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ラテン・カリブ

ノルテーニョ・サクソフォン

Norteño-Sax

サン・ノゼ、ティフアナ、モンテレイ / メキシコ / アメリカ合衆国 / 中南米・カリブ · 1968年〜

別名: Norteño-banda / Norteño con saxofón

ボタン式アコーディオンだけのノルテーニョに、サックスとキーボードを加えた1970年代以降の派生形。Los Tigres del Norte、Los Tucanes de Tijuana。

どんな音か

ノルテーニョ・サクソフォンは、伝統的ノルテーニョ(ボタン式アコーディオン+バホ・セスト+ベース+ドラム)の編成に、アルト・サックスとキーボード、時にトロンボーンを加えた1970年代以降の派生形だ。アコーディオンとサックスがユニゾンでリード旋律を鳴らすことで、原型ノルテーニョより厚みのある吹奏楽的なテクスチャが生まれる。テンポと拍子はノルテーニョと同じでポルカ2/4、ワルツ3/4、コリードの物語形式が中心、テンポは110-140BPM。歌詞のテーマは移民、恋愛、酒、労働、そして麻薬密売(ナルコ・コリード)まで、伝統ノルテーニョと同じ範囲を扱う。録音は原型ノルテーニョより磨きがかかり、ホーンセクションが「バンダ」のスケール感を持ち込む点で、バンダ・シナロエンセの吹奏楽団編成に一歩近づいた中間形態と考えられる。

生まれた背景

決定打は1968年にサン・ノゼ(カリフォルニア)で移民兄弟が結成したLos Tigres del Norteだった。彼らは1974年のシングル『Contrabando y Traición』(密輸と裏切り)で、メキシコからアメリカ合衆国へマリファナを運ぶ女性密売人カミリアの物語を歌い、これが史上初の商業的ナルコ・コリードとなった。この曲でLos Tigres del Norteは、伝統ノルテーニョの語り歌に、より近代的なホーン・アレンジと物語性の強い歌詞を持ち込み、ジャンルの標準形を書き換えた。1987年結成のLos Tucanes de Tijuana(モラ・ヒメネス率いる)はこの路線をより極端にナルコ・コリード側に振り、1996年の『La Chona』でメキシコの結婚式定番曲を作った。2000年代以降はIntocable(1993結成、テキサス)、Grupo Frontera(2013結成、テキサス)がこの路線を若い世代に引き継いだ。

聴きどころ

アコーディオンとサックスのユニゾンのバランスに耳を澄ませてほしい。伝統ノルテーニョは弦楽器と鍵盤(アコーディオン)の対話だが、ノルテーニョ・サクソフォンではそこに管楽器のサックスが3つ目の声として加わる。二つがユニゾンする瞬間、そしてサックスがアコーディオンから旋律を受け取る瞬間の受け渡しが、このジャンルの職人芸だ。Los Tigres del Norteの『Jefe de Jefes』(1997)は、コリードの叙述形式を保ちながら、サックスの合いの手が物語の緊張感を演出する好例。Grupo Fronteraの『un x100to』(2023)は、Bad Bunnyの現代ラテン・ポップ側からノルテーニョ・サクソフォンをどう聴き直したかを示す、興味深い一曲だ。

発展

2000年代以降はIntocable(1993結成、テキサス・サモラ)、Grupo Frontera(2013結成、テキサス・エディンバーグ)がこの路線を若い世代に引き継いだ。Intocableは1990年代半ば以降、ノルテーニョ・サクソフォン+ロマンティックなバラード路線を打ち出し、米国とメキシコのビルボード・レヒオナル・メヒカーノ・チャートで100週を超える1位を獲得した。Grupo Fronteraは2023年、Bad Bunnyとの共演曲『un x100to』でノルテーニョ・サクソフォンを世界市場に完全に開いた——Billboard Hot 100で5位を記録し、テキサスのリオ・グランデ・バレー(米側)の音が汎ラテン・ポップの中心に届いた瞬間だった。

出来事

  • 1968: Los Tigres del Norte結成
  • 1974: Los Tigres『Contrabando y Traición』
  • 1987: Los Tucanes de Tijuana結成
  • 1996: Los Tucanes『La Chona』
  • 2023: Grupo Frontera『un x100to』Billboard Hot 100 5位

派生・影響

伝統ノルテーニョとバンダ・シナロエンセの中間形態で、テハーノ音楽(Selena)、ナルコ・コリードにも直接繋がる。2020年代のコリードス・トゥンバドスとは違い、電子ビートを使わず生楽器の音圧で勝負する点が現代の若い層への差別化になっている。

音楽的特徴

楽器ボタン式アコーディオン、バホ・セスト(12弦ギター)、ベース、ドラム、アルト・サックス、キーボード、時にトロンボーン、ボーカル

リズムポルカ2/4、ワルツ3/4、コリード物語、テンポ110-140BPM

代表アーティスト

  • Ramón Ayalaメキシコ · 1963年〜
  • Los Tucanes de Tijuanaメキシコ · 1987年〜
  • Intocableアメリカ合衆国 · 1993年〜
  • Grupo Fronteraアメリカ合衆国 · 2013年〜

代表曲・古典

代表曲・現在

日本との関係

日本での認知は限定的だが、Netflixの『ナルコス:メキシコ』(2018-)でLos Tigres del Norteの楽曲が使われたことで、若年層への浸透が進んだ。埼玉県川口市、群馬県大泉町、愛知県豊田市など、メキシコ移民労働者が集住する地域では、地元コミュニティのお祭りやレストランでノルテーニョ・サクソフォンの生演奏が行われている。2023年のBad Bunny × Grupo Fronteraの『un x100to』がSpotify日本でも一定の再生数を集めたことで、日本の若いラテン音楽好きにも「テキサスのメキシコ系の音」として認知され始めている。

初めて聴くなら

最初はLos Tigres del Norteの『Contrabando y Traición』(1974)、ノルテーニョ・サクソフォンの型と物語性の完成形だ。次に『La Puerta Negra』(1988)、移民の郷愁の決定版。Grupo Fronteraの『un x100to』(2023、Bad Bunny共演)は、現代の若い世代への入り口として最適——伝統ノルテーニョ・サクソフォンが2020年代の汎ラテン・ポップと繋がる瞬間が聴ける。深夜のドライブか、金曜の夜に一杯やりながら、が向いている。

豆知識

Los Tigres del Norteは1968年結成時、メンバー全員が10代だった。彼らは合法的な移住手続きが取れないままカリフォルニアで音楽活動を続け、後に正式な永住権を取得した経緯を持つ——この体験そのものが彼らの歌詞の説得力の源になっている。バンド名の「Los Tigres del Norte(北のトラたち)」は、当時サン・ノゼで彼らを世話していたアメリカ合衆国人スカウトが「メキシコ北部からやって来た若い虎たち」の意味で名付けた。Grupo Fronteraは2019年頃までは地元のコピー・バンドで、テキサス州エディンバーグの結婚式やクインセアニェラ(15歳の祝い)で演奏する中で徐々に独自曲を書き始め、2022年『No Se Va』のバイラル・ヒットで一気に世界化した。

影響・派生で結ばれたジャンル

ノルテーニョ・サクソフォンを中心とした近傍図。中心と直接結ばれるエッジが強調表示されます。

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