ブィリーナ
ロシアの口承叙事詩唱。
どんな音か
ブィリーナは語りと歌の境界にある。詩行を一定の旋律パターンにのせて歌うのだが、旋律は繰り返しが基本で、何十行にもわたる叙事詩を同じメロディを少しずつ変えながら吟じ続ける。伴奏は基本的に使わず、歌い手(スカジーチェリ)の生の声だけが広い空間に響く。声の質は訓練された声楽ではなく、話し声に近い自然な発声で、長い詩を語るための持続力と朗々とした強さが求められる。リズムは叙事詩の詩格(トロヘー)に従い、強弱の繰り返しが一定の波を作る。
生まれた背景
聴きどころ
「Ilya Muromets bylina — Marfa Kryukova (1937)」では、同じ旋律パターンが繰り返される中でどこに変化が生まれるかを追う。言葉の意味はわからなくても、強勢の置かれる音節のたびに声がわずかに強くなるリズムが聴き取れるはずだ。録音状態は時代なりに粗いが、それが却って声の現場感を高めている。
発展
Rimsky-Korsakov等の国民楽派作曲家が題材化。Stravinsky『火の鳥』にも影響。20世紀末にはほぼ生証言が絶え記録のみとなった。
出来事
- 1861: Rybnikov採集開始
- 1908: Marfa Kryukova記録
- 1975: 最後の世代奏者死去
派生・影響
Russian国民楽派、Stravinsky作品の精神的基盤。
音楽的特徴
楽器声(無伴奏)、Gusli(古弦楽器)
リズム自由拍朗唱、トニック反復、3行スタンザ
代表アーティスト
- Marfa Kryukova
代表曲
Ilya Muromets bylina — Marfa Kryukova (1937)
日本との関係
初めて聴くなら
「Ilya Muromets bylina — Marfa Kryukova (1937)」一択。録音は古く音質は粗いが、ブィリーナという形式が何であるかを最も直截に体験できる。まず3〜5分聴いて、語りと歌の境界がどこにあるかを自問してみるといい。
