フレヴォ
ブラジル北東部ペルナンブーコ州レシフェのカーニバルで踊られる、超高速の管楽器駆動ダンス音楽。
どんな音か
ブラジル北東部レシフェ(ペルナンブーコ州)のカーニバル音楽。テンポはおよそ1分間に150〜200拍と、ふつうの行進曲のほぼ倍の速さで突っ走る(拍子は2拍子=2/4)。中心になるのはトランペット、サックス、トロンボーン、テューバといったブラスバンド編成で、ここに打楽器(カイシャ=小太鼓、スルド=大太鼓、パンデイロ、そして特徴的なプラトス=シンバル)が加わり、ときにエレキギターやシンセも使われる。フレヴォには大きく3つの形がある。歌のない器楽の「フレヴォ・ジ・ルア(frevo de rua=「街のフレヴォ」)」、独唱が乗る「フレヴォ・カンサォン(=「歌のフレヴォ」)」、そして群衆の合唱が入る「フレヴォ・ジ・ブロコ(=祭の地区組『ブロコ』のフレヴォ)」だ。最後のブロコ型だけはブラスではなく、ギターやカヴァキーニョ、フルートなど弦と木管中心の編成に合唱が乗る、別系統の音である。歌詞ではカーニバルや街の祭り、自分たちの誇りといったテーマが歌われる。リズムは行進曲とサンバの中間にあり、踊り手(パシスタ)は小さな傘(ソンブリーニャ)を手に、躍動感のあるステップ「パッソ」を踊る。
生まれた背景
19世紀末のレシフェのカーニバルで、軍隊行進曲(マルシュやブラジル独自のドブラード)、マシシ(maxixe)、ポルカ、カドリーリャといった舞曲が、労働者階級や元奴隷層の祭の行列(コルドン)のなかで融合して成立した。当初は彼らの祭のための音楽だったが、やがてレシフェ全市のカーニバルの顔になった。ステップ「パッソ」のほうは、行列を守る格闘技カポエイラの動きから生まれている。20世紀前半には、ネルソン・フェレイラやカピーバ(Capiba)といった作曲家がブラスバンド向けの楽曲形式を確立した。1980年代以降は、アルセウ・ヴァレンサ(Alceu Valença)やアントニオ・ノブレガ(Antonio Nóbrega)がロックやポップと往復させ、ビッグバンドのスポッキ・フレヴォ・オルケストラ(Spok フレヴォ Orquestra)が編成を組み替えて再構築するなど、現代的な更新が続いている。2012年にユネスコ無形文化遺産に登録された。現在もレシフェ・カーニバル(2月)の中心音楽である。
聴きどころ
高音トランペットの鋭い刻みと低音テューバの応答が激しく掛け合う。息継ぎの隙もない速さのなかで、メロディは複雑に動きながらも少しも重くならず、驚くほど軽快に駆け抜ける。各セクションが短く区切られたフレーズを次々と受け渡すため、ひとつの旋律を長く保つことはほとんどない。トロンボーンが語尾にかける滑り(グリッサンド)も、ペルナンブーコ流の聴きどころだ。
発展
1907年に「フレヴォ」名称が確立し、20世紀後半のレヴィノ・フェレイラ、フォロ・デ・スペシャイス、スペック・ジ・フレヴォが世代を作った。2012年にユネスコ無形文化遺産登録。
出来事
- 1907: 「フレヴォ」名称確立
- 1930: 商業録音化
- 1985: ペルナンブーコ州芸術文化政策
- 2012: ユネスコ無形文化遺産登録
派生・影響
マラカトゥ、サンバ、ブラジル・ジャズと交差。
音楽的特徴
楽器クラリネット、サックス、トロンボーン、トランペット、スネア、ベース
リズム超高速2/4軍楽隊行進、傘踊り、曲芸ステップ
代表アーティスト
- Alceu Valença
- Lenine
- Spok Frevo Orquestra
代表曲
- Frevo Mulher — Alceu Valença (1979)
- Voltei Recife — Alceu Valença (1980)
- Vassourinhas — Spok Frevo Orquestra (2003)
- Hora do Frevo — Spok Frevo Orquestra (2007)
Acima do Sol — Lenine (1999)
日本との関係
初めて聴くなら
まずはカピーバ(Capiba)の「Madeira que cupim não rói」(=白蟻も齧らぬ堅木)。揺るがぬ愛を銘木に喩えた、合唱付きの叙情的なフレヴォ・ジ・ブロコ(歌入りのサブタイプ)で、この音楽の歌物としての顔が分かる。器楽ブラスの疾走を体感するなら、現代ビッグバンドのスポッキ・フレヴォ・オルケストラ『Passo de Anjo』(2008)へ。さらにポップ寄りの音なら、アルセウ・ヴァレンサ『Anunciação』(1983)。この順に聴けば、歌物から器楽の超高速、そしてポップ化までの幅が一度に分かる。ただしこの音楽の本来の姿は、レシフェ・カーニバル(毎年2月)の映像でこそ見えてくる。
