伝統・民族

チャストゥーシュカ

Chastushka

ロシア / 東ヨーロッパ · 1860年〜

ロシアの諧謔的短詩歌。

どんな音か

軽快で、時に無礼なロシア民謡。4行の短い詩型で、1行が2小節前後の速度で進む。衣装やダンスを伴わず、素朴な楽器(アコーディオン、ドミュラ、バラライカなど)の伴奏か、完全無伴奏。声は張り、田舎のユーモアと皮肉が前景に出る。即興性が高く、その場で詩句を作り、観客の爆笑を狙う。ロシア民謡の中でも、もっとも言葉と音の結びつきが強く、文字通りの『言う音楽』。

生まれた背景

19世紀中葉から後期のロシア農村と町場で発生。農民・労働者の日常的な社会批評と笑いを、4行詩という短編形式に圧縮した。ロシア帝国の検閲が及びにくい非公式な場(居酒屋、市場、祭礼)で歌われることが多かった。ソビエト連邦期には、政治的プロパガンダの形式としても採用され、『良い仲間』『坏な支配者』といった単純な道徳が繰り返され、ポップ化した。

聴きどころ

Lidia Ruslanovaの録音では、彼女の張った声と、彼女自身が作った社会的ユーモア(女性労働者の視点から、男性や権力層を風刺する)が一体になっている。歌詞の『オチ』と音の終わり方がぴったり合致する瞬間を聴くこと。また、複数の声でハーモニーを作る場合(群唱)、全員で同じ音に合致する瞬間の快感。

発展

Lidia Ruslanovaら歌手が舞台音楽化。ソ連期の村落復興運動と都市民俗団で生き残った。現代でもロシア各地で結婚式の余興として歌われる。

出来事

  • 1861: 農奴解放後に普及
  • 1929: Ruslanova録音
  • 1960s: ソ連民俗合唱団復興

派生・影響

ソ連大衆歌、ロシア・ロックのコメディ要素に流入。

音楽的特徴

楽器バヤン、バラライカ、声

リズム2/4の急速拍、4行スタンザ

代表アーティスト

  • Lidia Ruslanovaロシア · 1923年〜1973

代表曲

日本との関係

日本ではほぼ知られていない。『カリンカ』『バレンキ』といった一部の旋律は、国際的な民族舞踊やダンスナンバーの背景音楽として使われることがあるが、chastushkaの本質的なユーモアと社会性は理解されていない。

初めて聴くなら

Lidia Ruslanovaの1940年代の録音『Valenki』(ブーツについての風刺歌)。短く、意味が単純で、ユーモアが一線引きやすい。言葉が分からなくても、音の張り方から『笑い』が伝わる。集団で歌う版も聴くと、個人と集団の境界線が面白い。

豆知識

chastushkaの詩型は、ロシア文学の伝統的な4音脚韻の詩からは外れ、より口語的・俗語的。スターリン時代には、革命を賞賛するchastushkaが集団で歌わされる宣伝ツールになった。その反動として、冷戦後の西側でのロシア民族音楽ルネッサンスでも、chastushkaはやや『低い』ジャンルとして扱われている傾向がある。

影響・派生で結ばれたジャンル

ジャンル関係図1000年代1860年代チャストゥーシュカチャストゥーシュカブィリーナブィリーナ凡例派生影響同系統
凡例
派生影響同系統
チャストゥーシュカを中心とした近傍図。中心と直接結ばれるエッジが強調表示されます。

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同じ時期・同じ地域で生まれた他のジャンル

ロシア · 1860年前後 (±25年)

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