トゥムリー
ヒンドゥスターニー準古典声楽。恋愛と感情表現を主題とする。
どんな音か
インド古典声楽の準古典形式で、ヒンドゥスターニー音楽の体系に基づきながら、ラーガによる即興と、恋愛詩による感情表現が中心。テンポは中庸から速く、各句で微妙な音程変化(シュルティ)を含むメロディが展開される。ボーカルは、パッションを伴いながらも、音程の正確性を失わない。伴奏楽器(ハルモニウム、ターブラ、サロード等)は、ボーカルの時間軸に合わせて応答する。歌詞は、主に愛の苦しみ・喜び・相手への思いを詩的に表現。
生まれた背景
聴きどころ
ギリジャー・デーヴィーの『Babul Mora』では、母の家を離れて嫁ぐ若い女性の複雑な感情(喜びと悲しみ)が、声の張り方と音程の微妙な変化で表現される。ラーガ・カーヒ・ジョール・バイライヤという特定のラーガの選択は、この感情的テーマにぴったり合致している。ベーガム・アクターの格調高い歌唱と比較すると、thumriの『より個人的な』側面が明らかになる。
発展
20世紀には西ドゥルガーバーイー・パルワール・ガウハール・ジャーン・シッディーシュワリー・デーヴィー・ギリジャー・デーヴィー・ショーバー・グルトゥらの女性歌手が大成功を収めた。映画歌(ボリウッド)にもトゥムリー風が頻繁に取り入れられる。
出来事
- 1850年代: ワジド・アリー・シャー宮廷でのトゥムリー大成。
- 1902年: ガウハール・ジャーン世界初インド古典録音。
- 1965年: シッディーシュワリー・デーヴィーがパドマ・ブシャン受章。
- 1972年: 映画『パーキーザ』。
- 1998年: ギリジャー・デーヴィー死去で時代の終焉(2017年)。
派生・影響
ガザル・ホリー・カージリー・ダードラなどの準古典声楽との連続性を持ち、ボリウッド古典歌(『パーキーザ』『ウムラオ・ジャーン』)の基盤となった。
音楽的特徴
楽器声、ターンプラ、タブラ、ハルモニウム、サーランギー
リズムディープチャンディー(14拍)・ジャト(16拍)・ケヘルワー(8拍)、感情(バーヴァ)優先のラーガ展開
代表アーティスト
- ベーガム・アクタル
- ギリジャー・デーヴィー
- ショーバー・グルトゥ
代表曲
Babul Mora — ギリジャー・デーヴィー (1980)
日本との関係
初めて聴くなら
ギリジャー・デーヴィーの『Babul Mora』。1980年代の録音で、技術的に明瞭。恋愛詩と古典音楽の融合が感じられやすい。その後、ショーバー・グルトゥなど別の演奏家で、個人差を経験する。夕方の静かな時間に、リラックス状態で聴くことを勧める。
豆知識
thumriと古典形式khyalの違いについては、音楽学者の間でも議論がある。一般的には『thumriはより感情的、khyalはより理性的』と言われるが、実際には優れたthumri演奏者は高度な古典技法を使用する。20世紀後半から現代まで、thumriは映画音楽に押され、舞台での演奏機会が減少している。
影響・派生で結ばれたジャンル
同じ時期・同じ地域で生まれた他のジャンル
- 古典ティラーナ
