伝統・民族

ライ

Raï

アルジェリア / 北アフリカ · 1920年〜

1920年代以降にアルジェリア西部で発展し、80年代にエレクトリック化したアラブ系大衆音楽。

どんな音か

アルジェリア西部オラン発祥のポピュラー音楽。BPM 100〜150。シンセサイザー、ドラムマシン、エレキ・ギター、エレキ・ベース、エレキ・キーボード。歌は男女両方、ガトレ(熱狂的な歌唱、メリスマ多用)、アラビア語(マグレブ・ダリージャ訛り)で歌う。歌詞はテーマが多様、恋愛、酒、自由、社会批判、政治、性、宗教批判。録音は中音域(キーボード、ヴォーカル)を強調、低音は控えめ。

生まれた背景

20世紀前半のアルジェリア西部オランで、地元の伝統的な「Bedoui」(田舎の歌唱)から発展。当初は娼館・酒場の音楽で、社会的に蔑視されていた。1970年代に若い世代(「Cheb」=若者の意)が伝統を電子化、ChebKhaled、Chaba Fadela、Cheb Mami、Cheb Hasniらが「ライ」(自由、解放の意)として再生。1980年代後半〜90年代に世界規模で大流行、Khaled『Didi』(1992、世界的ヒット)、『Aïcha』(1996)が代表。フランスに移民した若い世代の音楽として、欧州・北アフリカ・中東で主流の地位を獲得。1990年代の内戦中、Cheb Hasniが暗殺されるなど、ライは政治的に不安定な状況の中で発展した。

聴きどころ

シンセサイザーとドラムマシンの組み合わせが生み出す、伝統と現代性の独特の温度感。ヴォーカルの「ガトレ」(高音域での絞り出し、メリスマ)が最大の聴きどころ。Cheb Khaledの声は世界的にも特異な存在感を持つ。歌詞のアラビア語マグレブ訛り(フランス語混じり)。

代表アーティスト

  • Cheb Khaledアルジェリア · 1974年〜
  • Rachid Tahaアルジェリア · 1981年〜2018
  • Cheb Mamiアルジェリア · 1982年〜

代表曲

日本との関係

1990年代後半にKhaledの楽曲が日本でも紹介された。Cheb MamiはStingの『Desert Rose』(1999)で世界的に知名度を獲得、日本でもこの曲を介してライに触れた人も多い。日本でのライシーンは限定的だが、世界音楽愛好者の間で支持される。

初めて聴くなら

1曲だけ聴くなら、Khaled『Didi』(1992)。ライの世界化を象徴する曲。続けて、Khaled『Aïcha』(1996)、Cheb Mami(with Sting)『Desert Rose』(1999)、Rachid Taha『Ya Rayah』(1997、Dahmane El Harrachi原曲のカバー)。

豆知識

ライ」はアラビア語で「意見、見解」または「自由」を意味する。歌の中で「Ya ライ!(ああ自由よ!)」と歌い手が叫ぶ慣習から、ジャンル名として定着した。1994年9月、Cheb Hasni(オランの若手スター)が29歳で過激派により暗殺された。彼の死はライ世界に大きな衝撃を与え、多くのアーティストがフランスに亡命する契機となった。

影響・派生で結ばれたジャンル

ジャンル関係図1700年代1920年代1970年代ライライグナワグナワアルジェリア・シャアビアルジェリア・シャアビアラブポップアラブポップ凡例派生影響同系統
凡例
派生影響同系統
ライを中心とした近傍図。中心と直接結ばれるエッジが強調表示されます。

ライ の系譜全体図(多段)を見る

同じ時期・同じ地域で生まれた他のジャンル

アルジェリア · 1920年前後 (±25年)

ジャンル一覧へ戻る