伝統・民族

ホーミー

Khoomei

モンゴル / 中央アジア · 1000年〜

別名: Mongolian Throat Singing / хөөмий

モンゴルの喉歌。一人で同時に複数の音を出す倍音歌唱。

どんな音か

ホーミーは一人の声が同時に二つ以上の音を出す倍音歌唱だ。低い基音(ドローン)を喉で出しながら、口の形や舌の位置を変えて特定の倍音だけを強調する。基音が「ウーン」と鳴り続ける中で、高音の「ヒュイーン」という笛のような音が旋律を奏でる。これが一人の人間の声から出ているとは最初は信じがたい音響だ。スタイルによって喉の締め方、音の質感(チェストからホーミー、ハルガーなど)、基音の高さが異なる。

生まれた背景

ホーミーはモンゴル、トゥヴァ(ロシア連邦内の共和国)、バシコルトスタンなど中央アジア草原地帯に広く分布し、各地域で固有の様式が発展した。自然音(川の流れ、風、鳥の声)を模倣する起源があるとも言われるが確証はない。ソ連時代にトゥヴァのフーン・フール・トゥーが国際的に紹介し、1990年代以降に世界的な注目を集めた。モンゴルのバンドThe Huはホーミーヘヴィメタルを組み合わせて2018年以降に爆発的な人気を得た。

聴きどころ

まず低い基音(ドローン)だけを追う。それが鳴り続けていることを確認したら、その上に乗っている高音の旋律音を聴き取る。「これは一人の声か、二人か」を確かめながら聴くと、倍音歌唱の仕組みが体感できる。The Huの『Wolf Totem』(2018年)は電気楽器と組み合わせているので、ホーミーの音だけを探すゲームとして聴ける。

発展

20世紀後半、Sundui・Tserendavaa らが舞台演奏家として国際的注目を集め、トゥヴァ共和国のフン・フール・トゥら隣接地域の喉歌奏者と並んで世界に知られた。1990年代以降、AnDa Union・Khusugtun・The Hu などが喉歌をロック・ポップ・現代音楽に応用している。

出来事

  • 古代: アルタイ系遊牧民で発達。
  • 1960年代: 国営モンゴル放送局による録音。
  • 1992年: コンソート『Tuva: Voices from the Center of Asia』。
  • 2009年: ユネスコ無形文化遺産代表一覧表に登録。
  • 2018年: The Hu結成、世界的ヒット。

派生・影響

トゥヴァ喉歌・アルタイ喉歌・新疆喉歌など類縁伝統と並び、現代モンゴル・ロック(The Hu)、世界のオーバートーン・シンギング運動にも影響を与えた。

音楽的特徴

楽器声(無伴奏または馬頭琴伴奏)

リズム持続低音と倍音旋律の同時発声、ハルヒラー・シングルテルなど様式別、自由律

代表アーティスト

  • Huun-Huur-Tuロシア · 1992年〜
  • AnDa Union中国 · 2001年〜
  • Khusugtunモンゴル · 2009年〜
  • The Huモンゴル · 2016年〜

代表曲

日本との関係

日本のモンゴル音楽ファン(特に馬頭琴に関心を持つ層)がホーミーを知っている。モンゴル相撲の人気選手が来日した際に倍音歌唱が紹介されることもある。The Huのヘヴィメタルとの組み合わせはアニメ・ゲーム音楽のリスナー層にも届いており、日本でのメタル文脈での認知が高まっている。

初めて聴くなら

まずThe Huの『Wolf Totem』(2018年)で電気的に増幅されたホーミーを聴く。次にフーン・フール・トゥーやAnDa Unionのアコースティックな録音で草原の空気感のあるホーミーを聴く。二種類を比べると、音の本質と演出の違いが分かる。

豆知識

2009年にユネスコはモンゴルのホーミーを無形文化遺産に登録した。トゥヴァのホーミー奏者リチャード・ファインマン(物理学者)が晩年にトゥヴァ共和国への旅を夢見たエピソードが、倍音歌唱への欧米での関心を広めるきっかけのひとつになったと言われている。

影響・派生で結ばれたジャンル

ジャンル関係図1000年代1200年代ホーミーホーミートゥヴァ喉歌トゥヴァ喉歌馬頭琴馬頭琴凡例派生影響同系統
凡例
派生影響同系統
ホーミーを中心とした近傍図。中心と直接結ばれるエッジが強調表示されます。

ホーミー の系譜全体図(多段)を見る

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