アルジェリア・シャアビ
アルジェ旧市街カスバで育った都市民衆古典。アンダルス系ガルナーティの旋律を、酒場や祝宴の歌として親しみやすく編み直した。
どんな音か
アルジェリア・シャアビは、マンドールやヴァイオリン、打楽器に乗せて、長い詩を節回し豊かに歌う都市の音楽。声は鼻腔に響き、旋律は細かく揺れ、合いの手や手拍子が入るとカスバの祝宴の空気が立つ。アンダルス古典の品格を残しながら、より庶民の言葉と生活感に近い。Dahmane El Harrachiの「Ya Rayah」では、移民の寂しさが覚えやすい旋律に乗って広がる。
生まれた背景
20世紀初頭のアルジェ旧市街で、El Hadj M'Hamed El Ankaがガルナーティなどの古典的な素材を民衆向けに再構成したことが大きい。フランス植民地下の都市、カフェ、結婚式、ラジオがこの音楽を育てた。アラブ、アマジグ、アンダルスの記憶が重なり、独立前後のアルジェリア人の生活感とも結びついた。
聴きどころ
まず歌の語尾の装飾を聴くとよい。一音をまっすぐ伸ばさず、細かく震わせて言葉を濃くする。打楽器は派手に前へ出るより、詩の足取りを支える。長い曲では、前奏から歌に入るまでの間、旋律が少しずつ熱を帯びる過程が味わいになる。
発展
1950年代の独立闘争期に革命の文化的支柱となり、独立後はアマール・エザヒ、ダフマーヌ・エル・ハラチ、ブージュメ・グランディジを経て継承された。1990年代の内戦でも家庭文化として生き続け、現代のヒップホップやライ・シャアビとの接続も進む。
出来事
- 1926: アル・アンカが初期録音
- 1932: カイロ・アラブ音楽会議
- 1962: アルジェリア独立
- 1979: アル・アンカ追悼コンサート
派生・影響
ガルナーティ、ライ、現代マグレブ・ポップ、フレンチ・アラブ・ヒップホップと交差。
音楽的特徴
楽器マンドール、ウード、ヴァイオリン、ダルブッカ、ベンディール、ピアノ、声
リズムガルナーティ系拍子、メリスマ、シャアビ・ループ
代表アーティスト
- El Hadj M'Hamed El Anka
- Dahmane El Harrachi
代表曲
El Hamdou Lillah — El Hadj M'Hamed El Anka (1953)- Ya Rayah — Dahmane El Harrachi (1973)
Bekri Rabi — El Hadj M'Hamed El Anka (1960)
El Hamdoulillah — El Hadj M'Hamed El Anka (1965)
Soubhane Allah Ya Latif — El Hadj M'Hamed El Anka (1970)
日本との関係
初めて聴くなら
入口は「Ya Rayah — Dahmane El Harrachi (1973)」。旋律が分かりやすく、旅立つ人への言葉が胸に残る。古典寄りの風格を知るなら「El Hamdou Lillah — El Hadj M'Hamed El Anka (1953)」や「Soubhane Allah Ya Latif — El Hadj M'Hamed El Anka (1970)」を続けて聴きたい。
豆知識
Chaâbiは民衆の、庶民のという意味を持つ。エジプトのシャアビーとは名前の意味は近いが、アルジェリアではカスバの詩歌とアンダルス古典の影を持つ都市音楽として発展した。
影響・派生で結ばれたジャンル
同じ時期・同じ地域で生まれた他のジャンル
- 伝統・民族カビル音楽
