古典

琵琶曲

Pipa Repertoire

中国 / 東アジア · 700年〜

別名: 中国琵琶

梨形の四弦撥弦楽器、琵琶のための古典器楽。

どんな音か

梨型の木製胴に4本の弦(ナイロンまたは鉄弦)を張り、右手の爪(つけ爪または素爪)で弾く。音の輪郭がはっきりした単音の弾弦と、全弦を一度に掻き鳴らす「扫弦(サオシェン)」の対比が大きく、ダイナミックなレンジが広い。「十面埋伏(十面に伏兵を設ける)」は楚漢戦争の戦場を描いた武曲で、軍の行進を表す均等なリズム、突撃を描く速い単音の連打、乱戦を表す全弦の掻き鳴らしと場面ごとに演奏技法が切り替わる。対して「文曲」と呼ばれる叙情的な曲では1音1音の微妙な音量と音色の変化が前面に出る。

生まれた背景

琵琶はシルクロードを経由して中央アジアから中国へ入った楽器で、原型は4〜5世紀頃の「五弦琵琶」とされる。唐代(618〜907年)に宮廷音楽の中心楽器として最盛期を迎え、日本にも正倉院に保管された唐琵琶(現在の琵琶の祖型)として伝わった。明清代に現在の4弦形式が定着し、武曲と文曲の二系統のレパートリーが整理された。20世紀には劉徳海と呉蛮が現代的な演奏技法と委嘱作品の初演を通じて琵琶の音楽的可能性を拡張した。

聴きどころ

呉蛮の「十面埋伏」(1995)で、最初の緩やかな序奏が終わり、軍が動き始める場面へ移行するとき、リズムがどう変化するかを耳で追ってほしい。次に中盤の「乱戦」の部分で掻き鳴らしの音量と速度がピークに達する瞬間があり——これは打楽器なしで1台の弦楽器がここまでの迫力を出せるかという驚きがある。

発展

20世紀には劉天華・林石城らが琵琶の現代化と作品レパートリー拡張を推進し、武曲『十面埋伏』が国際的代表曲となった。1973年、呉祖強・劉徳海らによる琵琶協奏曲『草原小姉妹』が西洋オーケストラとの協奏ジャンルを確立した。現代は呉蛮らが国際的に活動する。

出来事

  • 唐代: 西域から琵琶伝来。
  • 1819年: 華氏『琵琶譜』編纂。
  • 1932年: 劉天華『歌舞引』など現代琵琶曲。
  • 1973年: 琵琶協奏曲『草原小姉妹』初演。
  • 2008年: 国家級無形文化遺産指定。

派生・影響

中国伝統器楽の現代協奏曲化、ガオ・ホン・ウーマン・呉蛮らの欧米クラシック・ジャズ共演を生み、邦楽琵琶(日本)とも比較される。

音楽的特徴

楽器琵琶(四弦)

リズム輪指・搖指・推拉などの右手技、文曲・武曲の対比、自由律と定拍の併用

代表アーティスト

  • 劉徳海中国 · 1957年〜2020
  • 呉蛮中国 · 1985年〜

代表曲

日本との関係

日本の琵琶(薩摩琵琶・筑前琵琶)は琵琶曲と同じ起源を持つが、弦の数(4〜5弦)やフレット(柱)の高さ、奏法が大きく異なる。日本では琵琶は「盲人の音楽」(盲目の僧が平家物語を語るために使う楽器)という独自の発展を遂げた。武満徹が琵琶を現代音楽に取り込んだことで(「ノヴェンバー・ステップス」1967年)、日本では「現代音楽と伝統楽器の接点」として再評価された。

初めて聴くなら

呉蛮の「十面埋伏」(1995)を聴く。演奏時間は12分前後で、場面ごとに音楽の表情が劇的に変わるので飽きにくい。映像(国際的なコンサートの録画が存在する)と合わせて観ると、右手の爪の動きと音の関係が見えて理解が深まる。

豆知識

「十面埋伏」というタイトルは紀元前202年の垓下の戦いに由来し、劉邦が項羽を十面から包囲した「伏兵作戦」を指す。曲は清代(17〜18世紀)に成立したとされるが、現在演奏される版は近代以降の編曲が多く、「どれが原典か」を確定することは困難だ。

影響・派生で結ばれたジャンル

ジャンル関係図-500年代700年代1920年代琵琶曲琵琶曲古琴古琴二胡曲二胡曲凡例派生影響同系統
凡例
派生影響同系統
琵琶曲を中心とした近傍図。中心と直接結ばれるエッジが強調表示されます。

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同じ時期・同じ地域で生まれた他のジャンル

中国 · 700年前後 (±25年)

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