ポップ

アラベスク

Arabesque

トルコ / 中東 · 1968年〜

1960年代以降のトルコで成立した、アラブ・トルコ古典の旋法をポップに取り入れた大衆音楽。

どんな音か

トルコアラベスクは、トルコ古典やアラブ音楽の旋法感を、都市の大衆歌謡として濃く歌い上げる音楽。弦楽器が泣くようにうねり、歌手は声を強く震わせ、メロディは半音より細かな装飾で沈む。Orhan GencebayやMüslüm Gürsesの歌には、移民都市の孤独、失恋、貧しさ、諦めが濃くにじむ。

生まれた背景

1960年代以降のトルコで、地方からイスタンブルなど大都市へ移住した人々の感情と結びついて広がった。西洋化を志向する国の公式文化からは低俗と見られることもあったが、カセット、映画、ラジオを通じて圧倒的な支持を得た。アラブ音楽の影響を受けつつ、トルコ語の歌謡として独自に発展した。

聴きどころ

歌手の声の震えと、弦のポルタメントを聴くと特徴が見える。明るいポップスのように軽く解決せず、旋律が何度も同じ悲しみに戻る。打楽器のリズムは前に出すぎず、歌の感情を支える。過剰に聞こえる装飾こそが、アラベスクの痛みを作っている。

代表アーティスト

  • Zeki Mürenトルコ · 1951年〜1996
  • Orhan Gencebayトルコ · 1966年〜
  • Müslüm Gürsesトルコ · 1968年〜2013
  • İbrahim Tatlısesトルコ · 1970年〜

代表曲

日本との関係

日本ではトルコ音楽や中東歌謡に関心を持つ人が触れるジャンルで、広く流行したわけではない。ベリーダンス音楽やトルコ映画の文脈から入ることはあるが、アラベスク特有の都市下層の感情までは紹介されにくい。配信で名歌手にアクセスしやすくなった。

初めて聴くなら

歴史的な入口は「Bir Teselli Ver — Orhan Gencebay (1968)」。濃い哀愁を聴くなら「Affet — Müslüm Gürses (1976)」。力強い声と民衆歌謡の熱を味わうなら「Yalan — İbrahim Tatlıses (1979)」がよい。

豆知識

トルコアラベスクは、装飾模様のアラベスクとは別に、アラブ風と見なされた音楽語法を指す呼び名として使われた。長く賛否を呼んだが、いまではトルコ大衆音楽を語るうえで避けられない存在である。

影響・派生で結ばれたジャンル

ジャンル関係図1500年代1900年代1960年代アラベスクアラベスクトルコ古典音楽トルコ古典音楽タラブタラブ凡例派生影響同系統
凡例
派生影響同系統
アラベスクを中心とした近傍図。中心と直接結ばれるエッジが強調表示されます。

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トルコ · 1968年前後 (±25年)

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