琵琶曲
梨形の四弦撥弦楽器、琵琶のための古典器楽。
どんな音か
梨型の木製胴に4本の弦(ナイロンまたは鉄弦)を張り、右手の爪(つけ爪または素爪)で弾く。音の輪郭がはっきりした単音の弾弦と、全弦を一度に掻き鳴らす「扫弦(サオシェン)」の対比が大きく、ダイナミックなレンジが広い。「十面埋伏(十面に伏兵を設ける)」は楚漢戦争の戦場を描いた武曲で、軍の行進を表す均等なリズム、突撃を描く速い単音の連打、乱戦を表す全弦の掻き鳴らしと場面ごとに演奏技法が切り替わる。対して「文曲」と呼ばれる叙情的な曲では1音1音の微妙な音量と音色の変化が前面に出る。
生まれた背景
聴きどころ
呉蛮の「十面埋伏」(1995)で、最初の緩やかな序奏が終わり、軍が動き始める場面へ移行するとき、リズムがどう変化するかを耳で追ってほしい。次に中盤の「乱戦」の部分で掻き鳴らしの音量と速度がピークに達する瞬間があり——これは打楽器なしで1台の弦楽器がここまでの迫力を出せるかという驚きがある。
発展
20世紀には劉天華・林石城らが琵琶の現代化と作品レパートリー拡張を推進し、武曲『十面埋伏』が国際的代表曲となった。1973年、呉祖強・劉徳海らによる琵琶協奏曲『草原小姉妹』が西洋オーケストラとの協奏ジャンルを確立した。現代は呉蛮らが国際的に活動する。
出来事
- 唐代: 西域から琵琶伝来。
- 1819年: 華氏『琵琶譜』編纂。
- 1932年: 劉天華『歌舞引』など現代琵琶曲。
- 1973年: 琵琶協奏曲『草原小姉妹』初演。
- 2008年: 国家級無形文化遺産指定。
派生・影響
中国伝統器楽の現代協奏曲化、ガオ・ホン・ウーマン・呉蛮らの欧米クラシック・ジャズ共演を生み、邦楽琵琶(日本)とも比較される。
音楽的特徴
楽器琵琶(四弦)
リズム輪指・搖指・推拉などの右手技、文曲・武曲の対比、自由律と定拍の併用
代表アーティスト
- 劉徳海
- 呉蛮
代表曲
十面埋伏 — 呉蛮 (1995)
日本との関係
初めて聴くなら
呉蛮の「十面埋伏」(1995)を聴く。演奏時間は12分前後で、場面ごとに音楽の表情が劇的に変わるので飽きにくい。映像(国際的なコンサートの録画が存在する)と合わせて観ると、右手の爪の動きと音の関係が見えて理解が深まる。
豆知識
「十面埋伏」というタイトルは紀元前202年の垓下の戦いに由来し、劉邦が項羽を十面から包囲した「伏兵作戦」を指す。曲は清代(17〜18世紀)に成立したとされるが、現在演奏される版は近代以降の編曲が多く、「どれが原典か」を確定することは困難だ。
影響・派生で結ばれたジャンル
同じ時期・同じ地域で生まれた他のジャンル
- 伝統・民族チベット民謡
