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宗教・霊歌

グナワ

Gnawa

モロッコ / 北アフリカ · 1700年〜

モロッコのスーフィー的儀式音楽。Guembri(リュート)と鉄製カスタネット(qraqeb)が特徴。

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ひとことで言うとモロッコのスーフィー的儀式音楽。Guembri(リュート)と鉄製カスタネット(qraqeb)が特徴。

まずはこの曲からNass El GhiwaneYa Sah ▶ YouTube

代表的な人Maâlem Mahmoud Guinia

どんな音か

グナワの音の核はゲンブリ(guembri、または sintir)と呼ばれる3弦の低音リュートだ。胴体は木で骨格を作り、ラクダや牛の皮を張った独特の共鳴体を持ち、弾いた音は乾いてピシャリとした質感——ウッドベースとも違う、地面に吸い込まれるような低音が出る。これにカラカブ(qraqeb、鉄製の大型カスタネット)の金属音が絡む。カラカブはひとつの奏者が両手に二枚ずつ持って激しくぶつけ合い、高音のカシャカシャした響きが洞窟に反響するように空間を埋める。歌は詠唱に近く、マアレム(maestro、師匠)が呼びかけ、集団が応答する。全体のテンポは緩やかに始まり、儀式の進行とともに徐々に速くなっていく。

聴きどころ

最初に注目してほしいのはゲンブリ(gimbri/hajhuj)——駱駝革の共鳴胴に3本の腸弦を張った低音楽器で、ベースのように旋律線と拍を同時に鳴らす。奏者(m'allem、師匠)が親指と人差し指でリズムパターン(dqiqa)を刻み、他のメンバーが金属カスタネットのクラケブ(qraqebs)でその上に高音の反復ビートを重ねる。基本のリズムは6/8複合拍子で、西洋耳には『3拍のワルツと4拍のマーチが重なった』ように聴こえる。次に儀礼曲(lila)の色彩構造で、伝統的なlila(徹夜儀礼)は7つの『色』(mluk、精霊たち)に対応する7組の楽曲で構成される——黒(サハラの精霊)、赤(戦士の血)、緑(預言者の色)、白(天使)、青(海と憂鬱)、黄色(女性の精霊、女性のみが憑依する)、そして最後の万華鏡的な混合色。ハミド・エル=カスリの『Baba Mimoun』は白の楽曲群の代表で、ゲンブリの低音がゆっくり体を揺らす催眠効果を持つ。マーレム・マフムード・ギニアの録音では、ヨガ的な深い呼吸のような伸縮が聴こえる。エッサウィラのフェスティバル録音では、gnawaと外部ジャズ・ミュージシャン(パット・メセニー、マーカス・ミラー)との対話がゲンブリの旋律語彙を明らかにする。

初めて聴くなら

入り口はマーレム・マフムード・ギニア『La Musique Sacrée des グナワ』(1990)。伝統的なlila儀礼の様式を、レコーディング可能な形に凝縮した基準的な録音だ。次にハミド・エル=カスリ『Fiyah』(2010)、現代の第一線のm'allemの音の広さがわかる。フュージョン方向を聴きたければRandy Weston『Spirit! The Power of Music』(2005)、ジャズ・ピアノとゲンブリの対話が完璧に噛み合う瞬間がある。エッサウィラ・フェスティバルの公式ライブ盤も、gnawaが外の音楽と衝突する現場の熱気を伝える。深夜、部屋を薄暗くしてスピーカーで低音を体で感じるのが本来の聴き方に一番近い。ヘッドホンだとゲンブリの体を揺らす振動が伝わりにくい。

代表アーティスト

  • Maâlem Mahmoud Guiniaモロッコ · 1970年〜2015
  • Nass El Ghiwaneモロッコ · 1971年〜
  • Hamid El Kasriモロッコ · 1985年〜
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  • Hassan Hakmounモロッコ · 1987年〜
  • Nass Marrakechモロッコ / スペイン · 1995年〜

代表曲

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生まれた背景

グナワの担い手は、西アフリカからモロッコに奴隷として連れてこられた人々とその子孫だ。「グナワ」という言葉はグワナ、つまりギニア(西アフリカ)の音転だとされるが、詳細は諸説ある。

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モロッコに根づく過程でイスラームとスーフィー思想が混ざり合い、トランス儀式「リラー(lila)」が発展した。リラーでは各霊(ムル、複数形ムルール)に対応する色と音楽があり、その霊を降ろすために特定の歌と色の衣装が組み合わされる。1960〜70年代に欧米のジャズミュージシャン(ランディ・ワストンら)がマラケシュのグナワに接触し、融合音楽が生まれたことで国際的な認知が始まった。

日本との関係

日本でのgnawa認知は1990年代のワールド・ミュージック・ブームで始まった。エッサウィラ・グナオワ・フェスティバル(1998年開始)は日本の音楽ジャーナリスト・研究者の間で早くから注目され、菊地成孔、大友良英らが現地取材やアルバム解説で紹介してきた。国内では在日モロッコ人コミュニティ(数百人規模)によるgnawa儀礼の小規模な演奏が東京・大阪で稀に行われるが、公開演奏は限定的だ。Randy Weston(米ジャズ・ピアニスト、1926-2018)がgnawaと共演したアルバム群は日本のジャズ・ファンにも輸入されている。近年はgnawaのゲンブリの音を電子音楽/アンビエントに取り込む試みが日本のプロデューサーからも出ており、Mule Musiq系のレーベルが関連コンピレーションを出している。

豆知識

gnawaはサハラ以南アフリカ(現在のマリ、モーリタニア、セネガル、ガーナナイジェリア北部)から16世紀以降の奴隷交易でモロッコに連れてこられた黒人の子孫が守ってきた儀礼音楽で、名称も『ギニア』(Guinea、西アフリカ)から派生している。奴隷制廃止後もgnawaは社会階層の底辺に置かれ続けたが、1960年代以降『bilal』(モスクの初代呼び手ビラル=最初の黒人ムスリム)を精神的祖として位置付ける自己認識を確立した。

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ジャズ界とのつながりは1968年、米ジャズ・ピアニストのRandy Weston(1926-2018)が前年の米国務省アフリカ・ツアーを機にタンジェへ移住してモロッコ音楽の研究を始めたことに遡る。彼はマーレム・ムハンマド・ゲディガらとの共演を通じgnawaを世界のジャズ・シーンに紹介した。エッサウィラ・グナオワ・フェスティバルは1998年に始まり、毎年6月に3日間開催、無料入場で30万人以上を集めるアフリカ最大級の音楽祭となっている。

影響・派生で結ばれたジャンル

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ジャンル関係図1700年代1900年代1920年代1970年代2000年代グナワグナワバンダリーバンダリーライライナス・エル・ギワン運動ナス・エル・ギワン運動ナイダナイダ凡例派生影響同系統
凡例
派生影響同系統
グナワを中心とした近傍図。中心と直接結ばれるエッジが強調表示されます。

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