カビル音楽
アルジェリア北部カビル地方のアマジグ系カビル人による独自言語タカビリト・カビル語の歌で、政治・郷愁・抒情を高度な詩で歌う。
まずはここから
ひとことで言うとアルジェリア北部カビル地方のアマジグ系カビル人による独自言語タカビリト・カビル語の歌で、政治・郷愁・抒情を高度な詩で歌う。
まずはこの曲からIdir — A Vava Inouva ▶ YouTube
代表的な人Idir
どんな音か
カビル語(タカビリト)で歌われる声楽が中心で、ギター(スパニッシュ型のアコースティックギター)が伴奏する。フランス占領期以降に西洋の弦楽が入り込んだため、音階はベルベル系の音楽らしいまっすぐな旋律線に西洋コード進行が組み合わさった独特の混合形式になっている。声は前に出て、鼻腔に抜ける明るい響きを持つ。歌詞の詩的水準が非常に高く、郷愁・亡命・政治抵抗・男女の愛をテーマにしている。イディルの『A Vava Inouva』(1976年)はその象徴で、ギターのアルペジオと澄んだ声だけで成立するシンプルな美しさがある。
聴きどころ
イディルの声の「素直さ」に耳を傾ける。装飾や過剰なビブラートがなく、メロディーがまっすぐ前に進む。ギターのコードが西洋的なのに、旋律がどこか西洋では聴かない音の動きをすることがある——そこがベルベルの音感が残っている部分だ。マトゥブの曲では政治的緊張感が声の張り方に出ており、イディルとは異なる空気がある。
初めて聴くなら
イディルの『A Vava Inouva』(1976年)を静かに聴く。父と娘の対話を詩にした歌詞(カビル語)で、意味が分からなくても声とギターの感触だけで十分伝わる。
代表アーティスト
- Idir
- Matoub Lounès
代表曲
- Idir — A Vava Inouva (1976)
- Matoub Lounès — Lettre Ouverte (1998)
- Matoub Lounès — Tahya Algeria (1996)
もっと見る(あと2件)
- Idir — Tahya Bladi (2007)
- Matoub Lounès — Tabratt I Lhakem (1989)
生まれた背景
カビリア地方はアルジェリア北部の山岳地帯で、フランス植民地期(1830〜1962年)に激しい抵抗運動の拠点となった。カビル人はアラブ系ではなくアマジグ(ベルベル)系で、アラビア語ではなくカビル語を母語とする。
音楽的特徴の詳細
楽器ウード、アコースティックギター、声
リズム緩やかな2/4と6/8、叙情詩、メリスマ
発展
1990年代の内戦期にもカビル音楽は反テロ・人権の声として機能し、アイドル・アマジグ・カベール、イディル(国際スター)らが世代を更新した。海外移民2世のラ・カウサ・カバイル、ティタウィンも近年の重要な担い手。
出来事
- 1936: シェイク・エル・ハスナウィパリ録音
- 1980: ベルベル春闘
- 1998: マトゥブ・ルウネス暗殺
- 2002: アマジグ語公用語化
派生・影響
シャンソン、シャアビ、欧州フォーク、現代ワールドポップと交差。
日本との関係
豆知識
『A Vava Inouva』は1976年にフランスのラジオで放送されると、郷愁を刺激する曲として北アフリカ移民のコミュニティで爆発的に広まり、イディルを一躍有名にした。「A Vava」はカビル語で「お父さん」を意味する呼びかけ語で、歌詞全体が家族の会話形式になっている。
影響・派生で結ばれたジャンル
系譜図を見る
感触が近い系譜も地域も違うのに、聴くと通じるジャンル
カビル音楽が好きな人は、この6つも刺さる可能性が高いです。系譜図には出てこない、意外な隣人たち。
関連ジャンルを探す
- 伝統・民族フラメンコ・トケ
- 伝統・民族フラメンコ・バイレ
- 伝統・民族フラメンコ・カンテ
- 古典オペラ・ブッファ
- 宗教・霊歌セマ(メヴレヴィー旋舞)
- 宗教・霊歌アザーン(礼拝の呼び声)
- ヒップホップ・R&Bミズラヒ・トラップ
- ポップアッシリア・ポップ
- 伝統・民族アルジェリア・シャアビ
- 伝統・民族ライ
