ポップ

T-POP

Thai Pop

タイ / 東南アジア · 2010年〜

タイのアイドル系・新世代ポップ。PURPEECH、4EVE、BUSなどが代表。K-popフォーマットを土着化させた。

どんな音か

T-POPは2010年代後半以降のタイで、K-POPのアイドル制作モデルをタイ語と東南アジア的メロディに翻訳した新世代ポップを指す。BPM100〜120のシンセ・ファンクや、フューチャー・ベースをベースにしたきらびやかなEDMポップが中心で、ガールズ/ボーイズグループのフォーメーションダンスを前提にトラックが作られる。声はK-POPほど整音せず、タイ語の鼻母音が残った柔らかい発声で、サビ前の「えーっ」と息を吸う間が独特の色気を生む。MVは色彩を派手に振り切り、バンコクの夜とパステルのセットを組み合わせた画作りが定番だ。

生まれた背景

タイのポップシーンは長らくGMM Grammyを頂点にしたバラード偏重で、ダンスアイドルは2010年代前半までほぼ不在だった。流れを変えたのは日本のAKB48をタイにローカライズしたBNK48(2017〜)で、これがアイドル文化の地ならしをした。そこに、K-POPで訓練を積んだプロデューサーや韓国の制作会社が入ってきて、4EVE、PiXXiE、PURPEECH、PUN、BUSといった現行T-POPアイドル群が一気に生まれた。コロナ禍の配信ライブと、TikTokでのチャレンジ拡散が決定的に効いた、まだ生まれて数年の若いシーンだ。

聴きどころ

K-POPと比べると、タイ語特有の声調の上下がメロディを縛るので、サビが意外な音程で着地する瞬間がある。そこが「韓国のコピーではないT-POP」を聴き分けるポイントだ。PURPEECHのようなボーイズグループはR&B寄りのコード進行を多用し、4EVEのようなガールズ系はフューチャー・ベースのきらきらしたシンセを前面に出す。プロダクションの予算はK-POPに届かないので、ベースとキックの押し出しがやや軽い分、ボーカルの距離感が近く、生っぽい。ダンスは韓国系振付師の関与が多く、隊列の組み替えはK-POPの語彙で読める。

代表アーティスト

  • 4EVEタイ · 2020年〜
  • PURPEECHタイ · 2023年〜
  • BUSタイ · 2024年〜

代表曲

日本との関係

BNK48が日本のAKB48グループの妹分なので、もとから日本との回路は太い。BNK48メンバーがソロでT-POP寄りに転じる例もあり、日本の48ファンの一部はそのまま4EVEやPiXXiEに流れている。2023年以降は『Tokyo Idol Festival』にタイ勢が出演する流れができ、PiXXiEや4EVEが日本のアイドルファン界隈で名前が知られるようになった。タイ日本のアニメ受容が極めて強い国なので、T-POPのMVにアニメ調の世界観やJ-POP的なコード進行が混じることも多く、日本のリスナーにとって入りやすい音だ。

初めて聴くなら

入門ならPURPEECH『Telephone』のR&Bポップ。深夜のヘッドホンで、タイ語の鼻にかかった声の質感を味わうのに最適だ。踊りたい気分なら4EVE『PLAY』、TikTok由来のサビが一発で残る。バラード派にはPUN(PURPEECHのメンバー)のソロ曲か、BUSの『BUS Because of You』の収録曲が向く。アイドル文化に明るくない人はまずMVを観てしまった方が早い。

豆知識

T-POP」という呼称はタイ政府文化省も公式に推している半官製の言葉で、2022年に「T-POP STAGE SHOW」というテレビ番組がチャンネル5(軍系)で始まったのが象徴的だ。ソフトパワー戦略「5F(Food, Film, Fashion, Fight, Festival)」にPOPを足して「5F+1」と呼ぶ動きもある。BUSは2024年にデビューしたボーイズグループで、Philippine Arena級の動員を狙える次世代株として注目されている。

影響・派生で結ばれたジャンル

ジャンル関係図1980年代1990年代2010年代T-POPT-POPJ-POPJ-POPK-popK-pop凡例派生影響同系統
凡例
派生影響同系統
T-POPを中心とした近傍図。中心と直接結ばれるエッジが強調表示されます。

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