ペルー・ロック
1965年Los Saicosがリマで打ち出したプロトパンクから始まる、南米のロック地下水脈。
どんな音か
ペルー・ロックは、1965年リマのリンセ区でロランド・カルポ(ボーカル)率いる4人組Los Saicosがシングル『Demolición』を出した瞬間に始まる、南米のロック系譜の中でも特に地下に潜った枝である。『Demolición』のリフの粗さと『鉄道駅を破壊しろ、破壊しろ、破壊しろ』というリフレインは、アメリカ合衆国のラモーンズ結成(1974)を10年近く先取りしており、2000年代以降『世界初のパンク・レコード』として国際的に再評価された。1970年代はLos Belking'sらのサイケデリック/サーフ・インストゥルメンタルが中心で、1980年代前半のFrágilが唯一の商業的成功を収め、1990年代以降はPedro Suárez-Vértizを筆頭にラテン・ポップ寄りに拡張した。
生まれた背景
Los SaicosはEP4曲を残し1966年に活動停止したまま長く忘却されたが、2006年のスペイン記者マリアーノ・アルバのドキュメンタリーがきっかけで再結成し、リマから欧州を回った。彼らと同世代のLos Yorks、Los Shains、Los Doltons、Los Belking'sらは1960年代末にBEATLES系ビート・グループを大量に生み出し、リマの中産階級の若年層文化を作った。1968-75年の軍事政権(Velasco Alvarado)の「反外国文化」キャンペーンがロック弾圧を敷き、シーンは長期の停滞に入った。1980年代前半、Frágilの『Avenida Larco』(1981)がリマの中産階級のロック観客を再集結させ、シーンの再点火となった。
聴きどころ
Los Saicosの『Demolición』(1965)を聴くと、ラモーンズやセックス・ピストルズがまだ存在しない時代に、既にパンクのすべての音の要素——2〜3コードの単純進行、歪んだギター、破壊への直接的な歌詞、2分弱の疾走——が揃っていることに驚かされる。当時19-20歳の4人組は、英語のロックを消化する回路ではなく、自分たちがリマで生まれた不満をそのまま音にしただけだった、と後年のインタビューで語っている。Los Belking'sのインストゥルメンタルは、テキサスのVenturesを基準に聴くと、より湿ったスプリング・リバーブとより速いテンポが特徴的で、この音色は後にチチャに直接輸入された。
発展
1980年代前半、Frágilの『Avenida Larco』(1981)がリマの中産階級のロック観客を再集結させ、Miki Gonzálezがブルース/ロックの英語盤で欧州リリースを果たした。1990年代以降Pedro Suárez-Vértiz(1969-2023、Arena Hash時代を含む)がラテン・ポップ寄りのメロディック・ロックで国民的知名度を得た。2010年代以降はインディー・シーン(Los Outsiders、La Lá、Kanaku y el Tigreなど)が独自の道を切り開いている。
出来事
- 1965: Los Saicos『Demolición』
- 1981: Frágil『Avenida Larco』
- 1988: Arena Hash結成(Pedro Suárez-Vértiz参加)
- 2006: Los Saicos再発見と再結成
- 2023: Pedro Suárez-Vértiz没
派生・影響
チチャ(Los Mirlosがサーフ・ロックのギター音色を輸入)、ラテン・アルタナティーヴ、ペルー・インディー。
音楽的特徴
楽器エレキギター、ベース、ドラム、キーボード、ボーカル
リズム標準ロック4/4、サーフ・ロック由来のシャッフル、時にワイノ/クリオージョの拍節
代表アーティスト
- Los Saicos
- Los Belking's
- Frágil
- Pedro Suárez-Vértiz
代表曲・古典
Come On — Los Saicos (1965)
Demolición — Los Saicos (1965)
El Entierro de los Gatos — Los Saicos (1965)
Volverás — Los Belking's (1968)
Cementerio de Autos — Los Belking's (1969)
Av. Larco — Frágil (1981)
Cuando pienses en volver — Pedro Suárez-Vértiz (1996)
代表曲・現在
Los Globos del Cielo — Pedro Suárez-Vértiz (2004)
日本との関係
初めて聴くなら
最初はLos Saicos『Demolición』(1965)、これは2分弱の破壊的な疾走で、1965年という時代を確認しながら聴くと衝撃は倍になる。次に『Come On』『El Entierro de los Gatos』を続けて聴き、EP4曲を通しで体験してほしい。Los Belking's『Cementerio de Autos』でサイケデリック/サーフ・インストゥルメンタルの世界を確認し、Frágil『Av. Larco』(1981)で1980年代の中産階級ロックの温度を体感する。Pedro Suárez-Vértiz『Cuando pienses en volver』(1996)はラテン・ポップの入り口として聴きやすい。
豆知識
影響・派生で結ばれたジャンル
同じ時期・同じ地域で生まれた他のジャンル
- ラテン・カリブチチャ
