トゥヴァ喉歌
ロシア連邦トゥヴァ共和国の喉歌伝統。モンゴルと近縁。
どんな音か
喉の複数部分を同時に振動させ、2つ以上の音が同時に出る。基音とは別に倍音が分離して聴こえ、倍音を意図的に操作することで笛のような高音や歯擦音が浮かび上がる。馬のいななきや風の音に模倣した音色が、喉の中で静かに共鳴する。
生まれた背景
トゥヴァはロシア南部シベリアの山岳盆地。モンゴルと接し、遊牧民の馬乗り文化が基盤にある。馬に乗りながら、自然音(風、川、動物の鳴き声)を喉で再現することから発展したと伝えられている。孤立した遊牧社会で、楽器がない環境で声だけが芸術になった。
聴きどころ
基音と分離した倍音の存在。2つ目、3つ目の音がどこにあるのかを耳で追う。喉の中での共鳴が体の中から伝わってくる質感。笛のような高音が呼吸に合わせて流動する様子。
発展
1980年代後半に欧米のワールドミュージック界で発見され、Huun-Huur-Tu(フン・フール・トゥ)が国際的代表者となった。Sainkho Namtchylak のジャズ・現代音楽への展開、アルバート・クヴェジン(Yat-Kha)のロック融合など多様な発展を見せた。
出来事
- 1944年: トゥヴァのソ連編入。
- 1992年: Huun-Huur-Tu結成。
- 1992年: スミソニアン録音『Tuva: Voices from the Center of Asia』。
- 2001年: 映画『Genghis Blues』アカデミー賞ノミネート。
- 2009年: ホーミーがユネスコ無形文化遺産登録(モンゴル国名義)。
派生・影響
ワールドミュージック市場での倍音歌唱ブームを牽引し、現代音楽・ジャズ・ロックとの融合作品を多数生んだ。
音楽的特徴
楽器声、イギル(二弦擦弦)、ドシュプルール(リュート)、太鼓
リズム倍音歌唱の五大様式、無拍節と定拍の混在、馬の歩行リズム
代表アーティスト
- Huun-Huur-Tu
代表曲
Kongurey — Huun-Huur-Tu (1993)
日本との関係
1990年代後半のワールドミュージック・ブームで、Huun-Huur-Tuが日本でも紹介され、NHK『ラジオ深夜便』や民族音楽フェスで知られるようになった。しかし一般的な知名度は限定的。音響実験や瞑想音楽の愛好者に支持されている。
初めて聴くなら
Huun-Huur-Tuの『Kongurey』(1993年)。馬の足音を思わせるリズムの中で、喉から倍音が浮き上がる。夜、一人で静かに聴くと喉の中の別の世界が見える。
