伝統・民族

チベット民謡

Tibetan Folk Songs

ラサ / 中国 / ヒマラヤ · 700年〜

別名: Bod kyi glu shags

チベット高原の労働・祝祭・恋愛を歌う民謡群。

どんな音か

チベット民謡は、高い音域の声と、開放的な発声が特徴。声は力強く、ビブラートは控えめ。リズムは比較的単純で、歌詞の内容に合わせた叙述的な音楽構成になっていることが多い。伝統的には楽器を伴わないことが多いが、現代の録音ではギターやハーモニウムが加わることもある。音色全体として、チベット高原の乾いた風景と、その雄大さが音として表現されている。

生まれた背景

チベット民謡は、高原の労働(牧畜、農業)、祝祭、恋愛を題材にしている。中国のチベット地区と、チベット亡命コミュニティによって、異なるスタイルが発展している。20世紀後半のチベット文化ルネッサンスの中で、この民謡は民族アイデンティティの重要な表現手段として再評価された。ただし、政治的な制限下での文化表現という複雑性も、チベット民謡の現在を特徴づけている。

聴きどころ

チベット高原の言語(チベット語)の音韻が、旋律にもたらす影響を聴き分けること。労働歌、祝祭歌、恋愛歌などの異なるジャンルでの音の質感の違いに注目。声の強さと、その背後にある精神状態を感じ取ることが重要。

発展

20世紀後半、亡命チベット人コミュニティ(ダラムサラ)と中国国内のチベット族双方で独自の発展を見せた。才旦卓瑪(才旦卓玛)『北京の金山上』(1961年)が中国全土に広まり、近年はコンチョク・ツェテンら民間の若手歌手も活躍する。

出来事

  • 8世紀: 吐蕃王朝期の宮廷歌曲記録。
  • 1959年: チベット動乱と亡命コミュニティ形成。
  • 1961年: 才旦卓瑪『北京の金山上』。
  • 2006年: 多数のチベット民俗芸能が国家級無形文化遺産指定。
  • 2009年: ゲサル王叙事詩がユネスコ無形文化遺産登録。

派生・影響

現代チベット・ポップ、ヒマラヤ仏教圏(ブータン・ラダック)の民謡との比較対象となる。

音楽的特徴

楽器ダムニェン(六弦琴)、ピワン(擦弦)、笛、太鼓、声

リズム高音域、ナンマ・ドゥシェなどジャンル別のリズム型、ゲサル王伝の語り

代表アーティスト

  • 才旦卓瑪中国 · 1957年〜

代表曲

日本との関係

チベット民謡日本では限定的な認知に留まっているが、チベット文化への関心層では知られている。また、青海・チベット地域の音楽に関心を持つ研究者の間では、言及されることもある。

初めて聴くなら

才旦卓瑪『ラサの夜空』(1961年)。この古い録音は、チベット民謡の本質を直接的に伝えるもので、高地の風景と民族的精神が最も結晶化されている。夜間に、瞑想的な状態で聴くことが推奨される。

豆知識

才旦卓瑪はチベット民謡の伝承者として国内的には知られているが、国際的な知名度は限定的。彼女の音楽は、チベット文化の『公式的』認知と、『地下的』抵抗の間の矛盾を体現している。同じ民謡が、政治的な文脈によって、異なる意味を持つ可能性を示すケースとして、重要である。

影響・派生で結ばれたジャンル

ジャンル関係図700年代1430年代1600年代1650年代チベット民謡チベット民謡ラモラモシェルパ民謡シェルパ民謡ズンドラズンドラ凡例派生影響同系統
凡例
派生影響同系統
チベット民謡を中心とした近傍図。中心と直接結ばれるエッジが強調表示されます。

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同じ時期・同じ地域で生まれた他のジャンル

中国 · 700年前後 (±25年)

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