チェコ伝統音楽
ボヘミア・モラヴィアの民俗音楽。
どんな音か
チェコ伝統音楽の音は、アコーディオンや金管楽器が中心の賑やかさと、バグパイプ(ドゥーデ)やフィドルが奏でる素朴さが同居している。西ボヘミアの民俗舞踊曲はポルカが代表格で、2拍子で軽快に跳ね、踊り手の足が床を叩く音が「拍」として機能する。東のモラヴィア地方(南モラヴィア・ヴァラスコ地方)では声の比重が大きくなり、複声部の民謡が特徴的だ。ヤロミール・ヴェイヴォダの『ビール樽ポルカ』は世界中に知られた曲だが、あれはチェコ民謡の軽快な側面の最も普及した例に過ぎず、実際の伝統音楽はより多様で地域差が大きい。Hradišťanのモラヴィア民謡合唱は、土地の言語と旋律が密着した声の使い方が特徴で、ポップな明るさとはやや異なる重みがある。
生まれた背景
ボヘミアとモラヴィアの民俗音楽は、19世紀のチェコ民族覚醒運動(ナショナル・リヴァイヴァル)と深く結びついた。オーストリア・ハプスブルク支配下で民族的アイデンティティを音楽に託す動きが強まり、スメタナ(1824〜1884年)が交響詩『わが祖国』でボヘミアの風景と伝説を管弦楽に昇華し、ドヴォルザーク(1841〜1904年)が民謡旋律の語法を古典派の形式に組み込んだ。この二人の「古典化」によってチェコ民俗音楽は国際的に認識されるようになったが、農村では学術的な関心とは別に踊りと祭りの音楽が続いていた。ポルカは1830〜40年代にボヘミアから欧州全体へ急速に広まり、ダンスホール文化の中でチェコという名前を広めた。
聴きどころ
ポルカのリズムを聴くときは、強拍(1拍目)よりも「ズンパ」の「パ」(2拍目)の跳ね返りに注目すると、踊りの身体感覚が音楽から伝わってくる。Hradišťanの合唱録音では、モラヴィアの歌い方特有の「喉を緩めた地声」と西洋クラシックの発声の違いが聴き取れる。スメタナやドヴォルザークの管弦楽曲と並べて聴くと、農村音楽がいかに「整形」されて国民音楽になったかが見えてくる。
発展
Smetana『売られた花嫁』(1866)、Dvořák『スラヴ舞曲』(1878)で芸術音楽化。20世紀にはJaromír Vejvoda「Škoda lásky(ビヤ樽ポルカ)」で世界的ヒット。
出来事
- 1866: Smetana『売られた花嫁』
- 1934: 「Škoda lásky」発表
- 1948: Hradišťan結成
派生・影響
Polka、Bohemian Brass、アメリカン・ポルカへの伝播。
音楽的特徴
楽器アコーディオン、フィドル、ツィンバロム、ブラスバンド、声
リズムボヘミアPolka・Furiant、モラヴィア変則拍
代表アーティスト
- Jaromír Vejvoda
- Hradišťan
代表曲
Vlasta Polka — Hradišťan (1980)
