伝統・民族

カビル音楽

Kabyle Music

アルジェリア / 北アフリカ · 1930年〜

アルジェリア北部カビル地方のアマジグ系カビル人による独自言語タカビリト・カビル語の歌で、政治・郷愁・抒情を高度な詩で歌う。

どんな音か

カビル語(タカビリト)で歌われる声楽が中心で、ギター(スパニッシュ型のアコースティックギター)が伴奏する。フランス占領期以降に西洋の弦楽が入り込んだため、音階はベルベル系の音楽らしいまっすぐな旋律線に西洋コード進行が組み合わさった独特の混合形式になっている。声は前に出て、鼻腔に抜ける明るい響きを持つ。歌詞の詩的水準が非常に高く、郷愁・亡命・政治抵抗・男女の愛をテーマにしている。イディルの『A Vava Inouva』(1976年)はその象徴で、ギターのアルペジオと澄んだ声だけで成立するシンプルな美しさがある。

生まれた背景

カビリア地方はアルジェリア北部の山岳地帯で、フランス植民地期(1830〜1962年)に激しい抵抗運動の拠点となった。カビル人はアラブ系ではなくアマジグ(ベルベル)系で、アラビア語ではなくカビル語を母語とする。独立後のアルジェリア政府がアラブ化政策を進める中で、カビル語と文化は抑圧され、多くの歌手がフランスへ亡命した。イディルは1973年にパリで録音した『A Vava Inouva』が世界的なヒットとなり、カビル音楽を国際市場に初めて届けた。マトゥブ・ルネスは1998年に何者かに暗殺された。

聴きどころ

イディルの声の「素直さ」に耳を傾ける。装飾や過剰なビブラートがなく、メロディーがまっすぐ前に進む。ギターのコードが西洋的なのに、旋律がどこか西洋では聴かない音の動きをすることがある——そこがベルベルの音感が残っている部分だ。マトゥブの曲では政治的緊張感が声の張り方に出ており、イディルとは異なる空気がある。

発展

1990年代の内戦期にもカビル音楽は反テロ・人権の声として機能し、アイドル・アマジグ・カベール、イディル(国際スター)らが世代を更新した。海外移民2世のラ・カウサ・カバイル、ティタウィンも近年の重要な担い手。

出来事

  • 1936: シェイク・エル・ハスナウィパリ録音
  • 1980: ベルベル春闘
  • 1998: マトゥブ・ルウネス暗殺
  • 2002: アマジグ語公用語化

派生・影響

シャンソン、シャアビ、欧州フォーク、現代ワールドポップと交差。

音楽的特徴

楽器ウード、アコースティックギター、声

リズム緩やかな2/4と6/8、叙情詩、メリスマ

代表アーティスト

  • Idirアルジェリア · 1973年〜2020
  • Matoub Lounèsアルジェリア · 1978年〜1998

代表曲

日本との関係

日本での知名度はほぼない。アルジェリア音楽全般の認知が低く、カビル音楽に至っては研究者以外に情報が届くことは稀だ。フランス語圏の音楽に関心を持つリスナーが、イディルをワールドミュージックの文脈で発見することがある程度。

初めて聴くなら

イディルの『A Vava Inouva』(1976年)を静かに聴く。父と娘の対話を詩にした歌詞(カビル語)で、意味が分からなくても声とギターの感触だけで十分伝わる。

豆知識

『A Vava Inouva』は1976年にフランスのラジオで放送されると、郷愁を刺激する曲として北アフリカ移民のコミュニティで爆発的に広まり、イディルを一躍有名にした。「A Vava」はカビル語で「お父さん」を意味する呼びかけ語で、歌詞全体が家族の会話形式になっている。

影響・派生で結ばれたジャンル

ジャンル関係図-500年代1930年代カビル音楽カビル音楽アマジグ音楽アマジグ音楽凡例派生影響同系統
凡例
派生影響同系統
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アルジェリア · 1930年前後 (±25年)

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