や南米音楽のファンの間では、タンゴとは別の「内陸アルゼンチン」の音として一定の関心を持つ人がいる。フォルクローレを学ぶ音楽家の間では、メルセデス・ソサやAtahualpa Yupanquiの録音がルーツ音楽として参照されることがある。

初めて聴くなら

Atahualpa Yupanquiの『Los Hermanos』(1965年)から入るのがよい。ギターだけに近い編成で、チャカレラのリズムとメロディの素の構造が聴き取りやすい。踊るエネルギーを感じたいなら、Soledad Pastorutttiの『A Don Ata』(1996年)へ。明るく速いテンポで、声の張り方にも現代的なスケールがある。

豆知識

チャカレラ」という名称の語源には諸説あり、ケチュア語の「チャカラ(農地)」に由来するという説と、地域名サンティアゴ・デル・エステロの先住民的発音からきたという説がある。Atahualpa Yupanquiはパリに長年在住し、エディット・ピアフと親交を持っていた。フランスで名声を得た後も、アルゼンチンの農村的なサウンドを手放さなかった。

影響・派生で結ばれたジャンル

ジャンル関係図1850年代1880年代1900年代チャカレラチャカレラタンゴタンゴチャマメチャマメ凡例派生影響同系統
凡例
派生影響同系統
チャカレラを中心とした近傍図。中心と直接結ばれるエッジが強調表示されます。

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