古典

ラモ

Lhamo (Tibetan Opera)

ラサ / 中国 / ヒマラヤ · 1430年〜

別名: Ache Lhamo / 藏戯

チベット仏教世界の伝統歌劇。仏教説話を歌と舞で演じる。

どんな音か

チベット語で歌われる歌詞が、時に高く鋭く、時にぶ厚い胸声で繰り出される。面をつけた登場人物たちが古典的な身振りで舞う。手太鼓や鉦(しょう)のようなパーカッションが単調なビートを刻み、歌い手の声がその上で旋律を描く。セリフと歌、楽器演奏が交錯し、全体としては冗長だが、その冗長さがストーリーの重みを引き出す。

生まれた背景

15世紀半ば、タンカン地域(現在のラサ西方)で、仏教の説法を民衆向けに劇化する動きから発生。イスラム世界の音楽劇とも、中国京劇とも異なる独自の形式。チベット仏教の信仰を基盤に、村落の祭礼や夏季フェスティバルで演じられ続けている。

聴きどころ

音声だけで聴く場合は、歌唱者の声の音色変化に注目すること。感情が高ぶるたびに声質が変わり、同じ人物が異なる『顔』を持つように聞こえる。パーカッションは伴奏というより、舞台のテンポを統制する指揮者の役割を果たしているため、その抑揚の変化を捕捉すると、舞台のドラマティック・アーク(弧)が浮き出てくる。

発展

1959年のチベット動乱で大陸内では弾圧を受けたが、ダラムサラの亡命チベット芸術団(TIPA)が伝承を維持した。中国国内では1980年代以降に再興され、自治区蔵劇団が継承する。

出来事

  • 15世紀: タントン・ギャルポの創始(伝)。
  • 1700年代: ショトン祭での定例上演。
  • 1959年: チベット動乱、TIPA設立。
  • 1980年: 自治区蔵劇団再建。
  • 2009年: ユネスコ無形文化遺産代表一覧表に登録。

派生・影響

ヒマラヤ仏教圏の儀礼舞踊チャム(羌姆)・ブータン王国の宗教舞踊との比較対象となる。

音楽的特徴

楽器太鼓、鈸、声、面・装束

リズム屋外円形舞台、仮面と装束、太鼓と鈸の二楽器伴奏、長時間連続上演

日本との関係

日本では民族音楽学の研究対象として知られるものの、一般的な認知度は非常に低い。チベット仏教への関心が高い層には知られ、アニメやドキュメンタリーで単発的に紹介されることがある。ただし日本の音楽教育や放送では中核的な位置づけにはない。

初めて聴くなら

民族音楽のドキュメンタリーや、ユネスコ無形文化遺産の動画サイトで、全シーン(導入から終幕)を30分程度で鑑賞することを勧める。音だけでなく面や衣装、舞台設営が一体で機能する芸術形式なので、映像なしには構造が理解しにくい。

豆知識

2009年にユネスコ無形文化遺産に登録。毎年夏の『ショートン祭り』ではラサの大昭寺周辺で公演され、日本の研究者も現地で視察することがある。一演目は往々にして3時間を超え、朝から夕方まで複数演目が連続で演じられることも。

影響・派生で結ばれたジャンル

ジャンル関係図700年代1430年代ラモラモチベット民謡チベット民謡凡例派生影響同系統
凡例
派生影響同系統
ラモを中心とした近傍図。中心と直接結ばれるエッジが強調表示されます。

ラモ の系譜全体図(多段)を見る

ジャンル一覧へ戻る