ラモ
チベット仏教世界の伝統歌劇。仏教説話を歌と舞で演じる。
どんな音か
チベット語で歌われる歌詞が、時に高く鋭く、時にぶ厚い胸声で繰り出される。面をつけた登場人物たちが古典的な身振りで舞う。手太鼓や鉦(しょう)のようなパーカッションが単調なビートを刻み、歌い手の声がその上で旋律を描く。セリフと歌、楽器演奏が交錯し、全体としては冗長だが、その冗長さがストーリーの重みを引き出す。
生まれた背景
聴きどころ
音声だけで聴く場合は、歌唱者の声の音色変化に注目すること。感情が高ぶるたびに声質が変わり、同じ人物が異なる『顔』を持つように聞こえる。パーカッションは伴奏というより、舞台のテンポを統制する指揮者の役割を果たしているため、その抑揚の変化を捕捉すると、舞台のドラマティック・アーク(弧)が浮き出てくる。
発展
1959年のチベット動乱で大陸内では弾圧を受けたが、ダラムサラの亡命チベット芸術団(TIPA)が伝承を維持した。中国国内では1980年代以降に再興され、自治区蔵劇団が継承する。
出来事
- 15世紀: タントン・ギャルポの創始(伝)。
- 1700年代: ショトン祭での定例上演。
- 1959年: チベット動乱、TIPA設立。
- 1980年: 自治区蔵劇団再建。
- 2009年: ユネスコ無形文化遺産代表一覧表に登録。
派生・影響
ヒマラヤ仏教圏の儀礼舞踊チャム(羌姆)・ブータン王国の宗教舞踊との比較対象となる。
音楽的特徴
楽器太鼓、鈸、声、面・装束
リズム屋外円形舞台、仮面と装束、太鼓と鈸の二楽器伴奏、長時間連続上演
日本との関係
初めて聴くなら
民族音楽のドキュメンタリーや、ユネスコ無形文化遺産の動画サイトで、全シーン(導入から終幕)を30分程度で鑑賞することを勧める。音だけでなく面や衣装、舞台設営が一体で機能する芸術形式なので、映像なしには構造が理解しにくい。
豆知識
2009年にユネスコ無形文化遺産に登録。毎年夏の『ショートン祭り』ではラサの大昭寺周辺で公演され、日本の研究者も現地で視察することがある。一演目は往々にして3時間を超え、朝から夕方まで複数演目が連続で演じられることも。
