チャチャチャ
1953年キューバの作曲家エンリケ・ホリンがダンソン・マンボから派生させた、踊り手のステップ音「チャ・チャ・チャ」を音楽に取り込んだダンス・ジャンル。
どんな音か
キューバの古いダンス音楽ダンソンから生まれたダンソン・マンボ(ダンソンとマンボの橋渡しとなった一形態)を土台に、1950年代に独立したダンス音楽。速すぎず踊りやすい4拍子(1分間に110〜130拍)で進む。フルートとバイオリンを中心とするキューバの楽団編成「チャランガ」で演奏され、旋律はバイオリンとフルートが受け持ち、その下をピアノとコントラバスが支え、ティンバレス・コンガ・グィロ(ひょうたんの表面を擦って音を出す打楽器)といった打楽器がリズムを刻む。マンボの複雑な刻みを単純にし、誰でも踊れるようにしたのが特徴で、ゆっくり2歩、続けて素早い3歩(チャ・チャ・チャ)を踏む2人組ダンスだ。この素早い3歩で踊り手の足が「チャ・チャ・チャ」と音を立てることが、名前の由来になった。歌詞はスペイン語で恋や踊り、街の情景を歌うが、歌の比重は軽く、器楽中心の曲も多い。
生まれた背景
1951年、キューバのバイオリニストで作曲家のエンリケ・ホリーン(Enrique Jorrín)が、自身も在籍したオルケスタ・アメリカ合衆国(Orquesta América)のために『La Engañadora』を書いたのが起点とされる。ホリーンは、マンボの複雑なリズムを踊りこなせない一般の客のために、もっと単純で覚えやすいステップの曲を作った。同曲は1953年3月に録音・発表され、チャチャチャ最初のヒットとなる。1950年代後半には世界規模で大流行し、アメリカ合衆国・欧州のダンスホール・ブームの中心ジャンルになった。アメリカ合衆国では英語詞のカバーがラジオで流れたことも普及を後押しした。1960年代にはサルサに人気を奪われたが、ラテン・ダンス教室では今も入門の定番として生き残っている。キューバ本流を最も洗練させたのはチャチャチャ専門のチャランガ楽団オルケスタ・アラゴン(Orquesta Aragón)で、アメリカ合衆国ではニューヨークのラテン勢を率いたティト・プエンテ(Tito Puente)が広めた代表的バンドリーダーの一人となった(プエンテは1950年代後半にチャチャチャをビッグバンドへ融合させた)。
聴きどころ
まず、ゆっくり2歩のあとに続く素早い3歩(チャ・チャ・チャ)の感覚に注目したい。木製フルートの細かい節回しは、キーの少ない古いタイプ独特の音色が聴きどころだ。複数のバイオリンが同じ旋律を重ねて弾くユニゾンの厚みも味わいたい。伴奏ではピアノが短いフレーズを繰り返すモントゥーノを刻み、曲の途中で歌い手が「チャ・チャ・チャ!」と叫ぶ瞬間も聴き逃せない。
発展
1950年代にティト・プエンテ、ティト・ロドリゲス、オルケスタ・アラゴンが普及させ、ボサ・ノバ前のラテン米メインストリーム代表となった。革命後のキューバでも国民舞踊の一つとして残り、サルサ・チャランガにも継承された。
出来事
- 1951: ホリン「ラ・エングニャドーラ」
- 1953: 「チャチャチャ」名称確立
- 1955: 米国ビルボード進出
- 1960s: 革命後もキューバ国民舞踊
派生・影響
ダンソン・マンボから派生してチャチャチャが成立。サルサ、ラテン・ジャズと交差。
音楽的特徴
楽器フルート、ヴァイオリン群、ピアノ、ベース、ティンバレス、コンガ、声
リズム中速2-3クラベ、4-4-1-2-3ステップ、足音と楽音の同期
リズムを聴く
このジャンルを特徴づける代表的なリズムパターン。再生ボタンでループ再生し、下のリズム譜で今どの拍が鳴っているかを確認できます。
代表アーティスト
- Orquesta Aragón
- Enrique Jorrín
代表曲
- La Engañadora — Enrique Jorrín (1953)
- El Bodeguero — Orquesta Aragón (1956)
- Tres Lindas Cubanas — Orquesta Aragón (1956)
Cuando el Sol Caliente — Orquesta Aragón (1957)
Cha Cha Cha de los Pollos — Enrique Jorrín (1955)
